バカ売れ王者はどこで間違えたのか? 昔は「売れまくった」のにいまや「どうした?」なクルマ4台

この記事をまとめると

■いつのまにか売れなくなってしまったクルマがある

■今回はプリウス、ワゴンR、スカイライン、シビックをピックアップ

■4台の歴史と事情を振り返る

かつて軽ナンバーワンだったワゴンR

 2021年度の軽自動車と登録車を合わせた新車販売ランキングでは、ホンダN-BOXが2019年以来の総合トップに返り咲いたことがニュースとなった。その販売台数は19万1534台。ちなみに、2位はご想像のとおりトヨタ・ヤリスで19万1414台と本当に僅差だった。

 行列に並ぶのが大好きといわれる日本人気質、売れているものに惹かれることもあって、こうしたランキングが注目を集めている部分もある。そして、振り返れば2010年代前半はトヨタ・プリウスが絶対王者といえる存在であった。

 トヨタのハイブリッド専用モデルとした初代プリウスが誕生したのは1997年。2003年に最初のモデルチェンジをしているが、プリウスが国民車のごとく売れまくったのは2009年に誕生した3代目モデルだ。

 1.8リッターエンジンと2モーターを組み合わせた省燃費なハイブリッドシステムは、当時としては驚異的な高効率で、JC08モード燃費は35.5km/Lを実現。デビュー当時にハイブリッドカーへの購入補助金があったことも追い風となって、暦年の販売台数でいうと2010年には31万5669台、2011年は25万2528台、2012年が31万7675台と、3ナンバーボディのモデルながら日本で一番売れていることが当たり前の状態になっていった。

 そんなプリウスも2021年度の販売台数は4万4935台で、登録車の販売ランキングで15位とかつての勢いはない。その理由として現行モデルのスタイリングを指摘する声もあるが、じつは現行型にフルモデルチェンジした翌年の2016年には24万8258台も売れていた。

 単純に現行モデルの魅力が足りないというよりは、電気自動車やプラグインハイブリッドでなければ先進的といえない時代において、単なるハイブリッドカー(プリウスにもプラグインハイブリッドの設定はあるが)では、かつてのようなブランド力が失われたと捉えるべきなのだろう。ある意味で、ハイブリッドカーが当たり前の存在となったいま、プリウスという名前は使命を終えたともいえるのだ。

 同様に、かつて軽自動車の販売ランキングでは1位が定位置だったのに、その勢いを失っているのがスズキ・ワゴンRだろう。

 とはいえ、直近(2021年度)の新車販売データを見ると7万1726台で軽自動車の中では6位と健闘している。もっとも、これはスライドドアの派生モデル「ワゴンRスマイル」を追加したことが貢献している数字だ。実際、ワゴンRスマイルを追加したタイミングで、ワゴンRは軽自動車の月間販売台数1位となったこともある(2021年10月)。

 ちなみに、ワゴンRが月販で首位となったのは2014年12月以来。逆にいえば、その頃は軽自動車といえばワゴンRといえる時代だった。ただし、ダイハツ・タントがスーパーハイトワゴンというカテゴリーを確立、その市場をホンダN-BOXが加速させていくなかで、ワゴンRがけん引してきた軽ハイトワゴン市場は全体として縮小していった。ワゴンRの魅力がなくなったというよりも、ユーザーの嗜好・マーケット構成が変わったゆえに「売れなくなった」と捉えるのが妥当だ。

 しかしながら、スライドドアのワゴンRスマイルを出したことで存在感を再び増しているのも事実。ワゴンRについては、ふたたび王者となる日が来るかもしれない。

スカイラインの最盛期は70年代だった

 一方、かつての勢いを取り戻すことがほぼ不可能と思えるのが日産スカイラインだ。最近のスカイラインをイメージすると、プレミアムでスポーティな、ニッチなユーザーに受けているセダンというイメージかもしれないが、かつてスカイラインは市場のど真ん中にいるスポーティセダンだった。

 その全盛期は1970年代で、1972年にフルモデルチェンジした4代目スカイライン(愛称はケンメリ)の生産台数は63.8万台、1977年に誕生した5代目スカイライン(同:ジャパン)は53.5万台の生産台数を誇る。

 この当時、スカイラインは国内専用モデルだったことを考えると、ケンメリとジャパンの時代のスカイラインは年平均13万台ペースで売れていた。それが、いまでは年間5000台にも届かないレベルで推移しているのだ。

 そんな風にスカイラインが売れなくなった原因についてさまざまな考察ができるが、本質的には売れなくなったのではなく、4代目スカイラインが売れすぎだのだ。

 スカイラインの父と呼ばれ、7代目モデルまで開発責任者を務めた櫻井眞一郎氏は「会社の方針で仕方なく”売れる平均的なクルマ”を作った、スカイラインの名前はつけたくなかった」と後述している。

 4代目がヒットしたことでスカイラインの開発自由度が上がり、逆に尖ったクルマとしてスカイラインは生まれ変わったといえる。それで販売台数が落ち込んでいったのは、まさしく櫻井氏の確信犯的行為であり、それがスカイラインのDNAとなり、正しく進化を続けたことで、現在の状況に落ち着いているといえる。

 2022年7月に50周年を迎える、ホンダの原点ともいえるモデルが「シビック」。現行11代目までの世界累計販売は2700万台を超えているほどのヒットモデルだ。アメリカでの累計販売は1200万台、直近6年間の平均で年33万台も売れている。今回の記事は「いつの間にか売れなくなったクルマ」なので、シビックはバリバリ売れている人気モデルといえる……。

 もっとも、シビックが売れているのは北米市場に限った話。日本ではタイプRがイメージリーダーでコアなファンに支持されている”カルトカー”という位置づけになっている。実際、日本向けにはタイプRのみがラインアップされていた時代もある。

 現行型についても、2021年7月でのフルモデルチェンジ時の月販目標は1000台にすぎない。まもなくハイブリッドも追加されるが、それで爆発的に売れるとも思えず、ネームバリューの割に販売実績は寂しいクルマの代表という不名誉なキャラクターからの脱却はそう簡単にいきそうもない