学生時代に描いた漫画、恋に恋しているときに作ったポエム、厨二病満開の楽曲。誰しも、そういった若書きの黒歴史が一つはあるに違いない。多くは実家を出るときに処分してしまうものだけど、うっかり残してしまったものが家族に見られたら…。想像するだけで絶叫しながら七転八倒しそうな恥ずかしさだ。

■悲劇は帰省時に起こった
そんな体験を描いたのが、2021年7月に投稿されたチリツモルさん(@pasumondo)の「実家の黒い歴史」。

実家で、封印された謎の紙が出てきた。

さらに母が取り出したのは、昔描いていた自作の漫画たち。

「捨てる!」と主張するチリさんに母が、「最後まで描いたら?読ませてもらったけどおもしろかったよ?」と追い打ちの一言。

しかも母は、しっかり読み込んだ模様。チリさんの「読ォみィこォむゥなァアア」の声が切実だ。

その時の思い出をチリさんはこう語る。「長男を連れて実家に帰省した時に、その悲劇は起こりました」。母が取り出したのは「中学生のころに描いた少年漫画」で、自由帳10冊分にのぼる大作だ。「平凡な少年・ユウくんが空飛ぶスケボーに乗って悪の組織と戦うお話でした」と内容を明かす。

「母が読んだと知った時は、顔から火が出るってこういうことなんだなって、気付かされるくらい恥ずかしくて、穴があったら入りたい気持ちでした。母の記憶からどうにかして漫画の内容を消せないかなど無謀なことを考えたり、中学時代の自分と捨てなかった自分を恨んだりしました」と当時の正直な気持ちを打ち明けてくれた。うん、うん、わかります、その気持ち。

■電子書籍化された作品も
チリツモルさんは芸術大学のデザイン学科を卒業。現在は子育てをしながら日常のエピソードや自身の体験談を、漫画にしてSNSに投稿している。投稿をはじめたのは2019年8月ごろから。

「SNSに投稿されているマンガを読んでいて、自分も子供が生まれて余裕が出てきたら趣味として始めたいなぁと思った」のがきっかけ。最初はスマホに指で書き込むところからスタートしたそう。

そうやって投稿した作品のうち、モラハラ気質の元カレとのエピソードを描いた「モラハラ彼氏と別れたい 悪いのは私なの?」が電子書籍化。現在は夫との出会いから交際に至るまでの流れについて、フィクションを交えて恋愛漫画風に描いた「福岡ララバイ」、「福岡ララバイ」の番外編として描き始めた「ふたご座ズンドコ道中」をブログで公開している。「ふたご座ズンドコ道中」は、福岡ララバイに登場した先輩の恋愛模様を、フィクションを混ぜて漫画化したものだ。

■母が見せてくれた「ポッポちゃん」の終焉
日常を描いた作品も多く、特に好評なのが母や兄弟など実家の家族との思い出だ。母とのエピソードでは「ポッポちゃん」が、一番のお気に入りだというチリさん。

子供のころ、母がやってくれた手遊び「ポッポちゃん」。チリさんはこれが大好きで、いつも母におねだりしていた。

だけど、母は仕事と家事でくたくた。そしてある日、ポッポちゃんから「遠くに引っ越すからもう会えない」と告げられる。

嘆くチリさんを慰めるため、ポッポちゃんは時々帰ってきたけれど…。

ついに母はポッポちゃんとの永遠の別れを決断する。

この投稿については「コメント欄でも当時の私の奇行を笑いとばしていただけたので、うれしかったです」とチリツモルさん。

■寝ぼけ?夢遊病?母も驚く深夜の奇行
「寝ぼけて母に心配された話」も、読む分には面白い。当時、これを目の当たりにした母の気持ちを考えると、心配でたまらなかっただろうとは思うが。

夜中にトイレに起きたチリさんが戻ってこないことを心配した母が見に行くと、風呂場にチリさんが。

さらに別の日には、むくっと起き上がるとおもむろにティッシュの箱を手に取り…。

意外にこのような体験をしている人は多いようで、「コメント欄で同じような経験をされている方が多く、その時に夢遊病というものを教えていただきました」とチリさん。

■兄はケビン、母はステラ、私はハンナ、よろしくね
ほかに、思春期の兄に理不尽な嫌われ方をしていたエピソードも。

作品ではあっけらかんと笑い飛ばしているチリさんだが、やはり悲しかったのも事実。「今では仲よしですが、当時は本当に兄から嫌われていて…。でもコメント欄で笑っていただけて、理不尽な仕打ちに対する悲しみを消化できました」と振り返る。

ここで、一つの疑問。なぜ兄の名前は「ケビン」なのか。もしやアメリカ人?実はチリさんには家族の名前を英語ネームにして読んでいたころがあるのだ。それを振り返ったのが「家族の名前を英語ネームにして呼んでいた頃の話」。

母からのメールの表示がステラさん。家族を英語ネームで登録しているのだという。

父はマーシー、母はステラ、姉はジェシカ、ここで兄がケビンと明かされる。

チリさん本人はハンナ。ドン引きする友人。

「当時これを話した友人には引かれましたが、コメント欄に同じようにやっていたという方が沢山いてうれしかったです」と笑う。同様の人は意外に多いようだ。

■思わず吹き出す夫や子供とのエピソードも
夫や息子とのエピソードを描いた作品も多数。「コンビニ店員時代の話」「夫が車をこすった話」「鼻をほじって人は大人になる話」「蟻になった夫に語りかける話」「寝かしつけの時息子が夫を誘いにいった話」「授乳中に夫の〇〇〇が星になった話」など、思わず吹き出してしまう作品もあるので、電車の中で読むのは要注意だ。

こうした投稿に読者の反応も好意的で、「コメントでツッコミを入れてくださったり、笑って元気が出たと言ってくださったり。楽しんで読まれていることが伝わってきて、私も本当に元気をいただいています」とチリさんも喜んでいる。

■家族との日常も、いつか書籍に
チリさんは「『福岡ララバイ』をもとにした電子書籍を出すことができ、とてもうれしく思いましたが、今回取り上げていただいたような家族の日常の漫画も本にして出すことが夢です」とこれからの目標を明かす。

さらに、ファンに向けては「私の漫画を読んでくださって、あたたかいコメントやメッセージを本当にありがとうございます。いつも元気をいただいております。漫画を描いていたおかげで皆さんと繋がることができたので、続けてきてよかったなと思えました。これからもボチボチと頑張ります!」と語ってくれた。楽しい家族との話題に、これからも期待大だ。

取材・文=鳴川和代