プリウスPHEVって普通にアリじゃん! もう「一部の人向け」じゃないハイブリッドを凌ぐ中身

この記事をまとめると

■新型プリウスのPHEVモデルに試乗

■先代モデルとは違い、HVモデルとPHEVでデザインはほとんど同じとなっている

■PHEVモデルはバッテリーの都合からラゲッジ容量やデザインが変更になっている

プリウスPHEVは走りもデザインもめっちゃいい!

 すでに袖ヶ浦フォレストレースウェイでのサーキット試乗(プロトタイプ)を終えている新型プリウスの市販版PHEVモデルの公道試乗がついに叶った。ここでは新型プリウスPHEVにじっくり接したリポートを2回に分けてお届けしたい。

 が、まず説明したいのは、トヨタ最新の第2世代TNGAプラットフォームを用いた新型プリウスPHEVのポジショニング、HEV(ハイブリッド)車、および先代PHEVモデルとの違いについてである。というのは、先代プリウスPHEVは、エクステリア(とくにリヤ)、インテリアにおいて、HVプリウスとは異なるデザインが与えられてはいたものの、その実態は”充電できる”プリウスそのものだったのだ。

 ところが、新型プリウスのHEVとPHEVのエクステリアデザインは基本的に同一。先代のPHEVはリヤの独自のデザインを見れば一目瞭然だったのだが、新型ではフロントロワグリル、めちゃくちゃカッコいいグレースモーク×ホワイトレンズのテールランプ、専用デザインとなる19インチアルミホイール、そしてエンブレム(HEV/PHEV)の違いぐらいでしかないのだ。

 そこに、新型PHEVが新型プリウスの最上級”Z”の1グレードかつ2WDのみの、プリウスの”充電できるほう”にとどまらないハイパフォーマンスモデルという位置づけであることが証明されている。よって、新型プリウスが目の前を走りすぎる際のHEVとPHEVの見分け方は、横一直線に走るテールランプのラインが赤いのがHEV、白いのがPHEVというぐらいという判別方法となる。

 動力性能は大きく向上した。何しろHEVプリウスとは違うバランサーシャフトを加えた(これが走ると効果絶大)2リッターエンジン151馬力、19.2kg-m+モーター163馬力、21.2kg-mによるシステム出力は、先代の122馬力から一気に大容量モーターの採用もあって223馬力にも達し、ハイブリッドモードでの0-100km/h加速は2リッタースポーツカー並みの6.7秒(先代PHEVは11.1秒)という高性能を発揮してくれるのだから驚きを隠せない。

 PHEVモデルのEV走行可能距離も、大容量バッテリーの採用(搭載位置は先代のラゲッジルーム下から後席シート下に移動。当然、重心を下げ、重量物を車体中央に位置させるのに有効)によって、先代の68.2kmから87kmに延長(EV走行可能速度域は先代同様に135km/hまで)。HEVとBEVの中間に位置するPHEVの電動車としての資質を大幅に高めていると言っていい。公称87kmで、実質70kmぐらいだとしても、1日の普段使いには十分なEV航続可能距離ではないか。

新型プリウスPHEVのポイントはラゲッジにあり

 そうそう、インテリアも新型プリウスは基本的にHEVとPHEVは同デザイン。先代PHEVはHVとは違う縦型センターディスプレイを採用するなどしてPHEVならではの先進感を演出していたが、新型プリウスはそもそもハイブリッド車でも12.3インチの横長ディスプレイを採用するなど、元々、先進感たっぷりのインテリアをHEVとPHEVで共用しているのである(メーターの表示やスイッチ類などは異なるが)。

 パッケージ的には、前後席にHEVとPHEVの違いはない。具体的には、身長172cmの筆者のドライビングポジション基準で、前席頭上に最大150mm(先代190mm)、後席頭上に90mm(先代110mm)、後席膝まわりに210mm(先代230mm)。HEV同様、まるでスポーツカーのような流麗なエクステリアデザイン、1430mmしかない全高によって、前後席の乗降性は決して褒められず(高身長の高齢者の乗り降りはつらいはず)、天地が狭く横幅もあまりないリヤウインドウの視界が制限されているあたりもHEVと共通する。

 ちなみに、乗降性に難ありの後席の居住性、というか着座性、立ち上がり性も先代より後退。その理由はフロアから後席座面先端までの高さ=ヒール段差で、先代プリウスは常識的な340mm。しかし新型はHEV、PHEVを問わず305mmと低まっている。ローソファに座り、立ち上がるのと、食卓用の椅子に座り、立ち上がるのとで、どちらがラクかを想像してもらえばわかると思う。

 ラゲッジルームの使い勝手もHEVモデルとはやや異なる。フロア後方をPHEV専用設計としているため、フロアが90mm高まり、容量はHEVの410リットル(G/Zグレード。1.8リッターのKINTO専用Uグレードは422リットル。Uグレードのラゲッジ容量が大きいのは、バッテリーがエンジンルーム内にあるから。そのほかのグレードはラゲッジルームの右端にバッテリーを設置)に対して345リットルへと減少している。

 ただし、先代PHEVのように、「まるで開発途中でラゲッジルーム下に収めるバッテリー容量を増やしたかのような、ラゲッジルームの開口部よりフロアが高い妙な上げ底ラゲッジルーム」ではなく、むしろ地上約730mmの開口部段差がHEVの160mmから70mmに減少したことで、重い荷物、たとえばスーツケースやゴルフバッグなどを出し入れする際、荷物の持ち上げ操作量が少なく、開口部のスカッフプレートにゴリゴリと擦らずに済み、荷物、車体双方のキズ付きが防げるメリット、荷物の積載性の良さ(容量はともかく)をもたらしているとも言えるのだ。

 なお、新型プリウスPHEVの車両本体価格は460万円。同Zグレード2WDのHEVモデルは370万円。その差は90万円だが、政府からの補助金は55万円。差額は35万円に縮まり、かなり悩める選択になる。さらに東京都で追加の補助金が45万円出るとすれば、むしろPHEVモデルのほうが10万円安く(補助金合計100万円)買えてしまう逆転現象も起こりうるのだ(補助金が残っていて適用された場合)。

 という、デザイン、動力性能だけでなく補助金を含む購入価格まで衝撃的な新型プリウスPHEVモデルの今回の紹介はここまで。次回、実際に横浜周辺の一般道、高速道路を走った試乗記をお届けしたい。