巨人トヨタでさえ他社の力を借りなければ厳しい! 思った以上にハードルの高いEV時代への適応

この記事をまとめると

■世界一の自動車メーカーであるトヨタは日本の5社と提携関係にある

■トヨタの業務提携は、商用車、乗用車、軽自動車のあらゆる分野に及んでいる

■トヨタといえども提携による利点を利用しなければEV化する市場への適応は難しい

No.1総合自動車メーカーのトヨタが他社協業するメリット

 世界一の自動車メーカーであるトヨタと提携関係にあるのは、ダイハツ、スバル、マツダ、スズキ、そして日野自動車だ。このうち、ダイハツと日野はトヨタの子会社である。

 トヨタは、ダイハツと日野を子会社とすることで、乗用車では軽自動車を含め総合自動車メーカーとして不足のない車種構成を実現できる。日野との関係では、商用のトラックやバスを組み入れることができる。歴史を振り返れば、トヨタも戦前にはトラックを製造してきた。そこから戦後に乗用車開発に取り組んだのである。日野を子会社とすることで、生産財である商用車を効率よく開発・製造し、適正価格で販売することができる。商用車だけを扱うほかの国内トラック・バス・メーカー3社と異なる経営効率の高さといえるのではないか。

 では、乗用車ですでに総合自動車メーカーであるトヨタにとって、スバルやマツダ、そしてダイハツを子会社としているうえでのスズキとの提携は、どのような利点が考えられるのだろうか。

 スバルもマツダも、100〜130万台という、トヨタの約6分の1以下の販売台数の自動車メーカーだ。したがって、大量販売による効率化は期待しにくい。そこで、より付加価値の高い車種を企画・開発し、販売していく傾向となる。

 スバルの特徴は、水平対向エンジンとAWDを基本とした独自の走行性能であり、加えてステレオカメラを使った運転支援機能アイサイトでも消費者から高い評価を得ている。

 マツダの特徴は、SKYACTIVという、これも独創のエンジン構想によって燃費と性能を両立した技術を背景にしている。加えて、魂動デザインと名付けた、世界的にも競合他社との違いを目で訴えかける造形や色遣いを特徴とし、消費者の注目を集めている。

 そのように、単に安さや品質の高さだけでなく、付加価値を備え、少量生産による新車の開発は、スバルやマツダが長けている。トヨタにも、年間販売台数で約70万台という少量生産のレクサスがあり、付加価値を特徴とするクルマ作りでは、スバルやマツダの取り組みが参考になるはずだ。

トヨタにないノウハウを提携によって補って未来を切り開く

 提携の実績として、スバルとはスポーツカーのGR86や、電気自動車(EV)bZ4Xの導入につながっている。マツダとは、商品企画と車種改良を結び付けた一括企画という手法で、付加価値のあるクルマを常に進化し続けることに役立っているのではないか。

 では、軽自動車で直接的な競合関係にあるスズキはどうなのだろう。現状では、まだ明確なトヨタの利点は見えにくい。しかし、今後の展開を考えると、効果が期待できるのではないか。それは、電動化だ。

 原価に厳しい軽自動車においては、数の確保が何より重要だ。モーターやリチウムイオンバッテリーという原価の高い部品を新たに開発し、これを軽自動車に適用するのは容易ではない。スズキが、エネルギー回生を行うエネチャージという技術を導入するに際して、5セルのリチウムイオンバッテリーの採用に大きな決断を必要としたとされている。

 一方、日産と三菱自は、新型軽乗用EVで、補助金を活用すれば200万円を切る車両価格を達成した。背景にあるのは、リーフで累計60万台を販売してきた実績を持つリチウムイオンバッテリー、ノートe-Powerの4輪駆動車用の後輪モーターの流用、また最新のアリアからも活用している部品があることだ。すでに実績があり、耐久・信頼性も確保され、そして大量な生産を積み上げてきたことによる原価低減があってはじめて、軽自動車として納得できるEV価格を実現したのだ。

 しかし、トヨタにはまだリチウムイオンバッテリーをEV用として大量に利用した実績はなく、bZ4Xで使うものは、600万円相当のEVの原価の域を出ないだろう。トヨタは、エスティマハイブリッドからE-FOURという後輪モーターによる4輪駆動を導入している、あるいはアクアはモーター走行領域を増やしたが、それらモーターを軽自動車用に流用できるか私にはわからない。ただし、モーターはエンジンと違ってしっかりした技術と寸法の検討がなされていれば、軽自動車から登録車を含めた幅広い転用は可能だ。制御系の半導体を含め、流用部品の調達ができなければ、軽自動車用の原価低減は難しいだろう。

 そこを突破するためには、ダイハツとスズキを併せた数の確保は重要であり、またインド市場で50%の占有率を持つスズキが、インドでの電動化を進めるのであれば、その販売台数も勘定に入れることができそうだ。

 高額なEVでさえ、ポルシェ・タイカンとアウディe-tronに共通性があるように、部品の流用と大量な数の確保という合わせ技で対処しなければ、EVへの道のりは遠いといえる。トヨタといえども、提携による利点を摸索しなければ、EV化する市場への適応が難しい時代といえるのではないか。