ライバルメーカーがEV普及に本気でタッグ! トヨタ・スズキ・ダイハツが共同で発表した「軽商用EVプロト」に可能性しか感じない!!

この記事をまとめると

■トヨタ・ダイハツ・スズキの3社提携による軽商用バンのプロトタイプが公開された

■3社連合によって販売台数を増やすことを通じて価格低減を狙っている

■トヨタと提携するスバル、スズキと提携するマツダも加えればさらに販売の上積みも可能だ

ピクシス・ハイゼット・エブリイの電気自動車プロト公開

 広島で開催されたG7サミット(主要国首脳会議)において、日本自動車工業会が行った展示会場で、トヨタ、ダイハツ、スズキの3社による軽商用バン電気自動車のプロトタイプが公開された。これには、2021年に創業したCJPT(Commercial Japan Partnership Technologies)が企画に参加し、トヨタの電動技術を活用しながらダイハツが生産し、3社が販売を行う計画である。

 ダイハツは、トヨタの100%子会社で、軽自動車やコンパクトカーの開発と生産において協力関係にある。一方、この枠組みにスズキが加わったのは、2019年にトヨタとスズキが資本提携をしているからであろう。

 すでにスズキでは、軽商用EVの開発を進めているとされてきた。乗用車とはいえ、昨年日産と三菱自工から、55万円という補助金を前提とすると、200万円を切って買える軽EVが販売され、1年で両社合わせ累計5万台を生産した実績からすると、軽商用ではさらに廉価な値段が期待される。トヨタ、ダイハツ、スズキの3社連合による販売により、台数を増やすことを通じて価格低減を狙ったとも考えられるのではないか。

 日産サクラと三菱eKクロスEVの価格は、容易に設定されたわけではない。もっとも原価に影響するといわれるリチウムイオンバッテリーは、日産リーフと同じものを半分使う。車体は、これまでエンジン車で販売してきたデイズとeKクロスを活用するが、これもエンジン車の開発段階からEVを想定しての設計だった。

 さらに生産面では、三菱自工の水島工場で、永年にわたりi-MiEVをエンジン車と混流生産してきた知見が活かされている。

何台の販売が見込めるかがEV戦略では重要

 一方、今回のトヨタ、ダイハツ、スズキの3社は、十数年に及ぶ日産と三菱自工のようなEV生産と販売の経験がなく、原価低減策は限られるといえそうだ。したがって、開発や製造面での原価切り詰めとは別に、販売台数での効果も狙ったのではないか。

 発表の文面を詳しく読むと、「スズキとダイハツの小さなクルマ作りのノウハウと、トヨタの電動化技術を融合し、軽商用車に適した電気自動車を3社で共同開発した」とある。トヨタのbZ4Xは高価な乗用EVだが、かねてよりトヨタにはE-FOURと名付けた電動4輪駆動があり、たとえばその後輪モーターは40kWの出力で、サクラやeKクロスEVの47kWに近い。そうしたモーターを活用する案はありそうだ。

 また、スズキは独自に軽商用EVを開発してきており、軽商用EVのためのモーター駆動プラットフォームの開発が進んでいたのではないか。そうしたことが、3社共同の利点として想像できる。

 また、軽商用EVでは、ホンダが先んじて開発を進めてきた。そして、すでにヤマト運輸と使い勝手の検証に入っている。当然、原価の見通しも厳しく見てきたと考えられ、詳細は明らかではないが、そこにスズキやダイハツが単独で挑むには障壁が高かったかもしれない。

 さらに想像を加えれば、マツダはこれまでスズキの軽自動車を自社の車名で販売している状況もあり、また提携関係にあるSUBARUはダイハツの軽自動車を販売しているので、トヨタ、ダイハツ、スズキで扱う軽商用EVをマツダやSUBARUでも販売するとなれば、さらなる台数の積み上げも叶うだろう。

 提携当時、トヨタとスズキやマツダの関係がどう広がっていくか具体的な方向は見えにくかった。ここにきて、EV戦略での利点が生まれるかもしれない。それほどEV導入は国内各社にとって喫緊の課題となっている証ともいえる。