タイのトゥクトゥクもインドのオートリキシャもEV化! なのに日本は「公共交通機関のEV化」が遅々として進まない酷すぎる現状

この記事をまとめると

■タイ・バンコクではトゥクトゥクがよく走っている

■バンコク国際モーターショー2023にはBEVのトゥクトゥクが展示されていた

■タイなど海外と比べて日本の公共交通機関のBEV化は遅れをとっている

トゥクトゥクでさえBEV化! タイの交通機関は進化していた

 タイの首都バンコクを歩くと、街なかを元気よく走っているのが三輪タクシーの「トゥクトゥク」。ただこのトゥクトゥクはその走っている時の音をタイ語で例えた通称のようなもので、三輪タクシーを「サムロー」、そしておもにダイハツ・ハイゼットとなっているのだが、軽四輪トラックタクシーのことは「シーロー」とも呼ばれている。

 2023年3月22日から4月2日の会期で開催された、第44回バンコク国際モーターショー2023の会場内には、トゥクトゥクが展示されていた。しかもそのトゥクトゥクはBEV(バッテリー電気自動車)であった。

 調べてみると、タイ政府は国内で走っている2万台強あるともされるトゥクトゥクについて、2025年までに全面BEV化する方針をすでに明らかにしているとのこと。もちろん、BEVトゥクトゥクへの乗り換えに対する補助金を用意するだけでなく、充電ステーション設置にも政府が積極的に設置資金を拠出しているとのことである。すでに天然ガス系に燃料シフトを進めていたなかでの全面BEV化へのさらなるシフトとなっているようである。

 2023年1月にインドの首都デリーを訪れると、インドでは「オートリキシャ」と呼ばれている3輪タクシーもBEV化が進んでいた。バンコクもデリーも路線バスについても急速にBEV化が進んでいる。インドネシアや台湾でも同じだが、タクシーや路線バスと言った公共交通機関のBEV化はスピード感を持って進んでいるように見える。

旅客車両のBEV化は中国や韓国メーカー頼らざるを得ない

 日本では公共交通機関のBEV化はまさに「事業者任せ」というのが現実で、政府はほぼノータッチのように見える。一般乗用車では趣味で内燃エンジン車に乗り続けたいという人もいるので、スピード感を持ったBEV化は難しい。

 一時より収束しているとはいえ、軽油やLPガスなど、日本のバスやタクシーのメイン燃料の高値傾向が続いているので事業者の燃料費負担、さらには内燃エンジンに比べてオイル交換などが不要になることからメンテナンスコスト削減にもなるので、政府が積極的な普及に関与すればいいようにも感じるが、ここで肝心な国内のバスやタクシーメーカーで純国産ともいえるBEVがラインアップされていないのが最大の泣き所となっている。

 いまBEV化を進めようとすれば、中国や韓国メーカー車に頼らざるを得ない状況が続いている。路線バスに関しては、ジャカルタ市内では中国・比亜迪(BYD)の車両への依存が目立ち、そろそろ本格的な現地生産が始まるが、そのほか筆者が見てきた都市では、自国バスメーカーの車両が積極的に使われている(経済安全保障などの問題などがあるようで中国依存を避けたい思いがあるようだ)。自国メーカーがBEVバス開発に大きく後れを取っている日本はその意味でも路線バスのBEV化を遅れさせてしまっているようだ。

 本来なら、来月広島で開催されるG7(先進七カ国)首脳会議に合わせて、政府の援助のもと、広島市内の路線バスやタクシーを積極的にBEV化してもいいと考えるが、お金の手当てができても自国メーカー車で賄えないのだから仕方ないとしかいいようがない。

 政府はインバウンド需要をさらに喚起させようとしているが、東南アジアからやってくる人たちが東京などを歩き、ディーゼルエンジンのバスばかりが走っている様子を見れば、「えっマジで?」ということにもなりかねないままにしておくのは筆者としては残念とでしかいいようがない。少なくともいままでの『クリーンな日本』というイメージは否定されてしまうだろう。