後席の座り心地ではフィットを圧倒

 フィットのマイナーチェンジと同時に、フィットのセダン版、グレイスも、ほぼ同様の改良を(フィットの試乗記参照)受けたマイチェンモデルが登場した。

 エクステリアのリフレッシュでより落ち着いたデザインになり、目に触れる部分でフィット ハイブリッドと同じなのは前席(表皮は別)とセレクターレバーまわり、スピードメーター左右のカラー液晶ディスプレーぐらいというインテリアもより上質感あるものになっている。

 ちなみにグレイスはフィットにただトランクを付けただけのクルマではない。ソフトパッドを多用したインパネはフィットより低められ、前席ヒップポイントは10mm低く、かつ25mm後ろに。後席も着座位置をグーンと後ろに下げ、ヒップポイントを20mm低くセット。つまり前後席ともにミニバン的にアップライトな着座姿勢となるフィットに対して、より低く、後ろ寄りに座るわけだ。その理由はセダンらしい落ち着きと広々感を得るためにほかならない。

 結果、身長172cmのボクのドライビングポジションを基準とした後席ひざ回り空間はフィット+20mmの275mmに達し、何と2クラス上のアコード同等! 足もとはゆったり足が組めるほど広大だ。頭上方向は全高の低さぶん狭まるものの、それでもボクの頭上には95mmのスペースがあるから窮屈さなど感じない。

 しかも後席はダイブダウンやチップアップアレンジ前提ゆえに小ぶりで薄めのクッションとなり、ホールド性に欠ける平板な掛け心地のフィットと異なり、サイズ、クッションの厚みともにたっぷり。ホールド性にも優れ、掛け心地は別物と言えるほどいい。シートバックが高く、ボクの身長、座高ならヘッドレストを引き上げずに済むところもうれしい。

 クラス唯一の後席用エアコン吹き出し口は、暑い季節のドライブをより快適にしてくれるアイテムだ(ハイブリッドは電動コンプレッサータイプだから、アイドリングストップ時でも冷風が途切れない/フィット ハイブリッドも同じ)。

 トランクの実用面も優れる。独立したトランクの容量はフィットの314Lに対して圧倒の430L(床下4L含む/FF)。具体的にはLサイズのスーツケース3個、ゴルフバッグ3セットが積めるのだから積載力はコンパクトなボディーサイズから想像できないレベルにある。

軽快感のあるフィットに対してグレイスは落ち着いた大人の走り

 操縦性は以前からコンパクトセダンとして、フィットとは別の方向性に仕上げられている。フィットはキビキビ感、ステアリングを切ればスッとインを向く軽快感を最優先している。一方、グレイスはセダンらしい穏やかさと安定感を重視。首都高のカーブでペースを上げてもステアリングは応答遅れなく、誰もが安心して運転を楽しめる自然で落ち着き払ったフットワーク、挙動を見せるのがグレイスらしさ。

 微差とはいえ、独立したトランクの有無によりフロントヘビー気味のフィット ハイブリッドほうが、カーブを勢いよく曲がったときに前輪が外側に膨らみやすいのも事実。

 フィット ハイブリッドと同じカーブを同じスピードで曲がったときの乗員の揺すられ感、ロール感が少ないのも特徴で、これはヒップポイント/視線の低さによるものだろう。

 もちろん、ボディーの肉厚アップ、遮音・吸音材の追加などによる静粛性向上、最新のホンダセンシング採用などの進化はフィット同様。セダンとしての快適性、上質な乗り味を一段と高めたマイチェンモデルである。

 グレイスはフィットにくらべ地味に映るかもしれないが、乗るとなかなか。フィットより優れた部分もあったりするから、希少かつお値打ちなコンパクトセダンと言っていい。

【画像ギャラリー】