EV普及で起こる「急速充電」渋滞! それでも「バッテリーパック交換式」が採用されないワケ

この記事をまとめると

■EVへの脱着式バッテリーパックの導入はまだ実用化されていない

■EVのバッテリーパックはプラットフォーム開発に関わるため共有化が難しい

■交換用バッテリーの充電時間や交換・保管場所などまだまだ問題が山積み

充電時間の短縮はできるがそれ以上に大きな問題が存在する

 電気自動車(EV)の充電時間を減らすため、脱着式によるバッテリーパックの交換をすれば短時間で満充電になるとの発想は、1990年代前半からあった。しかし、それから25年ほどたってなお、実用化、事業化の目途が立ったという話は、少なくとも4輪の自動車ではない。

 一方、2輪車では、国内でもメーカー4社の協力により、交換を前提としたバッテリーパックの規格統一の動きがある。

 なぜ、EVのバッテリー交換が実用化できないのか。大きくはふたつの理由がある。

 ひとつは、バッテリーパックはプラットフォームの設計を含め新車企画と深い関係があり、車種や車格の大小、あるいは商品性を含め、自動車メーカーの競争領域に関わるので共通化しにくいことがある。プラットフォームは、安全や操縦安定性などとも関り、生産に際しては工場の設備も関わるので、関係箇所すべてを共通化するのが難しい。

 現段階ではEVの高性能化に際し、バッテリーの温度管理が進み、空冷だけでなく液体冷却もはじまっているので、ロックを外せば簡単にバッテリーパックを降ろせるという構造ではなくなっている。水冷の場合、冷却配管などを外さなければならない。その脱着を、簡単に行えたとしても、脱着を繰り返すことで装着の精度が落ちることにより冷却性能に問題が生じる懸念もあるだろう。

 以上のように、商品性においても、技術的にも、バッテリーパック共通化には難しさがある。

交換バッテリーの最大の問題は作業・保管場所

 次に、バッテリー交換場所も、EVとなれば大きくて重いバッテリーパックになるので、何台分もの置き場所を確保できる広い敷地が必要だ。リフトで上げた車両から電気切れしたバッテリーパックを降ろし、満充電のバッテリーパックを倉庫から搬出して装填する作業場所も確保しなければならない。空いていれば1台ずつ順に作業すればいいが、燃料給油にみられるように、何台も希望者が集まると、やりくりに手間がかかるだろう。

※写真はリフトアップ作業のイメージ

 さらに、電気を使い切ったバッテリーパックを満充電にするには、8割程度までとしても急速充電と同じ時間を要する。それをいくつものバッテリーパックに行うとしたら、交換ステーションの電力使用量が一気に高まる。使った電気代だけでなく、一気に大量の電力を使う上での基本料金を含め高額になる。

 EVが普及すればするほど、事業を運営するうえでの経費が上がっていく可能性があり、はたして事業として成り立っていくだろうか。

 EVのよさは自宅で充電することを基本とし、それによって家庭で支払う程度の電気代で当面の利用に不自由しないことにある。出先でも普通充電ができれば、減った分をある程度補え、その電気代も高額にはならない。

 急速充電は、いわば臨時の充電方法であり、今後、充電口数が高速道路などを中心に増えるにしても、走行するEVすべてが急速充電を必要とするわけではない。

 バッテリー交換を前提とすれば、一か所に集中する可能性もあり、必ずしも合理的ではない。エンジン車の発想は、EVには通用しないのである。

 EVにはEVに最適な利用方法がある。それを活かさなければ、利点を享受できないし、EVはエンジン車と違う価値があるというところに、未来を拓くカギがある。