人気車は買ってから手元にくるまで年単位! 他メーカーに比べてトヨタの納期遅延が深刻なワケ

この記事をまとめると

■いま新車の納期遅延が深刻だ

■なかでもトヨタ車の納期の長さが目立つ

■理由はトヨタ車の特徴やラインアップなどにある

プリウスの納車には2年近くかかることも

 最近は各メーカーともに、新車の納期を遅らせている。従来は一部の例外を除くと、契約したあと、1カ月から2カ月で納車できた。それが今は3カ月でも短い部類に入り、6カ月から1年を要する車種も増えた。

 その原因は、半導体を筆頭に、ワイヤーハーネス、樹脂、塗料といった原材料やパーツの供給が滞っていることだ。供給不足の背景には、新型コロナウイルスやロシアのウクライナ侵攻の影響がある。

 そして、納期の遅れ方を見ると、メーカーによる違いもある。納期は車種、時期、販売会社によって異なるから一概にはいえないが、販売店に尋ねるとトヨタは全般的に長い。

 たとえば2023年5月上旬時点でプリウスの納期をトヨタの販売会社に尋ねると「プラグインハイブリッドが約1年で、売れ筋になるハイブリッドのGとZは2年近くを要する」と返答された。

 クラウンクロスオーバーは「納期は約10カ月」という返答が多いが、販売会社によっては「2.4リッターターボは受注台数が弊社の割り当てに達したから受注を停止した。2.5リッターも近々停止する可能性が高い」とのこと。このほか、ノア&ヴォクシーのハイブリッドなども納期が約1年に達する。

 逆に短いのは軽自動車で、ホンダカーズによると「軽自動車は大半の車種が6カ月以内に収まる。逆に小型車と普通車は長く、シビック、ステップワゴン、ZR-V、ヴェゼルなどは1年以上を要している」という。

 このほか、スズキやダイハツの軽自動車も、ジムニーなどの例外を除くと、納期は2カ月から4カ月に収まることが多い。

トヨタの車種は半導体不足の影響を受けやすい

 トヨタ車の納期がほかのメーカーに比べて長い背景には複数の理由がある。まず、ランドクルーザーなどは、新型コロナウイルスや半導体の不足以前に、日本市場向けの割り当て台数が少ない。ランドクルーザーの開発者は「生産総数の50%が中近東に輸出され、現行型はとくに人気が高い。オーストラリアも多い。逆に日本市場の割り当て台数は、生産総数の10%を下まわる」としている。

 ボディサイズや価格帯の影響もある。トヨタには、価格を高めに設定したミドルサイズ以上の車種が多い。部品点数も増えて、装着する車種の少ない特殊な半導体やユニットも使われる。納期の遅延を招きやすい車種が目立つ。

 車種の数が多いことも理由のひとつだ。日産やホンダは、合理化のために車種を大幅に減らしたが、トヨタはいまでも選択肢をそろえる。たとえば全長を4500mm以下に抑えたコンパクトSUVだけでも、ライズ、ヤリスクロス、カローラクロス、C-HRがある。このように車種が多いと、半導体などの供給不足の影響を受けやすい。

 このほか、納期の短い軽自動車をほとんど扱わないことも理由だ。直近の2023年1〜3月の国内販売台数を見ると、ホンダは57%、日産も42%が軽自動車で占められた。軽自動車が多ければ、前述のとおり納期も短く抑えやすい。

 逆にトヨタは、少数のOEM車を除くと軽自動車は扱わない。国内で販売する小型/普通車の50%以上がトヨタ車(レクサスを含む)だから、ほかのメーカーに比べて、納期を延ばす条件が重なっている。