エンジンフィールだけがクルマの楽しさを決めるわけではない

「ダウンサイジングターボはクルマをつまらなくする」という見方がある。ロジカルに効率やパッケージングを考えると、気筒数や排気量を減らしたダウンサイジングターボエンジンは合理的といえる。しかし、とくに走り味を重視するような製品企画においてはフラットトルクなダウンサイジングターボを否定する向きも少なくない。高効率であることがエモーションであるとは限らない、いやむしろ無駄があってこそ「エモい」という見方さえある。

 それはユーザーレベルでの趣味の話にとどまらない。たとえば、レクサスのフラッグシップを見ると、セダンのLSでは非ハイブリッドのパワーユニットに3.5リッターV6のダウンサイジングターボを選んでいるのに対して、クーペのLCには5.0リッターV8エンジンを“あえて”チョイスしているのは、大排気量NAエンジンが持つ独特のエモーショナルを商品性に盛り込むという意思が強く込められているはずだ。つまり、アクセル操作に対してリニアに反応するエンジン、回転上昇に伴ってモリモリとトルクを感じ、高回転域では伸びやかなパワー感を味わえることがスポーティであり、そのためには大排気量のNAエンジンが欠かせないという思想がバックボーンになっている。

 しかし、過去も現在もターボエンジンのスポーツカーは存在しているし、トルクフルなターボエンジンだからこそ表現できたスポーツドライビングは、それはそれで魅力のあるものだ。たとえば、ランサーエボリューションが積み重ねてきたスポーツ性というのは、ターボエンジンだからこそ可能になった味だった、ともいえるだろう。このように、太いトルクがドライビングプレジャーを生み出すという考え方が、電気駆動によるスポーツカーというコンセプトが受け入れられる土壌になっているという風に見ることもできる。もちろん、ディーゼルエンジンのスポーツカーだって成立する。ダウンサイジングターボが目指す味付けは異なるという意見もあるだろうが、ターボエンジンだからクルマがつまらなくなる、と単純化することはできない。

 そして、大排気量のNAエンジンを高回転まで回すことがクルマの楽しさという価値観が不変であり、絶対であるのかといえば、はなはだ疑問だ。そもそも、クルマのおもしろさ=スポーティ感、という見方自体が普遍的なものとはいえない。ゆっくりと走っているときでも一体感を味わえることが楽しいと感じる人もいるだろうし、省燃費運転そのものが楽しいというドライバーもいるだろう。

 ダウンサイジングターボに限らず、パワートレインだけでクルマがつまらなくなる、とは言い切れない。もちろん、個々人の趣味でいえば、マルチシリンダーエンジンであることが楽しいクルマの絶対条件という人もいるだろうが……。