人気すぎる「N-BOX」に苦しむホンダ! コロナ禍の「プチ贅沢」さえも吸収するN-BOXの異質さ

N-BOXは他のNシリーズよりもリセールバリューが高い

 2020事業年度締め(2020年4月から2021年3月)での年間販売台数では、ヤリス(ヤリスクロス含む)に、“日本一売れている乗用車”の地位を譲ってしまったホンダN-BOXであるが、全軽自協(全国軽自動車協会連合会)の統計によると、軽自動車のみでの販売ランキングでは年間販売台数でのトップを死守している。

 2020事業年度における、ブランド別軽自動車販売シェアをみると、ダイハツ31.3%、スズキ30.7%そして、ホンダが18.7%となっている。多少数値は変わるものの、2019、2018、2017、2016事業年度ともに、この3社のシェアは大きく変動することはなく、N-BOXがヒットしていても、スズキとダイハツのブランド別でのトップ争いにホンダは絡むことはできていない。

 つまり、ホンダの軽自動車販売は、N-BOXのインパクトが大きすぎるのである。2020事業年度締め年間販売台数でみると、ホンダ全体での軽自動車販売台数は32万9430台、そのうちN-BOXが19万7900台となり、ホンダの軽自動車販売全体に占めるN-BOXの割合は、約60%となっている。以下N-ONEが1万2990台(約3.9%)、N-WGNが6万1421台(約18.6%)、N-VANは3万2125台(約9.7%)となっている。

 軽自動車の世界では、現金一括払いならば届け出済み未使用中古軽自動車を買うのが抜群に買い得感は高く(ナンバー取得後、半年ほど寝かしてから展示されるので)、新車として軽自動車を購入するならば、残価設定ローンを利用するのがメリットは大きいとされている。それは、軽自動車は10年落ちぐらいの低年式でもしっかり価値が残るほど、根強い人気があるのでリセールバリューがよく、それが残価設定ローンでの残価率を好条件なものにしているからなのである。

 ウエブサイト上のシミュレーション(いずれも60回払い)をもとに、N-BOXの簡易的に算出した暫定残価率では約35%、以下N-WGNが約35%、N-ONEが約30%となり、暫定残価率では3車に大差はない。つまり、N-BOXだけ特別買い得な購入条件というわけでもないのだが、N-BOXが圧倒的に人気が高いということになるだろう。

 ただし、ある販売事情通は、「N-BOXは圧倒的に人気が高いので、残価設定ローンでの残価率以上に実際のリセールバリューが高くなっているのです」と話してくれた。大手中古車検索サイトで、同じ2015年式となる、N-BOXとN-WGNについて掲載されている車両のなかからサンプルを抽出し、中古車販売価格が新車時の販売価格のどれぐらいになっているのかを試算すると、N-BOXが約70%ほどなのに対し、N-WGNは約60%弱という結果となった。

ホンダ登録車の最大のライバルはN-BOX

 つまり、残価率では大きな差はないのだが、実際の中古車販売価格では、あくまで試算したところでは、N-BOXのほうが値落ちは少ないということになる。そのため完済前に下取り査定に出すと大きな差がつく可能性が高くなるのである。つまり、残価設定ローン完済前に下取り(あるいは買い取り)に出し、下取り査定額(あるいは買い取りう査定額)で残債整理すれば、ケースによっては“お釣り”が残る可能性がより高いのがN-BOXなのである。

 一度N-BOXに乗れば、そのあたりの“旨味”を知ることになるので、短期間(最長5年ほど)で新車に乗り継ぐひとは、N-BOXからN-BOXへと乗り継ぐパターンがかなり多いというのは、販売現場でよく聞く話であり、これは軽自動車では圧倒的な台数差でトップを維持するN-BOXの原動力となっている。

 N-ONEやN-WGNの売れ行きについては、N-WGNは2020事業年度における月販平均台数は月販目標割れしているものの、N-ONEは新型となり初めてフルカウントとなった2020年12月から2021年3月の間での月販平均台数は月販目標をオーバーしている。N-WGNも極端に月販目標を割り込んでいるわけでもないので、外野が「N-BOXばかり売れて大変そうだ」思っているほどには、軽自動車だけに限れば販売現場も思っていないようにも見える。もともと、N-BOXがジャンジャン売れればそれでいという印象も強く受ける。

 しかし、N-BOXがホンダの登録車を喰ってしまっていることについては、販売現場は頭を抱えているようである。ホンダ登録車の最大のライバルはN-BOXなのである。

 2020年2月に発売となったフィットも思ったような販売実績を残していないのも、ヤリスやノートなどのライバルと言うよりは、N-BOXの存在が大きいと言えるだろう。ステップワゴン、フリード、ヴェゼルあたりからのダウンサイズニーズを、N-BOXが取り込んでしまうとも聞いたことがあるので、ホンダのラインアップ内において、N-BOXはかなり突出したモデルとなっているのは間違いない。

 ただ、現状のコロナ禍では、“プチ贅沢”という表現もあるほど、行動自粛などが続くなかで、できる範囲でちょっとした贅沢をしたいという消費行動があり、新車販売でもより上級車、より上級グレードへ購入車種が集中する傾向もあるのだが、ホンダではN-BOX内でグレードアップやオプションを奢ったりすることで“プチ贅沢”が終わってしまうと、冗談半分で聞いたことがあるが、まったくの絵空事でもない様子が伝わってくる。

「他メーカーに流れてしまうよりは」と、N-BOXの販売に熱心になってしまうのもわかるが、お客ごとにしっかり売りわけることができないと、いつまでも“N-BOX頼み”が続くことになり、台数は売れるのだが、アフターメンテナンスをディーラー以外の業者に持っていかれることも多いので、ディーラーにとっては利益がなかなか出ないという体質がより定着してしまうことになってしまうだろう。

 支払総額で600万円もざらとなるアルファードを年間で10万台売ってしまうトヨタは、登録車のヤリス(ヤリスクロス含む)で、N-BOXから“日本一売れているクルマ”の地位を奪った。日本一の座を、ダイハツ・タントや、スズキ・スペーシアといった軽自動車ではなく、ヤリスという“登録車”で奪われてしまったホンダのショックは相当なものだったと思われる。