こんにちは、小川大介です。中学受験生の父母との面談でも、企業のマネージャー向け研修を行っている時でも、最近増えている相談があります。

「叱るのはどうしたらいいでしょうか」
「叱り方が分からないです」

 というご相談です。中には「叱ってもいいものでしょうか」と真顔で聞かれることもあります。

 怒るのはダメというのは分かるけれど、「叱る」と「怒る」の違いがよく分からないと困っている方も多いようです。

 「褒めて育てる」という考え方が広く浸透してきたためか、叱るということ自体への不安感を持ったり、気後れしてしまったりする人が増えているようです。世代が若くなるほどに、叱られ慣れていない人が増えているため、叱る側にとっては難しさも増していますね。

叱ることは必要です

 ただ先に結論を言うと、子どもであれ大人であれ、叱ることが必要な場面は必ずあります。親は子を時には叱らなければなりません。上司は時には部下を叱らなければなりません。

 その人が成長していくことに、自分が責任の一端を担う関係にあるなら、私たちは叱ることができなければなりません。

 褒めるばかりでは、人は育たないからです。

 そんなことはない、自分も自分のチームの部下も適切な承認を渡すだけで、自ら成長できている。成長するかどうかは自分の意思で決められるのだから、叱る必要など全く感じない。

 という方もいらっしゃるかもしれません。といいますか、人から叱られることなく成長していける人は実際にいます。

 たとえば、マズローの欲求5段階説でいうところの、5段階目「自己実現の欲求」に到達している人などがそうです。自己実現の欲求とは、「自分の持つ能力や可能性を最大限発揮し、具現化して自分がなりえるものにならなければならないという欲求」のことです。

叱られなくても伸びる人の秘密

 「マズローの欲求5段階説」は、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。アメリカの心理学者アブラハム・マズロー(Maslow ,A.H)が、人間の欲求を次の5段階に階層化してとらえた考え方です。

「マズローの欲求5段階説」写真を拡大

 人の欲求は低次元なところから順に満たされていき、最後は高次の自己実現を目指すようになるという心理学モデルです。学問的には賛否両論あるのですが、「衣食足りて礼節を知る」「人はパンのみに生くるにあらず」といった昔ながらの言葉とも重なるように、納得感を持って世間に受け入れられていると言ってよいでしょう。

 自分は社会から必要とされていて価値も認められているという思いがあり、自分自身の高みを目指そうとしている人は、自分で自分を鼓舞し律することができます。人から叱られるまでもなく、自分で動けるのです。こういう人には承認される、つまり「褒められる」ことだけで伸びていきます。