この記事をまとめると
■新車を買うと「メンテナンスパック」というものへの加入が勧められる
■アメリカでは新車を買うと「メンテナンスパック」は加入が標準になっていることが多い
■下取り車が綺麗なユーザーは加入し、汚いユーザーに限って加入しないことが多いという
「メンテナンスパック」とはそもそもどういうものか
いまどき新車ディーラーで見積りを取るとたいてい計上されているのが、「メンテナンスパック」などと呼ばれるもの。
ディーラーによってメニューは異なるのだが、たとえば初回車検までの間の法定点検のほか、半年おきの任意の点検料金、そしてエンジンオイルやオイルフィルター、ワイパーブレードなど消耗品の交換代などをあらかじめ前払いすることでお得になるというもの。新車販売による利益に期待できなくなるなか、メンテナンス部門の収益を安定化させるための囲い込みがメンテナンスパック導入の主目的と筆者は考えている。
また、残価設定ローンの普及も大きく影響しているようだ。残価設定ローンは支払最終回分として、その時点での残価相当額分を据え置くことで月々の支払いを軽減するというもの。支払最終回分の支払いについては、同じ店舗で新車へ乗り換えたり、当該車両を返却すればそれで完済となる。つまり、一定期間後に新車として販売した車両を引き取り再販することになるので、残価設定ローンで販売した車両のコンディション管理をメンテナンスパックに加入してもらえばできるのである。
事実スズキでは、スズキの残価設定ローンである「かえるプラン」では、ローンを利用するとメンテナンスパックが標準付帯される。
メンテナンスパックというものが導入されはじめる直前には、自分のクルマに対する管理がずさんなユーザーも目立っていたとのこと。当時話を聞いて驚いたのは、エンジンの載せ替えがそれほど珍しくなかったというもの。「冗談で『エンジンルームにクモの巣がはっている』と言うことがあると思いますが、真面目に点検で持ち込まれた車両のボンネットを開けると、クモの巣が張っているケースが珍しくなかったそうです。そんなこともあり、エンジンオイル交換をせずに走り続け、エンジンが焼き切れるといったことが頻発し、メーカーへエンジン単体の発注をすることもそれほど珍しくなかったのです」とは事情通。
クルマが汚いユーザーに限ってメンテナンスパックに入らない
このような話はクルマが日常生活の移動手段として定着しているアメリカでも聞かれた。「ある日系プレミアムブランドでの話ですが、エンジン不調を訴えるお客がきたのでエンジンを見るとエンジンオイルがほぼ枯渇していて焼き切れ寸前だったそうである。そのお客は『欠陥で訴えてやる』と言い出してひと悶着あったそうです(事情通)」。
日本において日系ブランドでは、そのほとんどがメンテナンスパックを任意加入としている。新車販売では「売り切り」といって、協力してくれる整備工場などからの紹介で販売した車両は、その協力業者でメンテナンスを受けるような売り方もあるので、それへの配慮ともいわれている。
しかし、アメリカではメンテナンスパックは標準付帯されるのが一般的。「日本人のアメリカに対するイメージでは、休日などに自宅ガレージでオイル交換をするなど、自家整備がメインと思いがちです。しかし、さすがにアメリカでも地球環境問題への注目もあり、自宅前の側溝に交換時に発生した廃油を流すことなどができなくなったそうです。そもそもエンジンの電子制御化やさらなるメカニズムの進化もあり、自家整備ができないという現実もあるようです」(事情通)
日本では任意加入なので、もちろんメンテナンスパックを必ず利用する必要はない。現場のセールススタッフによると、「あまり走行距離が伸びないなか、洗車のたびにエンジンオイルの汚れや量など、エンジンルームのチェックをこまめにするようなお客さまほど積極的に加入していただけるのですが、『このお客さまには入ってもらいたい』という、下取り車が『乗りっぱなしという使い方だな』と伝わるお客さまにはなかなか加入していただけないケースが目立ちます」とは現場のセールススタッフ。
そのようなメンテナンスパックに加入していないお客のなかには、法定点検時にエンジンオイル交換を勧めても「また今度でいいよ」といわれることも多いとのこと。
筆者も走行距離が伸び悩むのだが、メンテナンスパックに必ず入り半年おきにエンジンオイル交換している。その際、担当セールススタッフには「オイルはサラサラで黒く汚れることもないので交換することについて地球に申し訳ない」と冗談を言うことが多い。
メンテナンスパックに必ず入ろうと言っているわけではない。昔に比べればたしかにいまどきのエンジンは手間いらずで故障も少なくなっているが、乗りっぱなしというわけにもいかないことだけは肝に銘じていただきたい。