オプションが付けられないから納車が遅れる! 自動車産業に「大打撃」を与える「半導体不足」の理由

早い経済回復と火災が国内半導体の供給を狂わせた

 2021年に入ってから「半導体不足」というキーワードを見かけることが多い。とくに自動車産業においては半導体不足の影響は深刻で、各社は生産調整を余儀なくされている。古くから「半導体(IC)は産業の米」と言われてきたが、まさに米不足といった様相を呈しているのだ。

 なぜ、半導体不足になってしまったのだろうか。大きくは新型コロナウイルスの影響といえるが、それだけではない。スマートフォンやパソコンだけでなく、クルマや家電の電子制御まわりに欠かせない半導体の需要はずっと右肩上がりに増えているのが基本だ。

 とはいえ、2019年あたりから世界的に半導体需要は落ち着いていた。そこに新型コロナウイルスの流行もあって、世界経済は停滞した。つまり半導体の需要も減ると見られていたのだ。そうなると自動車メーカーだけでなく、多くの企業が半導体の発注を控えるようになる。当然、半導体メーカー(メーカーといっても、複数の異なる企業の集合体となっているイメージだ)は生産量が減るわけだから設備投資を控えるようになる。

 ところが、世界経済は新型コロナウイルスの流行下において予想以上の回復をみせた。日本においても密を避ける移動手段としてマイカー需要が高まっている。つまり、自動車メーカー、半導体メーカーとも生産量を抑えていくつもりだったのに、予想外に需要が回復してしまったというのが2021年上半期の状況だ。

 いったん半導体の生産ペースがスピードダウンしてしまった中で、急に増やそうとしてもさまざまな無理が生じる。簡単にいえば、経済界が考えるより早いタイミングで需要が高まってきたことが、自動車業界における半導体不足の主たる理由といえる。また、そのほかの業界でいっても巣籠需要によりパソコンやタブレット、ゲーム機などの需要が高まった。これも半導体不足につながっている。

 さらに日本国内でいえば、3月にルネサスエレクトロニクスの工場で、4月には旭化成の半導体工場において火災が発生したことも国内の半導体供給にとっては大きく影響した。そのほかアメリカ政府の対中政策により中国からの半導体輸入が難しくなったのも、半導体不足という状況をまねている。これほどさまざまな要因が絡み合って半導体不足は起きている。半導体不足がいわれるようになってから半年以上経っても簡単に解決できないというのは致し方ないともいえる。

電装品の製造の遅れも新車販売に影響を及ぼしている

 ところで、半導体がなければ自動車は生産できないというが、果たして1台あたりどのくらいの半導体が使われているのだろうか。半導体のひとつひとつを数えることは難しいが、およそ1000個の半導体が使われているという。それはクルマのパーツのほとんどが電子化されたことが理由だ。

 1970年代にはエンジンの燃料を送るのはキャブレターの役割であり、点火はコイルとデスビが担っていた。しかし、今ではエンジンの燃料供給・点火時期コントロールはすべてコンピュータが行っている。さらに昔はメーターも機械式で、ワイヤーによって針が動くという仕組みだったが、いつしかステッピングモーターを使う指針式となり、いまでは液晶ディスプレイによりメーター情報を表示するようになっている。こうした進化により自動車が使う半導体の数はうなぎ登りに増えている。

 とくに、自動車が使う半導体については自動運転領域を除くと、最新型ではないレガシーなタイプが多いことが特徴だ。そのため、半導体としては低価格帯なことが多く、半導体メーカー側としても投資のインセンティブが湧かないという背景がある。それも半導体不足の状況につながっているといえる。

 そんな半導体不足は、自動車の生産以外の部分でも影響を与えている。わかりやすいところでいうとカーナビやドラレコ、ETCといった半導体を使っている電装品の供給量も減っている。新車販売時には、こうした電装品も装着した状態で納車するわけだが、それらの供給量が不足しているために、販売店ではカーナビやETCが入手できないために納車が遅れるという事態につながっている。

 国内での自動車販売が、需要の高まりに反して伸びきれていないのには、カーナビなど電装品の不足という問題もあるのだ。

 こうした半導体不足に苦労する新車販売ビジネスの停滞に対して、伸びているのが中古車市場だ。新車や電装品の生産が遅れているのであれば、すべてが揃っている高年式の中古車を買えばいいとユーザーの多くが考えたことにより、中古車の販売数は増えているし、相場は上昇している。風が吹けば桶屋が儲かるではないが、半導体不足は中古車市場の活況を生んでいるのであった。