「1番いいヤツもってきて」はちょっと待て! お金があっても「最上級グレード」がベストとは限らないクルマ4選

最上級グレードが最善の選択かはどうかは人それぞれ

 クルマには、エントリーグレードから最上級グレードまで、さまざまな仕様が用意されている。かつて、トヨタ・クラウンのロイヤルカスタマー(ずーっとクラウンに乗り続けている上顧客)が、新車が出る前に、まだ試乗もしていないのに「いちばんいいやつを持ってこい!!」と注文し、誰よりも早く納車してもらい、自慢気に新車に乗る……なんていう話も聞かれたが、果たして「いちばんいいやつ」が最善の選択かは、人それぞれだ。

1)トヨタ・アルファード

 例えば、いま絶賛人気のトヨタ・アルファード。トヨタ最上級ミニバンであり、政治家、VIPも好んで使う1台だが「いちばんいいやつ」を頼めば、グレードはSの386万4000円からあるラインアップの頂点に位置するHYBRIDエグゼクティブラウンジ(7人乗り)、759万9000円となる。この金額をポンと出せる、VIP専用車、社用車として使う人にとってはまったく問題なしだが、もし、ファミリーユースとして購入し、使うのであれば熟慮が必要だ。

 というのは、 エグゼクティブラウンジ(7人乗り)のVIP席、特等席となる豪華極まる2列目席はキャプテンシートであると同時に、大型シートであるため、ミニバンの室内の移動を可能にする2-3列目席スルーができない仕様となる(HYBRIDは1-2列目席スルーも不可)。ファミリーで使う際に便利な、ミニバンならではの車内移動の自由度がないことになる。

 また、グレード名のとおり、2列目席にエグゼクティブを乗せることを前提とした仕様のため、助手席に座る秘書がワンタッチでシートをスライドさせられる機能など、一般ユーザーがほとんど使わないであろう部分にも、お金を払うことになるのである。

 すべての2列目席に乗車し、乗り心地やリクライニング機構などをチェックした経験からすると、ベーシックなキャプテンシートのリラックスキャプテンシートのほうがシート振動も少なく(シートの重量、重心高による)、2-3列目席スルーが可能な標準状態、シートを中寄せしたロングスライドモードなど、乗り心地の良さ、便利さでは上まわると感じることもあるほどだ。せっかくのアルファードだから、高級感あふれる2列目席が欲しい場合でも、ファミリーユースであれば、550万7000円のG  Fパッケージのエグゼクティブパワーシートで十分すぎる、と思われる。もちろん、ビジネス、VIP送迎ユースであれば「いちばんいいやつを」で問題ありませんが……。

2)マツダCX-30

 いま、勢いに乗るマツダのCX-30なども、「いちばんいいやつを」はちょっと待て!! である。というのは、CX-30には、マツダ3とともに、マツダ最新、渾身の次世代パワーユニット、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンのいいとこ取りをしたスカイアクティブX搭載車が頂点グレードとして用意されているが、スカイアクティブXはまだ進化の余地があるパワーユニットであり、もし、「いちばんいいやつを持ってこい」で、スカイアクティブX 2.0 X Lパッケージ4WDを注文すると、価格は371万3600円と、マツダ自慢のスカイアクティブD=クリーンディーゼルエンジン仕様に対して約40万円、ガソリンエンジンのスカイアクティブGに対して約68万円も高価になる。

 それはともかく、スカイアクティブXに次世代エンジンならではの魅力を期待したとしても、燃費性能はガソリンエンジンとクリーンディーゼルエンジンの中間でしかなく、また、腰骨を立て、理想的な運転姿勢を、ふんわりと上半身を包み込むかけ心地、サポート性とともに実現した新シート(前席)も、レザーシートが標準となり、張りが強く、体重が軽いとその恩恵を得にくいところがある(体重65kgの筆者の場合)。

 よって、個人的には、今のマツダ車はCX-30に限らず、スムーズかつトルキーで、走りの質感まで上級になるスカイアクティブDのクロスシート仕様がベストと考える。であれば、XD PROACTIVEツーリングセレクションがベストチョイスではないだろうか。価格は スカイアクティブXのX PROACTIVEツーリングセレクションに対して約40万円安く手に入るのだ。さらにスカイアクティブXは基本的にハイオクガソリンを必要とする。ファミリーカーとしてはやはり軽油、レギュラーガソリンが維持費の面で嬉しいではないか。

もっとも扱いやすいのは最上級グレードではないことも

3)トヨタRAV4

 2019-2020年日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞のトヨタRAV4に目を向けると(PHVを除く)、ガソリン、ハイブリッド、2WD、4WDが選べるなかで、「いちばんいいやつを持ってこい」となると、HYBRID Gグレードになり、価格は402万9000円だ。

 たしかに2モーターハイブリッドならではのスムースで静かな走行性能、アウトドアや災害時に活躍してくれるAC100V/1500Wコンセントの用意といったメリットはあるものの、じつは、現行型RAV4がオールラウンド性能、悪路走破性を高めた、よりオフロード志向へと舵を切った新型と考えれば、もっとも魅力的なグレードとはいいにくい面がある。

 ズバリ、RAV4にもっとも相応しいグレードは、ガソリンエンジン、世界初のダイナミックトルクベクタリングコントロールを搭載したアドベンチャーグレードと考える。オンロード、オフロードともに操縦性、走破性はシリーズ最上であり、エンジンを高回転まで回したときの気持ち良さという、トヨタの実用エンジンとしては例外的な魅力さえ併せ持つ。

 個人的に決定的と思えるのは、RAV4にもっとも似合う、2トーンカラーがアドベンチャーグレードでしか選べないこと。RAV4はモノトーンだと、いきなり地味になるデザイン、スタイリングなのである。よって、走破性、オールラウンド性能を飛躍的に高めたRAV4をオフロードやアウトドアなどで楽しみ尽くすのであれば、選ぶべきは、最高額車のHYBRID Gより71万9000円も!! 安いアドベンチャーグレードとなる。その差額で何ができるか? と想いをめぐらすのも楽しいではないか。

 もっとも、RAV4で「いちばんいいやつを持ってこい」と言って、現時点で受注を中止しているPHVが手に入る日がくれば、反対しない、どころか、走破性、家庭への給電機能を含め、災害大国、地震大国の日本において、三菱アウトランダーPHEVと並び、最善の選択となることは確かだ。

4)トヨタ・スープラ

 最後に「いちばんいいやつを持ってこい」に熟慮が必要なクルマとして、ピュアスポーツカーのトヨタ・スープラを挙げたい。グレード構成はいたってシンプルで、2リッター直4ターボのエントリーグレードがSZで499万5000円(197馬力)。同じく4気筒となる中間グレードのSZ-Rが601万3000円(258馬力)、そして最上級グレードが、スープラの伝統でもある、今や希少な直6ユニットを積むRZの731万3000円(387馬力)となる。

 スポーツカーは6気筒じゃなきゃ……とこだわるなら別だが、意外にもスポーツカーをスポーツカーとして乗るなら、中間グレードのSZ-Rが、絶対動力性能を別にすれば、使い切りやすいパワー、ノーズの軽さが功を奏するハンドリングの軽快感と合わせ、山道を楽しむパフォーマンスのバランスとして優れていたりする。

 700万円オーバーのスポーツカーとなれば、輸入車のポルシェ・718ケイマン、718ボクスター、スープラの兄弟車であるオープンスポーツのBMW Z4の直4モデルにも十分、手が届くわけで……。