2025/06/08 05:00 ウェザーニュース
6月といえば、梅雨(つゆ、ばいう)を思い起こす人も多いでしょう。
梅雨に入ることを、文字どおり「梅雨入り」、あるいは「入梅」といいます。
複数の辞書で「入梅」を引くと「梅雨入り」、「梅雨入り」を引くと「入梅」と書かれています。
辞書によると「梅雨入り=入梅」ということですが、実は「梅雨入り」と「入梅」にはそれぞれ異なる意味もあって、使い分けられることもあります。どういうことか見ていきましょう。
NHKでは「梅雨入り」と「入梅」を使い分けている
公共放送を担うNHK(日本放送協会)では、「梅雨入り」と「入梅」を使い分けています。
NHKでは、「梅雨入り」は気象に関する情報に用いて、「入梅」は暦の場合に用いているようです。
NHKはその理由を次のとおり説明しています。

〜暦の上での「入梅」は、6月11日ごろにあたりますが、南北に長い日本では、実際の「梅雨入り」は、沖縄から東北地方まで1か月程度の幅があります。このため「入梅」は暦の場合でのみ使い、気象上では「梅雨入り」を使っています。〜
(NHK放送文化研究所「放送現場の疑問・視聴者の疑問」より)
では、「暦の上での入梅は6月11日ごろにあたる」とは、どういうことでしょうか。
入梅とは「黄経(こうけい)80°」のこと!?
入梅と梅雨入りには、二十四節気の芒種(ぼうしゅ)に入って、初めの壬(みずのえ)の日を意味することもあります。
壬は甲(きのえ)に始まる十干(じっかん)の9番目です。十干は古代中国で生まれた、10文字からなる文字列です。
これが日本では、1876(明治9)年から「黄経(太陽黄経)80°」(「黄経」は「こうけい」と読みます)の意味でも使われるようになりました。
芒種は例年6月5〜6日です。その初めの壬の日は例年6月10〜11日です。
でも、「黄経80°」といわれても、なんのことかわからないという人が多いのではないでしょうか。
このことを説明するために、まず太陽の公転について見てみましょう。
入梅と太陽の通り道には密接な関係がある?
地球は自転しながら公転、つまり太陽の周りを回っています。
地球は太陽の周りを回っているのですが、地球上の私たちから見ると、太陽が地球の周りを回っているように見えます。これは「見かけの動き」で、この見かけの動きを「太陽の年周運動」といいます。
もう少し詳しく説明しましょう。
地球から見ると、太陽は1年(約365日)かけて天球上を1周しています。
天球とは、地球を中心に据えた球面のことです。天球は巨大な丸天井ともいえて、太陽や月などのすべての天体はその丸天井(天球)に貼り付いています。といっても、実際に貼り付いているわけではなく、そのように仮想しているのですが。
天球上における太陽の通り道は「黄道(こうどう)」と名づけられています。
入梅は夏至の少し前の日!?
では「黄経」はというと、これは黄道座標における経度のことです。
地球上の位置を表す場合、経度と緯度を用いることがありますね。東京であれば、東経約139°、北緯約35°です。これはイギリスの首都ロンドンの本初子午線(0°)を基準にしています。
これと少し似ていて、黄経にも基準があって、それは春分の日です。
春分の日を起点にして、太陽が地球を中心に黄道を1年かけて反時計回りに動いていきます。1年後の春分の日には、また元の位置(0°)に戻ります。
今年(2025年)の春分の日は3月20日で、夏至は6月21日、秋分の日は9月23日、冬至は12月22日です。これはそれぞれ、黄経0°、90°、180°、270°です。

ちなみに、黄道座標における緯度である「黄緯(こうい)」という言葉もあります。
さて、入梅とは「黄経80°」のことでもあると書きましたね。
この黄経80°は夏至の少し前、6月10〜11日にあたり、二十四節気の芒種の初めの壬の日にもあたります。
「入梅」には「黄経80°」の意味もありますが、「梅雨入り」に「黄経80°」の意味はありません。これが「梅雨入り」にはない「入梅」の“もう一つの意味”です。
今年(2025年)の入梅は6月11日です。
沖縄や九州南部などでは、今年は5月のうちにすでに梅雨入りしました。
「梅雨入り」と「入梅」は同じ意味で使われることがあるけれど、別の意味も持っている。このことを知っておくと、季節や天体のことをいっそう楽しめそうです。
参考資料
出典/NHK放送文化研究所「放送現場の疑問・視聴者の疑問」(https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/kotoba/gimon/032.html)、国立天文台「暦Wiki」、同「令和7年(2025) 暦要項」


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