【試乗】「ホントに新型?」なんて見た目で判断すると裏切られる「深化」っぷり! NEWインプレッサは「曲がり」も「止まり」もスゴイ

この記事をまとめると

■スバルがインプレッサをフルモデルチェンジ

■3つのグレードが用意されており、FFモデルも設定されている

■ハブやボディを改良したほか、ホイールのPCDが114.3になった点がポイントだ

スバルを代表する1台が待望のフルモデルチェンジ

 スバル・インプレッサがフルモデルチェンジして登場する。今回そのプロトタイプ仕様を袖ヶ浦フォレストレースウェイで試乗することができた。ただ、試乗コースがサーキットではあるものの、限界走行テストということではなく、さまざまな速度レンジでの走りを体感することを目的としているものだ。

 新型インプレッサはフルモデルチェンジと説明されているが、基本的な車体の骨格やサスペンション形式、エンジン、パワートレインなどは従来のモデルのものを共用している。ただ、多くの部分に改良を施し、手を加えることによってより深く「深化」しているという。

 用意されていたのは、四輪駆動AWDモデルとFWD前輪駆動モデル。そして比較参考用に旧型従来モデルのAWD車も用意されていた。事前に受けたレクチャーによると、今回の改良の特徴は、デザイン性やサスペンション、車体、またパワートレインなど広範囲に及び、着目点としてはサスペンションチューニングの見直しや、車体の剛性アップ、またノイズの低減など質感の向上と幅広い範囲に渡っている。

 パワートレインは、e-BOXERと呼ばれる独自のハイブリッドシステムを全車に搭載している。e-BOXERは2リッター水平対向4気筒の直噴DOHCエンジンにCVTトランスミッションを繋ぎ、CVTユニットのなかにモーターを組み込んでハイブリッドとしている。他社と違うのはトランスミッションのなかにモーターが仕込まれていることで、EVモードでの発進も可能となっている。

 また、エンジンは独立して稼働しておりISG(インテグレートスタータージェネレーター)を備えている。アイドルストップからエンジンが始動する際のマナーを向上させているのが狙いである。ただこのISGは、他社が採用している48Vシステムとは異なり、通常の12Vで稼働しているので、エンジンの出力をアシストすることには使われず、アイドルストップ状態からエンジンを再始動するときにのみ用いられる。ISGのための専用バッテリーを備えるため、エンジンルーム最前部左右シンメトリックにバッテリーをふたつ備えているのが特徴とも言える。

 冷間時の始動は通常のセルモーターで行い、これは12Vサービスバッテリーから電源が供給される。一方で、走行中のアイドルストップなどエンジン停止状態からの再スタート時にはISGで始動し、専用バッテリーにより電源供給するという一風変わった仕組みでもある。

 こうした複雑な機構を持っているので、このパワートレインは、ガソリンエンジンのみの仕様に対して100キロほども重量が増加し、それによる重厚感の向上が得られている。加えてエンジンのシリンダークランクシャフトの剛性アップやエンジンマウント、トランスミッションマウントを液封化することなどにより振動を低減し質感を高めている。

 一方、車体側では接着剤を増量や使用範囲を増やし、ノイズやバイブレーションの低減を図り、またルーフを左右で支えるブレースに防音効果を生む専用の「高減衰マスチック(弾性接着剤)」接着剤を流布しルーフまわりのノイズの低減に大きく役立たせているという。

 そのほかにもスタビライザーマウントのブッシュブラケットを新造し、ブッシュゴムの変形を低減。サスペンション自体では、スプリングバネレートの最適化、またショックアブソーバーのダンピング特性の見直しも行っているという。

オン・ザ・レールでスムースに走れる新時代のインプレッサ

 走らせた感じとしては、コーナーでのロール感が抑えられ、非常にフラットな乗り心地が印象的だ。しかし、ロール抑制効果は通常、スタビライザーやバネレートの強化、あるいはロールセンターを高めたりすることによって得るものだが、新型インプレッサではむしろリヤのバネレートを従来モデルより低く設定し直し、フロントもそれに合わせてバランスを取るなどして実現していて、サスペンションレートを硬くする手法はとられていないという。

 まず、ドライビングシートで人間の仙骨の姿勢を直立に、正しい位置に矯正し、医学的に検証した理想的姿勢で運転姿勢がとれるような位置決めを行うことで上半身のブレを抑制し、車体ロールを感じにくくしているという。また、リヤを早めにロールさせることで、フロントはその後を追従してロール領域に入っていくことで、ステアリングを切り込んだ瞬間のロールはまずリヤ側が沈み込むことで発生させているため、クルマ体全体としてのロール角自体は従来モデルと変わらないものの、ドライバーが受ける印象はロールが抑えられたものに変化しているのだという。

 こうした部分に進化(深化)と呼ばれる非常にきめの細かなチューニングが施されていると言える。従来フルモデルチェンジと言えば、車体骨格やデザイン、サスペンションなどもゼロから作り直すのが通常だが、今回は良い素材を生かし、さらに深く磨き上げ突き詰めていくことでフルモデルチェンジと呼ぶに相応しい内容としているのだ。

  袖ヶ浦フォレストレースウェイで走らせた印象としては、デュアルピニオンとなったステアリングのライントレース性が極めて高く、また縁石や路面のアンジュレーションなどの反力をうまく打ち消していてステアリングにフィードバックさせないことで、安定したステアリングフィールが得られるようになっているのも美点として挙げられる。

  パワートレインに関して言うと、EVモードで発進したあと、時速30キロを超えるとエンジンが始動し、その後はモーターとエンジンの協調制御となる。基本的にはエンジンが主体的に稼働し、モーターが加速シーンなどでアシストすることになる。

  ブレーキに関しても、今回のモデルでは新開発の電動マスターバックを新規採用し、ブレーキペダルストロークを減らしつつも踏力に応じた制動力が立ち上がるきめの細かいチューニングが施されている。他社のハイブリッドだとブレーキペダルを踏むと、まずモーターで回生し制動Gを発生させる。そして停止の直前にディスクブレーキへと切り替えて停止させているが、スバルではまずアクセルを戻したときにモーターが回生し、次にブレーキペダルを踏むとブレーキの液圧が立ち上がってディスクブレーキをバイトさせつつ、回生制御も踏力に応じて強弱し、そのままの状態で停止までをつかさどる。

 その結果、極めて自然なブレーキ操作フィールが実現されており、従来モデルではややカックンブレーキとなっていた特性が消えて踏力に応じたリニアな特性とすることが可能となっている。また、HVバッテリーが満充電のときには回生が行えなくなり、他社ではそうした場合にモーターが回生した熱エネルギーはエンジンを空転させるなどして消費することで回生力を維持しているが、新型インプレッサの場合は、あらかじめディスクブレーキをつかませているために違和感がなく、踏力と制動Gの発生バランスが安定的に得られているのだ。

 HVバッテリーは自然空冷方式で、それほど大きな容量を持たないため、長い下り坂のシーンなどでは比較的満充電状態となりやすく、そうした場面でブレーキの制動フィールの変化を起こさないためにも、今回の仕組みは適していると言えるだろう。

 ステアリング上でドライブモードを切り替え「Sモード」を選択すればアクセルレスポンスが高まり、変速シフトパターンも変化する。CVTとは言いつつ8速のステップ比が刻まれているので、多段ギヤ車を操作しているような走行フィールも得られる。とくに減速時にはエンジンがブリッピングし、シフトダウンしたような感覚でシフトダウン制御が行われるので、従来のCVTとは一線を画した走行感覚に仕上げられている。

 加速時においても5500回転以上、レッドゾーンの6000回転近くにおいて変速が切り替わり、変速操作でシフトアップしているかのような感覚が得られる。サーキットなどを高回転レンジで走行してもマッチングが良く、また全体的には静かで非常に高い質感が得られるようになった。

 コーナリングでの走行姿勢安定性とドライビングポジションの安定感から、格上の車格のクルマだと感じられる。

 また、特筆すべきところは先に発売されているクロストレックと同様にホイールのPCDが114.3に改められ、他社のモデルと同じような寸法にとなったことだ。これはスバルユーザーにとっては大きなトピックといえるだろう。これに伴い、ハブ径を拡大することができ、全体的にホイールの位置決め剛性を高めることに成功している。

 四輪駆動でありながら、ステアリングを切れば非常に回頭性が高く、ライントレース性に優れた安定感のあるコーナリングが可能で、エンジン縦置きによるシンメトリカルレイアウトの良さも相変わらず生かされていて、優れた走行バランスが楽しめるのが特徴だ。

 新型インプレッサは、先に発売されているクロストレックと多くの部分を共用しているが、SUVではなく、乗用モデルとして、それを楽しみたいという向きには高く評価され受け入れられることだろう。