マイナーチェンジのたびに走りが進化するクルマ! なぜ最初から完全体で出さないのか?

この記事をまとめると

■クルマはマイナーチェンジを繰り返す

■生産効率化によって進化が可能となる

■進化の余地を残しているわけではない

生産効率化によって進化が可能となる

 自動車メーカーが商品として作るクルマというのは、意外にも常に進化している。「ランニングチェンジ」という専門用語もあるように、公式には発表されない改良はいつの間にか実施されていることがある。

 また、新車の開発チームというのはフルモデルチェンジをしたところで完全に解散するわけではなく、人事異動はありつつも、改良を担うチームは残っているものだ。そうしたチームによって実施されるのが、ランニングチェンジであり、また表に出てくる変更でいえばマイナーチェンジなどと呼ばれる商品改良だ。

 こうした進化の方向性は大きく2つに分けることができる。ひとつは開発エンジニアが最初から感じている課題で、もうひとつは市場の声やライバルをキャッチアップするといった外的要因によるものだ。

 走りを重視したモデルにおいて、ボディ剛性を上げることは商品性につながる。そのためには、構造用接着剤や溶接個所を増やせばいいことは、誰もがわかっている。

 しかし、そのまま実行すればコストも上がってしまい、価格アップにつながってしまう。量産車においてはコストを考え、限られた工程の中で可能な接着・溶接箇所を必要なだけ見極めることもエンジニアリングといえる。

 剛性や強度には構造材の形状も関係するが、これも量産性に影響される。走りの面からは複雑な形状が理想だとしても、安定して作れなければ、その設計は採用できない。生産性とのバランスから妥協することは量産車においては基本といえる。

 そうした課題を、時間が解決することがある。生産技術の進化によって理想的な製法や形状が可能となれば、マイナーチェンジなどで採用することが可能となる。

登場時に改良の余地を残しているわけではない

 生産性向上により工数を増やす余地が生まれたり、溶接ロボットの性能がアップしたりすれば、「スポット増し」と呼ばれる溶接個所を増やすという改良も可能となる。新車登場時には出来なかったことを、マイナーチェンジで取り入れているという背景には、こうした生産技術の進化もあったりするのだ。

 ちなみに、量産していく中で「この溶接は不要じゃね?」となれば、省くこともあり得る。自動車メーカーにとってオーバークオリティは正義ではなくカイゼンすべき点といえるからだ。ただし、そうして絞り出された余地は、裏を返せば前述したようにマイナーチェンジでの進化に使われることもあるのだから必要なカイゼンといえる。

 そもそも工程を増やしておけば最初からスポット増しくらいできるのでは? と思うかもしれないが、それはそれで難しい。

 なぜなら現在の生産現場では混流生産が主流となっているからだ。ひとつの生産ラインでさまざまなモデルを作る混流生産においては、特定の車種だけ工数を増やすというのは現実的ではない。

 仮に、組み立てラインが50工程で組まれていれば、どの車種においても50工程で作れるようにしておかないと基本的にはいけない。特定の車種だけ60工程にするというのはダメなのだ。

 多少のやり繰りはできるのだが、それでもひとつの工程を1分前後に設定して、同じスピードでラインを動かしているわけだから、全体として合わせる必要がある。

 結果として、生産現場におけるカイゼンと技術の進化がマイナーチェンジでの車両の進化につながるということになる。

 けっして自動車メーカーはマイナーチェンジでの進化を見込んで新車時に改良の余地を残しているわけではない。そのときそのときでベストを尽くしているが、生産技術の進化により生まれた余地を利用して、ハードウェアを進化させている面があることも理解すべきだ。