ホンダ・フィットの販売が伸びないのは先代の影響!? 3代目モデルについて詳しく解説

この記事をまとめると

■フィットはホンダのコンパクトカー

■今回は2013年に登場した3代目について詳しく解説

■魅力的なクルマだが、度重なるリコールが販売に悪い影響を与えた

先代となる3代目フィットについて解説

 2022年10月にマイナーチェンジを施した現行フィット。2020年に登場後、販売的にやや苦戦しています。

 初代、2代目と大ヒットしたことを考えるともっと人気が出てもよさそうに思いますが、現行モデルの販売がイマイチ伸びないのは先代となる3代目の影響があるとも言われています。

 今回は3代目フィットがどんなクルマだったかを振り返っていきましょう。

3代目フィットとは

 2001年にデビューした初代、2007年にフルモデルチェンジで登場した2代目ともにコンパクトカーのベストセラーに輝いたフィット。センタータンクレイアウトを採用したことで広い室内空間を実現したことなど、実用性の高さで大きな人気を得ることになりました。

 コンパクトカーのベストセラーとなったフィットは2013年に3代目が登場。2代目と比べて全長やホイールベースを延長し、ユーティリティ性能をさらに高めるとともにパワーユニットを一新するなど、大きな進化を果たしています。

 とくにハイブリッドユニットはモーター内蔵のDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)を備える「スポーツハイブリッドi-DCD」へチェンジ。クラッチによりエンジンとモーターの接続・切断が可能となることで、頻繁にEV走行が可能となりました。

 ただ、後述しますが、このハイブリッドユニットに不具合が多発し、フィットの評判を落とすことになってしまいます……。

 3代目フィットは2015年にマイナーチェンジを実施。フロントグリルを中心にデザインを変更するとともに装備を充実させました。初代、2代目と比べて販売が低下したことに対して回復を図ります。

 その後、2017年にもマイナーチェンジを行い、ホンダの安全運転支援システム「Honda SENSING」を採用。エントリーグレード以外に標準装備しました。

 しかし、3代目は先代までの人気を取り戻すことができないまま2020年に生産終了。同年2月にフルモデルチェンジで現行モデルとなる4代目へバトンタッチしました。

3代目フィットの特徴

プラットフォーム&シャシー

 3代目フィットのボディは新たに設計されました。このボディは4つのコンポーネントの接合部を共通化し、ガソリン車とハイブリッド車など異なるボディに対応できる構造を備えていることが大きな特徴です。

 また初代N-BOXに採用された車体の骨格となる構造部品を先に結合し、その後、外側のアウターボディを取り付けるインナーフレーム骨格を採用。この骨格を採用したことにより、強度や剛性が高まりました。

室内空間

 3代目フィットは初代、2代目が採用したセンタータンクレイアウトを踏襲。一般的な後席下に燃料タンクを置かないレイアウトを採用したことでフィットは後席をボディ後方に下げることができ、後席足元スペースを広く取ることを可能としました。

 またホイールハウスの張り出しを小さくすることなどで、後席への乗降性も向上しています。

 前席下に燃料タンクを配置するホンダ独自のレイアウトですが、3代目は燃料タンクを薄型化したことで後席のみならず、先代より前席の快適性を向上しています。

 ラゲッジルームは後席を拡大するためやや減少。とはいえガソリン車で363リッター、ハイブリッド車で314リッターの容量を誇ります。

パワーユニット

 3代目フィットには1.3リッター直4ならびに、1.5リッター直4のガソリンエンジンと1.5リッター直4+モーターのハイブリッドをラインアップしています。

 同車のハイブリッドは先代が搭載していたIMAから新たなハイブリッドシステムとなるi-DCDを採用し、各種性能を大きく高めました。

 新たなユニットを選択したのは、先代に積まれていたIMAのネガを解消するためが大きな理由です。

 シンプルかつ安価に搭載できるシステムだったIMAですが、エンジンとモーター、トランスミッションが連結しているため、EV走行できるのはエンジンが気筒休止している状態のみとなること。また発進時にはエンジンがかならずかかってしまうことや、モーター出力とバッテリー容量を大きくできないデメリットを抱えていたのです。

 しかし、新たに搭載したi-DCDは1.5リッターエンジンに、電気モーターを内蔵したハイブリッド専用のトランスミッションを備え、走行シーンに合わせてクラッチによるエンジンとモーターの接続・切断が可能となりました。

 また、モーターの出力も大きく高められ、駆動用バッテリーもリチウムイオン化したことで電力容量が1.5倍にアップしています。

 このシステムを採用したことで燃費性能も向上し、JC08モード燃費は33.6km/L。またトランスミッションがDCTとなったことで、ダイレクト感があるスポーティなフィーリングをもたらしました。

中古車購入の際はリコール済みかどうか確認を!

エクステリア&インテリアのデザイン

 3代目はホンダが同車からスタートした「エキサイティング・H・デザイン」をテーマに展開。フィットらしいモノフォルムに新しさと、ボディサイドのキャラクターラインを備えるなど、力強さを際立たせたデザインを採用しました。

 インテリアはピアノブラック加飾されたセンターコンソールや、シルバーメッキ処理されたエアコンアウトレットなど、先代より質感が向上。

 またメーターパネルはガソリン車とハイブリッド車でデザインを変更。ガソリン車は3眼メーターを採用する一方、ハイブリッド車は中央に速度計、左右に回生エネルギーモニターやマルチインフォメーションディスプレイを配置する専用メーターを備えています。

ブランドイメージを落としたリコール問題

 先程、お伝えしたように3代目フィットのハイブリッド車にはi-DCDを搭載していましたが、このユニットの肝となるDCTはトラブルが多発。

 2013年10月、同年12月、2014年2月、同年7月とi-DCDに関わる4回のリコールが発生。さらに2014年10月にはi-DCDには関係ないものの、電気ノイズの対応に関わることを原因とするリコールが発生しました。

 計5回のリコールはフィットの評判を落とすことにも繋がってしまったことは間違いなく、ブランドイメージを著しく低下させてしまいました。

 度重なるリコールにより、ホンダ社内の組織改革に踏み切ることになったほど大きな問題となりましたが、4代目となる現行モデルの販売がイマイチな原因も、このリコールによるイメージ低下が回復できていないことが大きいのではと言われています。

歴代フィットを紹介

初代(2001〜2007年)

 現行モデルまで続くセンタータンクレイアウトを採用し、広い室内空間を実現したことや高い燃費性能、使い勝手がよいボディサイズを有していることなどで登場後、一気に人気車種となったのが初代フィット。その人気は2002年の国内累計販売台数において1位を記録したほどです。

 デビュー時は1.3リッター直4エンジンのみをラインアップしていましたが、その後、1.5リッター直4エンジンを追加。

 2004年のマイナーチェンジを経て、2007年に2代目へモデルチェンジしました。

2代目(2007〜2013年)

 大ヒットを記録した初代の後を受け、2007年に2代目が登場。初代よりひと回り大きなボディを備えモノフォルムデザインがより強調されました。

 パワーユニットは1.3リッター直4と1.5リッター直4をデビュー時から用意。また2010年のマイナーチェンジでフィット初のハイブリッド車を設定しています。

 ハイブリッドユニットはIMAシステムと呼ばれるパラレル方式のハイブリッドシステムです。このシステムはエンジンを主とする方式で発進と加速時にモーターがアシスト。エンジンとモーターが直結されているため、エンジンはつねに動き続けていました。

 ハイブリッド車の追加も合わせて2代目も初代同様、高い人気を誇り2013年に3代目へバトンタッチしました。

4代目(2020年〜)

 今回のテーマとなる3代目からフルモデルチェンジにより2020年に登場したのが4代目フィット。3代目とは異なり、柴犬をイメージした親しみやすいデザインを採用したことで大きな話題となりました。

 4代目は従来までとは違い、「HOME」「CROSSTAR」「NESS」「LUXE」「BASIC」と5つのスタイルをラインアップ。幅広いユーザーを取り込むべく商品展開を行いました。

 パワーユニットも先代とは異なり1.3リッター直4ガソリンエンジンと1.5リッター直4+モーターのハイブリッドの2種類を設定。ハイブリッドはDCT方式のi-DCDからe:HEVへと変更されています。

 4代目は2020年のマイナーチェンジでパワーユニットの変更やスポーツモデル「RS」を追加。デビュー時に設定されていた「NESS」が廃止されました。

3代目フィットの中古相場

 3代目フィットの中古相場は20〜235万円。執筆時点で全国では3800台が販売されています。

 一般的にガソリン車とハイブリッド車がラインアップされているモデルの場合、ガソリン車のほうが安く販売されていますが3代目フィットは別。リコールが影響しているのでしょうが、年式や走行距離に違いこそあるものの、ハイブリッド車のほうが安く売られているのが特徴です。

 ハイブリッドは20万円から207万円、ガゾリン車は45万円から235万円で販売されていました。

 ハイブリッド車を購入する場合、リコール対策済みかどうかを確認する必要があります。

 購入前、先に上げたリコールがすべて対応されているかどうかを記録簿や販売店を通して確認しましょう。

まとめ

 コンパクトカーに革命を起こしたとも言えるフィットですが、現行モデルや先代モデルとなる3代目の存在感はイマイチ。同クラスでは日産ノートに人気面でも引き離されています。

 ただ、今回取り上げた3代目や現行モデルもクルマ自体の出来は悪くありません。そう考えると3代目で繰り返されたリコールによるブランドイメージの低下が惜しまれます……。

 今後、初代や2代目のような人気が得られるよう、フィットがどのように盛り返していくかに注目したいものです。