昔のような「アナログ感」を求める声も高まっている! 電子制御まみれの「現代のクルマ」でもドライバーが操っている感が強いクルマとは

この記事をまとめると

■現代のクルマはあらゆる面で電子制御化が進み走りの性能を向上している

■同時に昔のような「アナログ的要素」を求める声も聞かれるようになった

■筆者が思う「操っている感」の強い現代のクルマを挙げてこの声について考察している

AE86でさえ電子制御と無縁ではなかった

 自動車業界100年に一度の大変革期、CASE革命などと言われて久しい。ゼロエミッションや自動運転といった新テクノロジーの進化は凄まじく、クルマの電動化・電脳化はますます加速している。

 そうした流れは、ピュアに走りを楽しむスポーツカーの世界にも広がっている。

 伝統あるブランドから生まれるハイパフォーマンスモデルの多くは、すでに通常の人間ではコントロールできないほどのパワーを有しているのはご存じのとおりで、トラクションコントロールやスタビリティコントロールなどの電子制御なくしては安心して走らせることすら難しいというのは、多くのファンが理解していることだろう。

 また、先日スバルが先進運転支援システム「アイサイト」をマニュアルトランスミッションに対応させるという発表をしたが、FRモデル「BRZ」をベースにプロトタイプを仕上げていた。ポピュラーなスポーツカーであっても、先進安全装備は必須というのが時代の要請といえる。

 クルマのデジタル化は確実に進んでいる。そんな時代において「アナログ的な走り味」を求める声も聞こえてくる。はたして、「横滑り防止装置」が義務化されている現在のモデルにおいて、プリミティブな走りを感じることは可能なのだろうか。

 ところで、電子制御のまったくない「アナログ的な走り」には、どのようなイメージを持っているだろうか。

 たとえばAE86のような1980年代のクルマにはABSもトラクションコントロールもないから電子制御はない! と思うかもしれないが、スタンダードの4A−G型エンジンはインジェクション仕様であり、つまりECUによってエンジンは制御されている。AE86であっても完全にアナログではないのだ。

 電子制御が皆無な国産スポーツモデルとなると、1969年に誕生したスカイラインGT-Rあたりまで遡る必要がありそうだ。

 誤解を恐れずにいえば、現在の自動車に慣れたユーザーが完全にアナログ制御されているクルマを操るというのはストレスフルに違いない。

 プロのレーシングドライバーであっても、ブレーキング時のタイヤロックを防ぐABSを不要という人はほとんどおらず、電子制御によってトラクション(駆動力)を最適化するさまざまな機能が有効なのも多くのユーザーは認めているところだろう。アナログのクルマを運転するというのは、そうした電子制御がカバーしてくれていた領域を自分のセンサーで感じ、テクニックで対応する必要がある。

 1970年代の、プアなタイヤであればアマチュアドライバーでもクルマが限界を越えようとしている領域で対応できたかもしれないが、現在のシャシーやタイヤ性能を考えると、グリップ限界でのコントロールは非常に難しい。はっきりいって我々アマチュアドライバーが電子制御に頼らず、ギリギリの性能を引き出すというのは不可能に近い。

 そうであれば、2020年代の「アナログ的な走り味」というのは、電子制御による介入が気にならず、あたかも「ドライバーがすべてをコントロールしている」ような気にさせてくれるクルマといえるのではないだろうか。

インプレッサはドライバーが操っている感覚が強いクルマ

 そういう視点から、多くのユーザーが狙える予算感という条件も満たすクルマを考えてみると、スバル・インプレッサが思い浮かぶ。筆者は、現行インプレッサについては公道で乗ったことはなく、クローズドコースでしか運転したことはないが、いい意味で緊張することなくサーキットでアクセル全開にできるホットハッチという印象が強い。シャシー性能がパワーを余裕で上まわっていると感じた記憶がある。

 結果として、トラクションコントロールなどの電子制御が介入するシチュエーションは少なく、シャシーが安定志向なのでスタビリティコントロールの作動が気になることもなかった。実際には、無理なステアリング操作をしたときなどはスタビリティコントロールがカバーしてくれているのだろうが、その介入がネガティブに感じることがないといったところだろう。

 同じようなカテゴリーのクルマであっても、メーカーによっては早めに電子制御を介入させてくるケースもある。むしろ、積極的にスタビリティコントロールを作動させているほうが、ユーザーによっては安心感を覚える部分もあるから、そうした味付けが悪いという話ではない。

 国産スポーツカーでいえば、マツダ・ロードスターも電子制御をナチュラルなドライブフィールに活用している。

 ロードスターに限った機能ではないが、マツダ独自の「キネマティック・ポスチャー・コントロール(KPC)」は、その自然なスポーツドライビングを生み出しているキーデバイスだ。

 メカニズムの詳細については割愛させていただくが、Gが強めにかかるようなコーナリングの際にリヤの内輪側をわずかに制動することで、ロールを抑制しながら車体を引き下げて姿勢を安定させるという機能。モータージャーナリストの多くはKPCによる走りの違いは明確と評しているようだが、少なくとも筆者が公道走行で体感した範囲でいえば、KPCが作動しているかどうかを感じ取ることはできず、常にロードスターらしいナチュラルなハンドリングを楽しむことができた。

 電子制御をアナログ的なフィーリングになるよう作り込んだ好例といえるだろう。

 あらためて重要なのは「アナログ的フィーリング」であって、電子制御が皆無のプリミティブなメカニズムが楽しいというわけではないことだ。

 筆者の車歴でいえば、もっともアナログ的なメカニズムだったのは1990年代に乗っていたダイハツの軽トラック「ミゼットII」。エンジンはキャブとデスビによる非・電子制御仕様。パワステもなく、ブレーキも四輪ドラムで、空荷では頻繁にタイヤロックするような乗りものだった。

 1990年代の軽自動車としても、特別に洗練されていないといえるほどで、たしかにアナログ的な味わいはあったが、それがドライビングの楽しさに繋がっていたかといえば疑問もある。電子制御を使ってでも、アクセルやブレーキのコントロールがしやすく、すべての操作に車両がリニアに反応してくれたほうがスポーツドライビングでの満足度は高いのではないだろうか。

 機械的にアナログ(非・電子制御)であることよりも、どれだけナチュラルに感じられるよう作り込んでいるかが、2020年代における「アナログ的な走り味」を求める基準としては重要になってくるだろう。