深刻な納期遅延でこれまでのセールス手法が通用しない! 新車販売現場はいま「昭和感」のある売り方が大切だった

この記事をまとめると

■いま新車の納期遅延が販売現場の混乱を招いている

■客足も減っているため、セールスマンは積極的にならざるを得ない

■現在の状況、顧客の特性から求められるクルマの売り方について解説する

待っていても「新車が欲しい」という人は現れない

 深刻な納期遅延で新車の販売現場が混乱しているのはもはや周知の事実。世の中で「新車を買ったがいつまで経っても納車されない」ということが広く知れ渡っている。以前は、納車が遅れているものの、受注ベースでは新車販売はそれほど悪影響を受けていないとも言えたのだが、最近は受注ベースでも悪影響が目立ってきている。

 こうなると、「新車が欲しい」というお客を待っていてもなかなか現れない。そこで、セールスマンの腕の見せどころとも言えるのだが、そもそも新車購入を検討していない得意客へ新車購入の販売促進を行うことになる。過去に販売した得意客のなかから、アプローチ次第では話に乗ってくれそうなお客をピックアップし、定期点検などで店舗を訪れた際に、「いまなら条件も魅力的ですよ」などと新車への乗り換えを勧めるのである。もちろん相手を見ての話となるが、時にはまだ新車と言える納車後1年ほどのクルマに乗っているお客へも“脈あり”と見たら積極的に売り込むこともある。買う側からすれば何やら理不尽にも思えるが、このような“無茶ぶり”の利く得意客をどれぐらい持っているかが、セールスマンのキャリアを左右するといってもいいだろう。

 もちろん、いやいや新車へ乗り換えさせたり、詐欺まがいに乗り換えを勧めるのはご法度。「●●さん(セールスマン)がいうんだったら……」と、“あうんの呼吸”で応じてもらえるのが大前提となっているのはいうまでもない。そもそも新車へ乗り換える気がなかったのだから、納車まで長期間待つとしても、それがトラブル因子になることも少ないのである。

 筆者が小学生のころは、まだ原則扱う製品のメーカーが決まっていた“街の電気屋さん”というのが多くあった(いまどきの新車ディーラーのようなもの)。筆者のところにも某メーカー系の電気屋さんが出入りしていた。しかもその電気屋さんは、「いまテレビが買い得ですよ」などと家にやってくるのだが、そのほとんどがモデルチェンジ前の末期モデルであった(いわゆる在庫処分)。父親もそれは承知していたようだが、電気屋さんが気に入っていたようでそこから筆者の見た感じでは“言われるがまま”買っていた。その電気屋さんは我が家にくるたびに、たとえば“電子レンジがない”とか、“テレビが古い”など状況を把握し、的確に売り込んできたのである。

 ある時、その電気屋さんが扱う製品のメーカーを変えたのだが、父親はそのままそこから買っていた。いまどきの、とくに若い世代のひとから見れば、“そんなのありえない”という“買い物スタイル”になるだろうが、「これなら、あそこの家に売れる」と売り込みに行くようなスタイル、つまり改良前の末期モデルでも自分の“顔で売る”というのが、かつては新車だけではなく日本のモノを売るスタイルの代表であったといってもいいだろう。

いま状況と顧客の特性に適したクルマの売り方とは?

 しかし、あるベテランセールスマンに聞くと、「新人だけでなく中堅あたりでも、たとえば初回車検前のクルマに乗っている得意客へ新車の乗り換えを勧めるようなことを、“無茶ぶり”として遠慮するセールスマンが多い」と話してくれた。

 消費者も買い物をする時には余計なコミュニケーションを不要と考えるようになってきた(オンラインで多くの買い物を済ませる人も目立っている)ので時代の流れとともに販売手法も変わってきたともいえるのだが、それでも“このセールスマンから買いたい”という新車購入を好む消費者が絶滅したわけでもない。いまのような非常時ではどこまで“顔で売る”ことができるお客を囲っているかでセールスマンの命運が分かれているといってもいいだろう。

 自分たち(セールスマン)の売りたいクルマ(グレードやボディカラー、装着オプションも含む)を自然体に勧め、お客自身が納得した上で購入してもらえるかどうかが、新車販売のプロたるセールスマンの腕の見せどころ(結果的に売りたい新車を買ってもらえそうにないなと判断すれば、お客の希望する新車を販売する柔軟性も兼ね備える)。そこで大切なのが、セールスマン自らが“新車販売のプロ”という驕りを見せないこと。プライドを持つことは大切だが、「私ならこのアクセサリーを装着します」とか、「実際私も装着していますよ」などと、“オレオレ”と自己主張すれば、そのお客と十分なコミュニケーションがとれていなければ、お客のほとんどはドン引きするだろう。

  

 セールスマンは新車販売において、そしてその後のアフターメンテナンスでもお客に気持ちよく新車を購入してもらい、使ってもらえるように黒子に徹するのが本流と考える。“新車販売のプロが目利きするから間違いない”という驕りは新車販売にはいらない。それにいまどきなら、「あなたが勧めるから装着したけどいらなかった」とトラブルを誘発する危険性もある。お客に「どんなオプションがお勧めなの」と聞かれても、「お客様の多くは……」と自分の経験則に基づいた説明に終始し、あくまで主役であるお客に判断してもらう。そして、お客は自己判断で選んだという満足感がありながら、セールスマンが売りたい新車に結局決まっていたというのがベストな新車販売の流れであり、無茶ぶりを無茶ぶりとは見せない売り方こそ(実際このように売れば結果的にある程度“無茶ぶり”であってもクレームにはなりにくい)プロたるセールスマンの腕の見せどころともいっていいだろう(つまり商談では一貫してお客を“立てる”売り方をすること)。