一般車にまぎれて取り締まるパトカー! 高速隊の「覆面車両」を見破る手段はあるのか?

この記事をまとめると

■一般車両を装って取り締まりにあたる覆面パトカー

■今回は高速道路を走る覆面パトカーについて解説

■全国各地で新しい覆面パトカーの配備が進んでいる

交通取り締まりと無関係の覆面パトカーもある

 速度違反は、オービスやネズミ捕りなど、自動装置による取り締まりのほか、パトロールカー(以下パトカー)の追尾によって行われているのはご存じのとおり。

 白と黒に塗り分けられた一般のパトカーなら一目瞭然。警戒のしようもある。しかし、一般車両を装って取り締まりにあたる、いわゆる覆面パトカーはかなり厄介な存在。運転に自信のあるベテランドライバーでも、多くの人がお世話になっているかもしれない。

 ひと言で覆面パトカーといっても、大きく3つに分けられる。ひとつは、職務質間や事件の初動捜査を行う機動捜査隊の警官が乗り、捜査や追跡などに使う車両。警察だということを悟られないことが目的なので、昔のプレミオ/アリオンや、カローラなどといった地味な車種が大半だ。緊急車両として、事件現場に急行する際などに一般道を制限速度を超えて走行する必要上、赤色灯(脱着式)のほか、サイレン、拡声器を備える。

 ふたつ目は、基本的に都内にのみ存在する「皇宮警察」用。皇室や国賓の警備や護衛を担い、通常の警察官と制服こそ同じだが、任務にあたるのは警察官ではなく、正式には皇宮護衛官。

 このふたつの覆面パトカーについては、スピード違反などの交通違反取り締まりとは無関係と考えてよさそうだ。

いまも昔も定番はクラウンアスリート、RSも配備

 そして「交通機動隊」と「高速隊」に配備されている覆面パトカー。交通機動隊は一般道、高速隊は高速道路や有料道路で取り締まるのが大きな違いで、今回は、高速隊(正式には高速道路交通警察隊)の覆面パトカーについて述べてみたい。

 言うまでもなく、高速道路での覆面パトカーの定番といえば、トヨタ・クラウンをおいてほかにない。

 大昔は“コンフォート”と呼ばれた、主にタクシー用途のセダンモデルをベースにした覆面パトカー(逆に目立っていた?)が主流だったが、ここ数年は、古いところでは12代目(2003年〜)から、現行220系の15代目までをラインアップ。しかも、年式の新しいモデルでは、外観が比較的地味な“ロイヤルサルーン”や“G”といったグレードに加え、搭載エンジンなどの詳細は不明ながら、スポーティグレードの“アスリート”や“RS”も導入。一見しただけでは一般車との見分けがほとんどつかない。

 ボディカラーも、元来フォーマルなクラウンで定番のシルバーや黒、紺色、ホワイトなど、まるで違和感がないのも厄介だ。

 ともあれ、高速道路上でクラウンを見たら、とりあえず覆面パトカーを疑うことだ。もし、外観上で手がかりがあるとしたら、唯一、キズや汚れひとつなく、異常なほどキレイに保たれていることくらいか……。

覆面パトカーのニューウェーブか!? 見た目も走りもイケてるスポーツセダン

マジで覆面!? WRブルーのWRX S4

 全国各地で新しい覆面パトカーの配備が進んでいる。たとえば現行車ではないが、318馬力の3.5リッターV6を搭載したトヨタ・マークX。絶対数はクラウンほどではないが、「覆面=クラウン」の固定観念が根強いベテランドライバーほど気づきにくい。実際、筆者も東京外環自動車道路で警ら中の同車両に遭遇したが、助手席のスタッフから「覆面かもしれない」という忠告を受けなかったら、危ういところだった。

 また、これも私事で恐縮だが、宮崎自動車道で出くわした5代目スバル・レガシィB4。白のボディカラーは覆面パトカーとは思えず、気にせず追い越したが、バックミラーに目をやると、後方で赤色灯を点灯させて追走してくるB4の姿。そのときは幸い警告だけで済んだが、存在を悟らせない巧みな取り締まりは、まさに覆面パトカーの面目躍如といったところ。

 きわめつけは、1年ほど前にSNSやネットニュースなどで取り上げられて話題になった、埼玉県警に配備された3台のスバルWRX S4だろう。

 地味なセダンの覆面パトカーが数多く活躍(?)するなか、同じセダンでも、300馬力のターボパワーを4輪で駆動。外観もエアロパーツを装着したまんまスポーツモデル。知らない人に「覆面パトカーなんだよ」と言っても、信じてもらえるだろうか?

 しかも、3台のうち、シルバーとグレーという2台のボディカラーは理解できるが、1台はスバルのスポーツモデルのイメージカラー、地味とは言えないWRブルーに彩られている。何も知らなかったら、単にクルマ/スバル好きが乗っているWRX S4だ。

 数少ない外観上の一般車との見分け方のひとつはナンバープレート。所轄の地名(仮に埼玉県なら大宮、所沢、熊谷など)が記されていること。そして、希望ナンバーではないこと(地名のあとの500や300などの3桁番号で判別可能)が手掛かりになる。

模範運転を地で行く覆面パトカーのオーラ

 正体を隠して違反車両を取り締まるのが覆面パトカー。一般車との見極めが難しいのは当然だ。たとえば、覆面パトカーのスモークタイプのリヤウインドウガラスもそう。かつては運転席と助手席、2名の大人が乗っていることで、後方から覆面パトカーか否かの判断がある程度可能だったが、それもできなくなってしまっている。だとすれば、車両だけでなく、その生態、すなわち取り締まりの傾向や運転にも目を向けるべき。

 基本的に、覆面パトカーが取り締まり中に追い越し車線を走ることはなく、走行車線をひたすら巡航していることがほとんど。そして、追い越し車線を速度超過で走ってきたクルマを確認するや、追い越し車線に移って追尾を開始、超過速度の計測を行う。

 つまり、走行車線を走る怪しいセダンを見かけたら、用心することに越したことはないということ。また、巡航速度の制限速度内、かつ、前走車との車間距離も十分に確保された、交通法規に則した模範的運転である点も特徴だ。

 そのため、2車線の高速道路で、覆面パトカーに気づいたクルマがその後ろに続き、さらにほかのクルマが何台もの後に続くといった現象が発生。なぜか追い越し車線がガラガラで、走行車線に何台ものクルマが連なっていたら、その先頭を覆面パトカーが走っている可能性が高いと考えたほうがいいだろう。

 覆面パトカーを運転する警察官の運転も判断材料になる。取り締まりでの高速走行はもちろん、走行車線を走っているときでも、つねに車速と車間距離は一定。進路が少しもブレることはなく、きわめてスムースな車線変更など、何から何まで完璧。大げさに言うと、一般ドライバーとはまったく違うオーラが出ているのだ。

 もっとも、それを見て感じ取れるとしたら、近しい感覚とスキルを持っていること。そして、「そもそも論」になってしまうが、普段からスピードを控えめに、制限速度を守っていれば、覆面パトカーは恐るるにたらず、ってことだ。

もしかしたら覆面かもしれない怪しいセダン5選

トヨタ・クラウン

 全国各地で覆面パトカーの採用率はNo.1。現行の220系はまだ数が少なく、それ以前の型が大半を占めている。かつてと比べると、一般車両と見分けがつきにくいスポーツ系グレード(アスリートなど)の比率が高まっている。

トヨタ・マークX

 登場から13年が経過している絶版モデルだが、信頼性の高いトヨタのセダンとして、クラウン同様に覆面パトカーの採用率が高い。素直な操縦性はFRならでは。2.5リッターがメイン車種だが、3.5リッターV6搭載車の速さはGTカー並み。

トヨタ・カムリ

 覆面パトカー初のFFハイブリッドモデル。WSグレードをベースに、TRD製のエアロパーツやホイールを装着したドレスアップ仕様。現在、高速隊での採用はなく、警視庁の交通機動隊に配備され、一般道での取り締まりを実施。

日産スカイライン

 スポーツセダンの名をほしいままにした歴代スカイラインも、覆面パトカーとして導入されることが多かった車種のひとつ。完全に高級車の仲間入りをした現行モデルも、一部の県で交通取り締まり用覆面パトカーとして導入されている。

スバル・レガシィB4

 5代目にあたるBM系を覆面パトカーとして導入。4ドアセダンのB4で、ボンネット上に空気導入口を設けたターボモデルは、大きな識別点。上級グレードにもかかわらず、リヤワイパーが省かれている点も覆面パトカーの特徴だ。

※本記事は雑誌CARトップの記事を再構成して掲載しております