コロナ禍の影響で生活が変わる中で、もっとも大きな変化の一つと言えるのが、リモートワーク・テレワークと呼ばれる在宅勤務の広まりだ。東京都の報道発表によれば、2020年3月には24.0%だった都内企業(従業員30人以上)のテレワーク実施率は、2021年11月現在57.2%と、緊急事態宣言期間でない時期でも半数以上にまで増加し、定着をうかがわせる。オミクロン株の発生やそれに伴う感染拡大の再燃が危ぶまれる今、コロナ時代に訪れた働き方の節目を漫画で切り取った作品で振り返りたい。

作者は、「全てがめんどくさいウサギ」(コルクスタジオ)などの作品がある漫画家の一秒(@ichibyo3)さん。コロナ禍で突如、在宅勤務となった社会人の日常の変化や戸惑いを描いた作品をSNSに投稿し、2021年3月には描き下ろしも含め書籍化され反響を呼んだ。

■リラックスできるけれど、孤独も感じる――。在宅勤務の“あるある”に共感
漫画家として、もともと在宅で仕事をしていたという作者の一秒さんが、実体験やSNS上での体験談をもとに描いた同作。勤めている会社で在宅勤務がはじまり、通勤やメイクの必要もなくリラックスして仕事ができることに最初は大喜びの主人公のOL・在タク子。だが、フリーランスとしてもともと在宅で仕事をしている友人からは「在宅勤務の本当の辛さはこれからだよ」と予言めいた忠告を受けてしまう。

友人の言葉通り、対面ではなくテキストのみでのやりとりでニュアンスを汲み取りきれなかったり、同僚との何気ない雑談もなく孤独を感じたり、はたまた自宅が仕事場になったことで光熱費が跳ね上がったりと、働く中でこれまで考えもしなかった変化に次々と直面することに。

本編は2020年、最初の緊急事態宣言の時期に描かれていたこともあり、緊急事態宣言解除と時を合わせてタク子の在宅勤務も一旦終わりを告げる。リモートワーク中はオフィスの環境を恋しく感じることが多かったものの、いざ出勤となると「いつも何時に家出るんだっけ」と勘が鈍っていたり、出社への恐れを感じたりと主人公は複雑な心境になるのだった。そんな悲喜こもごものリモートワークのはじまりと終わりをコミカルに描いた作品に、SNS上では読者から多くの共感が集まった。

■オフィスとリモートのギャップを描いて見つけた、働き方以外の変化
漫画家としてもともと在宅で仕事をしていたという作者の一秒さん。2020年当時、急な在宅勤務に戸惑いを覚えている人がいることに気付き、オフィスワークとリモートワークのギャップを描こうと思ったのが本作のきっかけだったと話す。

中でも、仕事相手と雑談したいが「リモートでは雑談しよう」と言うに言えないというエピソードには共感の声が多くあがったそうで、一秒さんは「人には雑談欲というものがあるのでは」と感じたという。働き方や生活のみならず、コロナ禍でのコミュニケーションのあり方の変化も浮き彫りにした作品と言えるだろう。

在宅勤務がすっかり定着したという人も、オフィスでの勤務に戻ったものの再びリモートワークがはじまるという人も、本作を読んでリモートワークがはじまったあの頃を振り返ってみてはいかがだろうか。

取材協力:一秒(@ichibyo3)

出典:「テレワーク実施率調査結果」(東京都)