水素ステーションの充実は不可能! 開業が現実的にならない「条件」の厳しさとは

トヨタモビリティ東京がMIRAIの試乗体験を公開!

 トヨタモビリティ東京が、新型MIRAIの試乗体験を公開している。試乗車は、GグレードのA Packageで、車両重量は1920kgあり2トン近い重さになる。水素を満充填してのロングドライブに出た。

 都内から山梨県の山中湖方面へ、市街地から高速道路を通り、山間の屈曲路も走り、市街地では渋滞も経験したと書かれている。そして空調をずっと使いながらの試乗であった。燃費や走行距離に関するカタログ情報は、空調を使わずに測定しているので、一般的に実燃費は空調利用の負荷が加わる分悪化する傾向となる。

 全行程の走行距離は381.9kmで、高速道路が約300km、一般道が約80kmであったという。

 出発前のオンボードコンピュータ上での航続可能距離は空調を使って489kmと表示されていた。試乗後のオンボードコンピュータには、残り162km走行できると表示されていたとのことだ。実走行距離と、試乗後の走行可能距離を合算すると、543.9kmと計算でき、出発前の走行可能距離表示の489km以上に走れる可能性を示している。

 カタログ性能では、一充填走行距離は850kmだが、これは前にも述べたように空調を使わない走行モード上での数値である。空調を使わないと、50kmほど走行距離は伸びるらしく、この試乗後の試算でも50kmを加算すれば593.9kmと600km前後は実走行で距離を伸ばせそうだといえる。

 しかし現実的には、よほど季節のよい春や秋でなければ、空調を利用しないで済むことは少ないのではないか。また、オートエアコンディショナーであるため、設定温度でも異なるだろうし、また、自動調整であるがゆえに、気候がよくてもあえて切って使う意識はあまり働かないのではないか。

 いずれにしても、一回の水素充填で空調を使いながら走れるのは、約500kmと見ておくのがよさそうだ。

水素ステーションは開設までのハードルが高い!

 それというのも、水素充填スタンドが現在はまだ137か所の稼働でしかないと、トヨタモビリティ東京の記事で紹介されている。なおかつ、営業時間も制約があるはずで、場所によっては移動式であったり臨時であったりする拠点もあるはずだ。

 この原稿を執筆中の午前9時半の時点で、トヨタMIRAIのWEBサイト内にある営業中の水素スタンドは、144軒中51軒しか開いてない。そして来店前に電話で確認するようにとの注意書きもある。ゆとりをもって水素充填をしなければ、水素ガス欠となる。

 4年後の2025年度までに320か所の水素ステーションが整備される予定だが、それでも既存のガソリンスタンドの1/100だ。電気自動車(EV)用の急速充電器の約7700か所の4割程度でしかない。EVなら、その数に入らない自宅の普通充電で満充電にできる。

 なぜ水素充填ステーションの整備が進まないか、理由は簡単だ。一つの拠点に500平方メートル(約150坪)の土地が必要で、なおかつ上にビルを建てることはできない。万一、水素が漏れたことを想定すると、施設に天井があってはならないためだ。

 ことに人口の多い都市部で、150坪の土地を持つ人がビルを建てられず、一日に何台の燃料電池車(FCV)が訪れるかわからない状況で、水素充填ステーションを開こうとは考えないだろう。そもそも土地の価格が高い都市部では全く採算が合わない。

 なおかつ、水素充填ステーションの設置には数億円の費用が掛かるとされる。それに対し、EVの急速充電機なら500〜1000万円で設置可能だ。水素充填ステーションの整備には、その数十倍の投資が必要なのである。

 FCVの乗用車が普及できないのは、クルマとしての性能や、一充填での走行距離の問題ではなく、水素充填ステーションの整備がほぼ不可能だからだ。