【試乗】いま圧倒的人気の300系ランドクルーザー4モデルに一気乗り! 驚くほど走りの特性が違う4台で本命も見えた

この記事をまとめると

■ランドクルーザーのZXとGRスポーツのそれぞれガソリンとディーゼル4台を比較試乗

■オフロード走破性を追求したためにオンロードでは乗り味がやや厳しい面も

■舗装路で試した結果での筆者のオススメはGRスポーツのガソリン仕様

悪路走破性のためにオンロードで犠牲になっている部分もある!

 世界的な人気と、確立された需要があるトヨタ・ランドクルーザーが14年振りにフルモデルチェンジを受けた。まだ発売されて間もない段階であるにもかかわらず、すでに受注が殺到しているという。自動車生産業に多大な影響を与えている半導体の不足やコロナ禍でのパーツ供給問題も重なり、現状はすでに納車時期が未定とのことだ。日本国内で一括生産され、世界中に輸出される人気モデルなだけに、国内向けにどれほど供給量が確保できるのか、発注したユーザーもやきもきしていることだろう。

 それほどの注目を集めている新型ランドクルーザー(以下ランクル)に試乗する機会を得た。残念ながらランクルが本領を発揮する悪路での試走は叶わず、一般道のみの試乗であったが、インプレッションをリポートしておこう。

 今回の試乗に供されたのは最上級「ZX」グレードのディーゼルターボエンジン搭載車とガソリンターボエンジン搭載車。そしてGRの名を冠された「GRスポーツ」の同じくガソリン&ディーゼルの4モデルだ。

 まずはZXのディーゼルモデルを走らせてみる。ディーゼルもガソリンも外観上の意匠に違いはない。迫力のあるフロントマスクは存在感があり、威圧感さえ感じるほどだ。車体に乗り込むにはステップボードに足をかけ、Aピラーに備え付けられているアシストグリップにつかまりながらよじ登る感覚だ。そのステップボードでさえ地表から30センチ以上の高さにある。

 運転席に着座すると前方視界に違和感を覚えた。ボンネットのエンジンフードの左右が盛り上がっていて、車体直前の様子が視認できない。乗り込む前にフロントのバンパー下あたりの様子をチェックしておかないと、安心して走り出せない。大型のトラックドライバーなら当たり前に行っている所作が求められる。もっともエンジンを始動させて発進準備が整えば、車体の四方に装備しているカメラを起動させて360度のパノラミックビューモニターにより車体周囲の状況を確認できる。しかし、夜間や雪道などカメラ機能が十分発揮できない場合は、やはり乗車前に周囲を確認する必要がある。

 ボンネットの膨らみは歩行者保護の観点からボンネットフードとエンジン間の空間を確保する必要にも起因しているが、フードセンター部分には窪みを持たせ前方視界を高める造形としていて、これは従来のランドクルーザー・プラドにも同様の形状が見られていた。

 エンジンを始動すると、ディーゼル特有のガラガラ音は発するものの、遮音がしっかりしていて室内は静かだ。ガレージを出てためにステアリングを大きく転舵すると、操舵フィールがスムースで剛性感が高いことに気付く。今回もフロントサスペンションはダブルウイッシュボーンが採用され、剛性感や接地性を高め、乗り心地や操縦安定性の良さを引継いでいるが、加えてパワーステアリングは油圧式に電動アクチュエーターを加えたいわば「ハイブリッド」方式となっていて、素早い油圧アシストの応答性と軽い操作感が手応えとして好印象を与えてくれているのだ。おそらく岩場や悪路などでのキックバックも電動制御で自在に押さえ込めているのだろう。

 ZXには20インチの大径ホイールと265/55R20という幅広いタイヤが4輪に装着されていて、その重さは1本あたり34kgもある。これほど大きなバネ下重量の車輪を感じさせないスムースな操舵フィールが完成されているのは驚きだった。

 一般道に出て高速道路なども走行してみたが、舗装の粗い路面や、高速道路の継ぎ目、段差などを通過するときも前輪は極めてジェントルにいなしていて快適性を高めている。

 しかし、その段差に後輪が乗り上げると、印象が一変する。独立懸架方式の前輪に対し、後輪はリジッドに左右輪が直結しているリジッドアクスル方式だ。左右輪で68kgになる車輪に加え、アクスル自体の重量もバネ下重量になる。トレーリングリンクやラテラルロッドで横方向の動きを規制していても、重さの反動を押さえ込むことができず、段差等を通過する度に車体後部がユラユラと揺れ、不快な振動も伝わってきた。

 ランクルとして相応しい悪路走破性を高い信頼性、耐久性の基に確立するためにリジッドアクスルの採用なしではあり得ないということで、舗装路での快適性をある程度犠牲にしてでもリジッドアクスルの採用が求められたということだ。

 高速道路では10速のAT(オートマティックトランスミッション)が素晴らしい走りをもたらす。細かくステップ比が刻まれ、変速時のトルク変動が少なく、スムースで快適だ。時速100km/hでの巡航時エンジン回転数は10速で1200回転強に抑えられ、静かでスムースなばかりでなく高速巡航燃費を高めてくれているはずだ。平坦路を巡航する場面では燃費計がリッター10km以上の燃費をコンスタントに表示していた。

大本命はGRスポーツのガソリンモデル!

 次にガソリン仕様のZXに乗り換える。外観や室内の意匠はほとんど差がなく、着座した雰囲気も変わりない。ただエンジン回転計の目盛りが違うことがディーゼルとの違いだ。

 エンジンを始動すると、こちらは静かで振動もすくなく、さすがD4ST式V6エンジンの高い完成度を感じさせる。アクセル操作に対しシャープに吹け上がり、スポーツカーのような回転フィールながら、振動、遮音性など高級車レベルの室内空間が演出されている。

 走り始めるとアクセルレスポンスに優れ、ターボ過給レスポンスがよく力強い。じつは最大トルクはディーゼルのほうが700N・mと大きく、トルクレンジも広いのでガソリンエンジンは不利かと案じたが、D4STの好特性で、むしろ勢いの良さを感じさせられるのだ。最高出力は415馬力とディーゼルの309馬力を圧倒しているので、速度レンジが高まればよりガソリン有利になるだろう。ただ燃費的には回転が高い分不利になり、高速道路でもリッター当たり8〜9kmといった巡航燃費。加えて指定燃料がハイオクなので燃料代は嵩んでくる。

 フロントサスペンションのスムースで粘りのある接地感、リアアクスルのバタツキ感は共通していて、これらは悪路を走ったときにその効能を明確に示してくれることだろう。

 GRスポーツはトヨタ自動車が長年参戦し結果を残し続けている世界一過酷なラリーと言われる「パリダカ(パリ・ダカールラリー)」での経験をフィードバックしパッケージングされている。

 外観的にZXと大きく異なっているのがフロントマスクだ。ZXではフロントバンパー下の処理を拡大し前面の迫力を演出しているが、そのためアプローチアングルが24度と小さくなってしまっていた。GRスポーツは標準バンパー形状にアンダーガード風処理で加飾していて、アプローチアングル32度を保っているのだ。

 またホイールは18インチ化され、タイヤサイズは265/65R18となっていて、一本当たり重量は31kgと軽減している。このバネ下の重量軽減効果は大きく、とくにリヤアクスルのバタツキに対して好作用しているようだ。

 まずガソリン仕様のGRスポーツに乗ると、遮音性能の高さと振動の少なさに加え、リヤアクスルの動きが抑制されていて気にならなくなった。これなら欧米のライバルと比較しても遜色ない乗り心地といえる。このガソリン仕様GRスポーツが新型ランクルのバリエーションの中では「真打ち登場!」と言える完成度で、ベストバイだと感じた。

 ディーゼル仕様のGRスポーツも試乗したが、こちらは何故かリヤのスプリングが固く感じられ、その分スポーティではあるものの、高級車としてのテイストではなかった。

 今後、さまざまなシーンでライバルと目されるランドローバー・ディフェンダーやジープ・ラングラー、メルセデス・ベンツGクラスなどと走り比べる機会が訪れることを願う。