この記事をまとめると
■いま新型コロナウイルスの蔓延や半導体不足によってさまざまな分野に影響が出ている
■新車の納期遅延など、自動車業界への被害も大きい
■この記事ではいま起きている自動車業界の異常事態を解説する
値引き交渉よりも納期交渉!?
CASE革命に端を発し、自動車業界が100年に一度の大変革期というようになって久しい。
加えて、新型コロナウイルスの影響、半導体不足など業界をめぐる状況は刻一刻と変化している。いまや末端のユーザーレベルであっても、そうした変化を実感する日々になっているといえる。
簡単にいえば、新車を作りたくても作れない時代になっている。これまで自動車産業が培ってきたサプライチェーンが寸断されたといってもいい。
そうした状況が一時的でないことを象徴するのが、納期4年ともいわれるトヨタ・ランドクルーザーだ。利益率の高い、高級SUVの生産をあえて絞るというのは、従来のトヨタ型ビジネスモデルでは考えづらい。
いま新車でオーダーしても届くのは4年後ということをメーカーが発表してしまうのは、半導体をはじめとした部品供給のほころびが、すぐに解決する目途が立っていないことを意味している。
こうした傾向というのは、新車全般に言えることであり、いまや値引き交渉よりも納期を交渉することをユーザーマインドは優先しているといえるほどだ。こんなことはコロナ以前には考えられなかったことだ。
このような部品不足による生産への影響は多様性を奪うことにもつながっている。
とくに数の期待できないスポーツモデルやスポーティグレードについては各社で計画が凍結されたという噂を耳にすることが多い。
最近、著名な芸能人がスターレットターボを購入したということが話題になったりしたが、かつては大衆車であってもスポーティグレードがイメージリーダーとして必須だった。さらにいえば売れ筋は中間グレードで、それを際立たせるために装備の貧弱なエントリーグレードや割高な最上級グレードを用意するというのも常套手段だった。
しかし、現在では無駄なグレードは作らないというのがトレンドだ。パワートレインの種類も絞られ、グレードについても1つ〜2つに絞っているというケースが増えている。いまやモノグレードであることは珍しくない。
バブル期のネオクラシック車の価格が高騰中
このように新車の納期が伸びている対応策なのか、スポーティグレードが消滅しつつあることへのアンチテーゼなのか、中古車の価格上昇が激しいのも最近の自動車業界におけるトピックスのひとつだ。
とくに1980年代〜1990年代のバブル期前後に生み出された国産車は、スポーツカーだろうが大衆車だろうが価格が高騰している。
かつてウン十万円で買えていた中古スポーツカーが、何百万円のプライスボードを掲げていることは珍しくなく、程度がいいものでは新車価格の数倍といえる1000万円級の価格になっていることもある。
スポーツカーでも4速ATのNAエンジン車では、ほとんど価値がないという時期を乗り越え、いまやネオクラシック車であればなんでも高値という時代になっているのだ。
正直、20年前には考えられなかった状況だ。もはや中古スポーツカーは、若者にも手が届く価格帯のクルマではなく、コレクターズアイテムといえる。
そもそも現在の若者はディーラーや中古車屋の店頭でクルマを見て買うような時代でもなくなっているのも、かつての常識からすると考えられない変化だ。
最近でいえば、日本に再上陸した韓国のヒョンデは電気自動車「アイオニック5」と燃料電池車「ネッソ」といったゼロエミッションビークルだけのラインアップで、その買い方もスマートフォンを利用するといったオンライン販売だけに絞っている。
トヨタの電気自動車bZ4Xについてもリアルでのキャンペーンは実施しているが、基本的にはオンラインでサブスクリプションサービス「KINTO」を使った契約のみとなっていて、所有することはできない。
電動化時代には愛車という概念はなくなり、クルマは借りるものになるということだろうか。