コスト重視の軽自動車なのにナゼ? グレードによって顔を変えるワケ

この記事をまとめると

■軽スーパーハイトワゴンには標準ボディとエアロパーツを装着したタイプの2種類が用意される

■一番の理由は軽自動車が薄利多売の商品であること

■外観をシンプルに仕上げると商用車のように見えてしまうことも理由のひとつ

標準ボディとエアロパーツを装着したタイプの2種類はすべての車種に設定がある

 2021年に新車として売られたクルマのうち、軽自動車が37%を占めた。軽自動車にもさまざまなタイプがあり、今の売れ筋は、全高が1700mmを上まわるスライドドアを備えた車種だ。このスーパーハイトワゴンと呼ばれるタイプが、軽乗用車の50%以上に達する。

 スーパーハイトワゴンは、販売比率が高いだけに売れ行きも好調だ。主力車種はN-BOX、スペーシア、タント、ルークス、eKスペース&eKクロススペースとなり、販売ランキングの上位に入る車種も多い。

 これらのスーパーハイトワゴンに共通する特徴は、1つの車種に、フロントマスクなどの外観と内装が異なる複数のシリーズが用意されることだ。標準ボディと、エアロパーツを装着したタイプの2種類は、すべての車種に設定がある。

 とくにスペーシアは、標準ボディ、エアロパーツを装着するカスタム、さらに外観をSUV風にアレンジしたギアという、3つのシリーズを設定した。各シリーズのなかに、ノーマルエンジンとターボなど、複数のグレードが含まれる。

 なぜ背の高い軽自動車は、複数のボディを設定するのか。

一番の理由は軽自動車が薄利多売の商品であること

 一番の理由は、軽自動車が薄利多売の商品であることだ。N-BOXやスペーシアのようなスーパーハイトワゴンは、売れ筋の価格帯が150〜190万円に達する。ノーマルエンジンを搭載するコンパクトカーと同等だから、軽自動車としては割高に思えるが、スーパーハイトワゴンのシートアレンジや装備はさらに充実する。実際には軽自動車は割安なのだ。

 たとえば軽自動車のターボや4WDシステムは、コンパクトカーの約70%の価格で搭載されている。ノーマルエンジンを搭載するフィットホームの場合、4WDと2WDの差額は19万8000円だが、N-BOX・Lは13万3100円だ。N-BOXに搭載される4WDシステムの価格アップは、フィットの67%に収まる。N-BOXとフィットでは動力性能も異なるからメカニズムにも違いがあるが、30%以上の価格差は大きい。

 従って軽自動車とコンパクトカーで同じ価格のグレードがあれば、製造コストは軽自動車が割高になる。そのために軽自動車は、1台当たりの粗利が少なく、値引き額もコンパクトカーを下まわる。要は薄利多売の商品だ。そうなると大量に売る必要があり、1つの車種に複数のシリーズを用意した。

 また背の高い軽自動車の場合、外観をシンプルに仕上げると、商用車のように見えてしまう。そこでエアロパーツを装着して顔立ちも精悍に仕上げると、フロントマスクに厚みがあって背が高いこともあり、迫力が一気に強まる。セダンにエアロパーツを装着するよりも、背の高い軽自動車のほうが、変化の度合いは大きい。エアロパーツが映えることも、軽自動車で幅広く普及した理由だ。

 ちなみにエアロパーツを装着する背の高い軽自動車が普及を開始したのは、1997年に初代ワゴンRにRSが設定された頃だ。1998年になると、軽自動車の規格が刷新され、ほぼ一時期に各メーカーから合計16車種の新型軽自動車が登場した。このなかにはエアロパーツ装着車も多く含まれ、軽自動車の販売に弾みが付いて、今日の高人気に結び付いている。

 そして背の高い軽自動車にエアロ仕様が普及する基礎を築いたのは、ミニバンのエアロパーツ装着車であった。1995年に3代目日産ラルゴに設定されたハイウェイスターは、特別仕様車ながら好調に売られて注目を集めている。その後、ハイウェイスターは日産のエアロ仕様の総称になり、今では軽自動車のデイズやルークスからミニバンのセレナやエルグランドまで、さまざまな背の高い日産車に設定されている。

 ミニバンも基本的に国内向けの車種だから、国内市場で大量に売らねばならない。そこで標準ボディとエアロパーツを備えたシリーズを用意する。つまり複数のフロントマスクを用意する商品開発は、薄利多売のニーズに対応する解決策なわけだ。