【試乗】一生懸命探したのに不満が見つからなかった! 新型メルセデス・ベンツGLCの「これでいいじゃん!」感が圧倒的

この記事をまとめると

■新型へとモデルチェンジした2代目メルセデス・ベンツGLCに試乗した

■キープコンセプトな姿に上質感あふれる車内、さらには抜群の安定性とハンドリングを誇っていた

■新型GLCはあらゆる人を納得させられる恐ろしいまでの完成度を誇っていた

トラディショナルだけどスポーティでほどよくクラッシィ

 年に何度か「これでいいじゃん!」と思えるニューモデルに出会うことがある。それは「この程度でいいだろ」だとか「まぁこんなもんだろ」みたいな気持ちじゃなくて、ニュアンスとしては「こんなに出来映えがいいんだから文句なしでしょ」のような肯定的なものだ。先代のメルセデスGLCがそうだった。そして新型のGLCは、さらに強くそう感じさせてくれるクルマだった。これで不満を感じる人っているのかな? というくらいに。

 ご存じのとおりGLCは、孤高のGクラスと特別な存在というべきマイバッハGLSを別にして、GLA、GLB、GLC、GLE、GLSと並ぶメルセデスSUVラインアップのちょうど真ん中に位置するモデル。いうまでもなくセダンなどのCクラスのSUV版的な存在だ。もちろん基本構造や基本的なデザインの方向性は、セダンやステーションワゴンのCクラスから派生したものである。

 最新モデルは、日本でもメルセデス最多販売台数を記録したこともある初代から7年ぶりのフルモデルチェンジで誕生し、本国では昨年の夏に発売、日本には今年の3月半ばに上陸を果たしている。同じ車格のインポートSUVたちと較べてだいぶ新しい、といえる。

 とはいえ、スタイリングは知らない人だと新型になってることに気づかないくらいのキープコンセプト。ただし、ヘッドライトやテールランプの形状などディテールが違っていたり、ややボリュームを増した下まわりに対してキャビンがコンパクトに感じられるシルエットを見せていたりと、じっくり眺めているとイメージを踏襲してるだけでかなり違うのだな、ということが判ってくる。

 シンプルでトラディショナルといえる範疇にあり、ほどよくスポーティでほどよくクラッシィな薫りが漂っていて、パッと見た瞬間から好印象を覚えさせられた。

 インテリアは、もしかしたらセダンのCクラスよりもラグジュアリーに感じられるかもしれない。基本デザインはセダンのCクラスによく似ていて、それが上下方向に厚みを持たされてる感じなのだが、リアルウッドのパネルが標準で備わったり目立たない部分までパッドで覆って樹脂っぽさをあまり感じさせないよう配慮されていたり。Cクラスのセダン/ワゴンなどと同様、タービンのような丸形エアベントもややスクエアな楕円形となり、これまでより自然で落ち着いた雰囲気に感じられる。

 けれど、もっとも大きな変更点は見えない部分にある。プラットフォームはセダン/ワゴンなどと同じ最新のMRA IIへと刷新され、フロントが4リンク式、リヤがマルチリンク式のサスペンションには、状況に応じて減衰力を調整するセレクティブダンピングシステムが標準で備わっている。そのうえセットオプションとして、エアサスペンションとリアアクスルステアリングを選ぶこともできる。

 その組み合わせが、最強といえる部類だった。試乗車はそれらをすべて備えていたのだが、走り出して1分もしないうちに「これでいいじゃん!」な気持ちにさせられたのだ。

すべてに違和感のない走りをさらっと実現しているスゴさ

 スタートして即座に気づいたのは、その乗り心地のよさ。足腰の動きのストローク感がとても優しくて、乗り味は滑らかにしてまろやか。速度域が高まればそれに伴って引き締まっていくのだが、高速道路でもワインディングロードでも「乗り心地、ホントにいいな」という印象は変わらなかった。路面に多少の凹凸があっても、なにごともなかったかのようにやり過ごしていくのだ。ぶっちゃけ、飛ばしても快適。スポーツモードに切り換えても、変にゴツゴツした硬さを伝えてくるようなことはない。

 リアアクスルステアリングの効き目も、ものすごい。逆位相にも同位相にも最大4.5度という大きな切れ角で後輪を操舵するこのシステムは、低速域ではじつにコンパクトに曲がれ、中速域ではライントレース性を高め、高速域では安定性を確保してくれる大きな武器。走りはじめてから最初の交差点で「えっ?」と声が出たのは、最小回転半径5.1mというこの機構が生み出す小まわりのよさを予期せず実感したからだろう。ロックトゥロックが2回転というクイックなステアリングの貢献も、もちろん小さくはない。

 GLCの車体サイズは全長4725mm、全幅1890mm、全高1635mmで、ホイールベースは2890mm。これは先代に対して全長がプラス50mm、全高がマイナス5mm、ホイールベースが15mm長い計算で、ざっくりいうならマツダCX-7より微妙に大きいくらいのサイズ感。そもそも日本の路上で持て余すほどの大きさじゃないうえに、この小まわりの効きっぷり。街なかでもワインディングロードでも、だからストレスはまったく感じられないのだ。

 いや、それどころじゃない。セレクティブダンピングシステムにエアサスペンション、リアアクスルステアリングという三種の神器と剛性の高い車体の組み合わせは、高速道路では抜群の安定性を、そしてワインディングロードではレールの上を走ってるかのようなハンドリングを、しっかりと味わわせてくれる。しなやかな乗り味を保ったまま、過大なロールを見せるでもなく、ピタリと安定したままコーナーをクリアしていく様は、とてもこの大きさのSUVのフットワークには思えない。

 もちろん駆動は4WDだから、リヤのみならずフロントのタイヤがグリップを生み出してることも実感できる。こうして言葉にすると、何だかマジカルな感じに思わせてしまうかもしれないが、そうした動きは見事に自然といえる範疇にあって、違和感のようなものを感じさせないあたりがまた凄い。とりわけスポーティに仕立てられたクルマというわけではないし、そういう味わいが色濃いというわけでもないが、サラッとできてしまうあたりが、考えてみるとさらに凄い。

 危なく伝え忘れそうになるところだったが、日本に導入されてるのは、まずはGLC 220 d 4MATICという2リッター直4ターボディーゼルのみ。これは先代が積んでいたエンジンのストロークを伸ばして排気量を1950ccから1992ccへとわずかに拡大したものだが、このエンジンと9速ATの間にスタータージェネレーターを挟み込んだマイルドハイブリッドである。

 これがまた好印象だった。内燃エンジンは197馬力/3600rpmに440Nm/1800-2800rpm、モーターのほうは23馬力に200Nm。低速域で力強いのはもちろんだけど、レスポンスがよくて、まわしていく楽しみもちゃんとある。得られるスピードも加速感も、必要十分を越えている。基本的に素晴らしいエンジンなのだ。しかも尖った感じはどこにもなく、全体的に柔軟でしなやかな印象。

 それに加えて48Vモーターの恩恵、である。ゼロスタートのときにスッと車体を推進して速度を上げていくときの、スムースなフィーリング。低回転で巡航していてアクセルペダルをふみ増ししたときのキックダウンの少なさ。アイドリングストップから復帰するときの、振動とはほとんど無縁の滑らかさ。それらはすべてモーターが存在するからこそ、なのだ。

 さらに、車内はかなり静かである。エンジンの音質としてはディーゼルのそれなのだけど、耳障りではないし、車内に入ってくる音はいい具合に抑えられている。ロードノイズも風切り音もあまり入ってこないから車体の遮音性も高いのだろうけど、この静けさがロングを走るときの聴覚から来る疲れを最小限に抑えてくれることは間違いないのだから。

 今後、本国には用意されてるさまざまなパワートレインを積んだGLCが、もしかしたら日本にもたらされることがあるかもしれないけど、個人的には「このディーゼルターボがベストなんじゃないか」とすら感じてる。それくらい気に入った。

 柔軟で力もパフォーマンスもあるパワートレイン。いかなるときも快適な乗り味。WLTCモードで18.0km/Lの好燃費。使い勝手のいいSUVの車体。不満など何ひとつ見つけることができなかった。新しいGLCは、先代以上に完成度の高さをもってして、あらゆる人をさらっと説得してしまうのだ。恐ろしい存在である。

 たしかに国産勢と較べれば高価かもしれないが、それだけの価値は十分にあると断言する。気になってるのであれば、まずはぜひとも試乗してみて、とオススメしておきたい。