クルマから自宅へ給電できる「V2H」はまだ早い? いま導入するメリットはあるのか

PHVやPHEVはクルマに蓄えた電気を家で使えるシステムを備える

 世界的な電動車への流れのなかで、PHV、PHEVの注目度が高まっている。HVに比べ電気だけで走れるEV走行距離が長く(トヨタRAV4 PHVでカタログ値95km、実質65〜70km)、EVと比較すれば、主に発電を担当するガソリンエンジンを積んでいるため、電欠の心配なし。航続距離の長さも大きな魅力となっている。

 そんなPHV、PHEVのもうひとつの大きなメリットが、給電に対応していること。つまり、災害時やアウトドアでクルマからV2H(Vehicle to Home)という、クルマに蓄えた電気を家庭で使うことができるシステムをPHV、PHEVは備えているのである。

 日本は地震、災害大国であり、最悪の場合は数日間停電することもありうる。が、まずは車内のAC100V/1500Wコンセントによって車内外で家電品が使える点に注目である。MAX1500Wといえば500Wの炊飯器、500Wのコーヒーメーカー、30Wの扇風機などを同時に使うことができるのだ(HVでも2モーターであればAC100V/1500Wコンセントを用意している車種も多い)。トヨタのアルファードクラスにもなれば、コンセントは5個または3個用意され、家電品の同時使用も可能になる(通常は1〜2個)。

 さらにPHV、PHEVのV2H機能、機器を利用すれば、駐車場に止めてあるクルマが発電機となり、家に給電することが可能だ。国産車でいち早くPHVをリリースしたプリウスPHVの例では、非常時給電システムとして、満充電、ガソリン満タンの状態時に外部に供給できる電力量は約40kWh=約40000Wh。一般家庭の1日の使用電力量が10kWhだから、最大約4日分の電力を供給することができる計算となり、頼りがいがある。ちなみに、災害時にも大活躍するスマホの充電であれば、3500〜4000回の充電ができる計算になる。

V2H機器は軽自動車やコンパクトカー1台分もの費用がかかる!

 当然、搭載バッテリーが大きければV2Hによる給電能力も高まる。三菱アウトランダーPHEVなら、V2H機器を介しての給電能力は、満充電の状態でバッテリーのみを使うと一般家庭の最大約1日分。エンジンによる発電を組み合わせれば、ガソリン満タンでなんと一般家庭の最大約10日分!! の電気を供給できることになる。平時のような電気の使い方はできないものの、最低限の明かりや扇風機、炊飯器などが使用できることで、大げさに言えば命をつなぐことができるというわけだ。

 V2H対応可能車種は、トヨタ・プリウスPHV、RAV4 PHV、日産リーフ、e-NV200、三菱i-MiEV、アウトランダーPHEVなどのプラグインハイブリッド、ピュアEVだが、じつはV2H機器はまだまだ高価。工事費を含めれば、太陽光発電なしの場合、軽自動車やコンパクトカー1台分(100万円〜)もの費用が掛かる。

 公共施設などでの導入はともかく、一般家庭で設置するにはかなりハードルが高いのだ。というか、はじめからそうした設備のある先進的な一軒家でも買わない限り、現実的ではない。実際、トヨタホームの「V2Hスタンド」という機器は87万8000円(税抜き)で、しかも工事費別なのである。

 もっとも、すでに太陽光発電を設置済みで、発電した電気を使っている場合は、太陽光発電、クルマからの給電、電力会社からの電力が使え、さらにPHVやEVの200V充電の時間が約半分になり、深夜電力を使えばクルマの充電にかかわる電気料金そのものが安くなり、自治体によってV2H機器に補助金が出る……といった条件がそろえば、災害時の給電機能もあって長い目で見ればコストより”安心”が上まわるメリットも出てくるかもしれない。

 ただし、そんな大げさな機器を使わずとも家のなかに給電することはできる。たとえばプリウスPHVを例に挙げれば、付属のヴィーグルパワーコネクターを使うことで、コネクターが100Vの外部給電用コンセントとなり、クルマから長い電源コードを引き回す必要はあるものの、1500Wまでの電力を家のなかでも使うことが可能。主に発電を担うエンジンを搭載するPHV、PHEVなら、ガソリンがなくなるまで、十分とは言えないまでも、給電できることになるわけだ。

 災害時、停電時にV2Hは大いなる安心をもたらしてくれるが、災害対策としての費用対効果は一般家庭では微妙すぎる。現在乗っているV2H に接続できるクルマを手放してしまえば、機器が無駄になってしまう可能性もあるわけで……。