「地方銀行は多すぎる」という批判にどう応えていくのか? (Y-STUDIO/GETTYIMAGES)

 地方の人口減少に加えて、コロナ禍の長期化で地域の金融機関を取り巻く経営環境が悪化している。中でも取引先企業の経営者の多くが高齢化して、後継ぎがいないことが深刻だ。融資さえしていれば良かった時代は終わり、金融機関は今、地域をどうやって支えていくのかという課題を突き付けられている。

 帝国データバンクが2021年に行った全国企業の後継者不在率動向調査によると、後継者がいない比率は61.5%。さらに後継者が見つからない、見つかっても引継ぎが順調に進まないなどの理由による後継者難倒産が22年上期(1〜6月)は254件と、半期ベースでは19年下期と並んで過去最多となるなど、後継者難が深刻な影響を及ぼしている。

元地銀マンが独立
企業の存続を図る

 後継者問題は先送りできない喫緊の課題だ。この中小零細企業の事業承継問題の解決に立ち上がったのが、地方銀行で15年ほど勤務経験のある吉川友氏ら3人の元地銀マンだ。吉川氏は「この数年、事業承継に参入するプレーヤーが増えているが、支援の対象となるのは規模の大きな企業が多く、小規模な企業は雑に扱われてきた。銀行は事業承継についての助言はしても、最終的なところまでは見届けない。しかも手数料が十分得られない事業承継案件はやりたがらない。ただ、その中で良い経営者が引継げば発展するだろうという企業をいくつも見てきた」と打ち明ける。

 吉川氏が21年1月に銀行を退職して事業承継問題を解決するベンチャー、SoFun(滋賀県近江八幡市)を設立した。同社の基本方針は、中小企業オーナーから全部の株式を買い取って経営を引継ぎ、原則、投資株式は永久保有するやり方だ。株式買い取りに必要な資金は、投資家や金融機関などから調達している。「チーム型経営」を目指し、SoFunの利益だけでなく、事業承継した会社の利益拡大を図り、資金を提供した投資家や金融機関に還元する。こうした事業承継が成功すれば、伝統ある地元企業が潤い、地域の活性化にもつながる。

 オーナーが築いてきた伝統やブランドは維持しながら業績の向上・拡大を目指すのが基本で、数年間株式を保有して業績が好転したら別の会社に売却するM&A業者などのやり方とは大きく異なる。

中小企業のM&A実施状況

出所:中小企業庁「中小M&A推進計画」
(注)「中小企業M&A仲介上場3社」とは、日本M&Aセンター、ストライク、 M&Aキャピタルパートナーズについて、集計したもの

 事業承継して経営者になりたい人材は、イベントなどを開催して募集する。これまで4回行って、500人ほど応募があったという。ここから面接などで絞り込み、現在は10人前後の後継経営者となる候補者を用意している。

 SoFunの手操圭介取締役は、同社が狙う事業承継について「地域経済の中心となっている中小零細企業は、株式取得に数千万円〜数億円を必要とするケースが多い。1人で事業承継し、数億円の借金をして株式を買い取る人はほとんどいない。一方、ファンドは金額が大きい方が儲かるので、規模が比較的大きな企業、内容が良い会社しか相手にしない。しかし、そんな会社は地域にはほとんど存在しない。

 個人が買えない規模だが、ファンドも相手にしない『地域経済の中心となる中小零細企業』が、われわれのターゲット。後継者がいないこうした会社は同業者に売られるか、廃業するしかない。そこにわれわれが発掘・目利き・育成した、資質・能力・想いにあふれた人材との出会いを生み出し、承継と成長を実現させたい」と力説する。