最下位に沈んでいるヤクルトが、ようやく元気を取り戻しつつあるようだ。先月22日、本拠地・神宮球場での阪神戦で、47年ぶりの連敗記録を14でストップ。同じく神宮で行われた次のカード、5位・中日との3連戦では今季初の同一カード3連勝も達成した。

 チームがそうした上り調子にある中、あらためて存在感を示しているのが5年目の主力投手〝ライアン〟小川泰弘である。先月30日、マツダスタジアムでの広島戦に先発し、6回4安打1失点(自責0)で今季5勝目(4敗)をマーク。これが小川本人にはもちろん、ヤクルトにとっても非常に大きな1勝となったのだ。

 小川は今季序盤の5月、左脇腹の肉離れで登録抹消。その故障が癒えて復帰した7月、抑えの秋吉亮が右肩筋肉の肉離れを起こしたため、急遽先発から外れ、代役として抑えに回される。これが、今季のヤクルトの低迷を象徴する〝悲劇〟につながった。

 小川はもともと立ち上がりが悪く、決して抑え向きの投手ではない。真中満監督としても苦肉の策の配置転換だったが、7月7日、神宮での広島戦で初めて9回に登板させたら案の定、物の見事に裏目に出た。

 8−3と5点リードし、セーブがつかない代わりに楽に投げられる場面だったにもかかわらず、サビエル・バティスタ、菊池涼介、新井貴浩に3本塁打を浴び、一挙6点を失って逆転負け。試合後、クラブハウスの前に押し寄せたファンが「真中やめろ!」「出てきて謝れ!」と罵声を浴びせる中、当の小川は「力を入れても捉えられた。ぼくに力がないんでしょう」と肩を落とした。

 小川以上に悔しがっていたのが捕手の中村悠平である。バティスタは初球、菊池はカウント1−0から、新井はカウント2−1から、すべて真っ直ぐのサインを出してスタンドに運ばれている。久しぶりに受けた小川の直球が「きている」と感じたからこその判断ミスだった。「打たれたのはぼくのリードが悪かったから。次は小川に抑えさせてやりたい」という中村のコメントには、正捕手ならではの責任感が感じられた。

 その2日後、球場もカードも同じ9回に、早くも小川にリベンジの機会が巡ってくる。

 3−2と1点リードしていた1死三塁の場面で、迎えた打者はまたしても新井。3−2のフルカウントになり、真っ直ぐでは勝負できないと判断した中村は、外角のカットボールのサインを出した。「ボール球で空振り三振を狙って、四球で歩かせたらごめんなさい」と考えた上での選択である。