テスラ、スペースXのCEOでありソーラーパネル設置のソーラー・シティ、バッテリー製造のメガファクトリー、そしてオープンソースでAI構築を目指すオープンAI、脳に埋め込むデバイスを開発するニューラリンクなど、様々な事業を展開するイーロン・マスク氏。最も最近に開設した会社は2016年末の「ボーリングCO」というトンネル削岩会社だ。

 従来の3倍以上の速さでトンネルを実現できる、とする同社は、今年2月からスペースXの駐車場部分で試験的掘削を始め、7月にはテスト運用部分が完成した、とマスク氏自身がツイッターで発表した。

 マスク氏がトンネル構想を発表したのは「ロサンゼルス周辺の渋滞にうんざりしたから」だと語る。マスク氏の自宅はビバリーヒルズの隣で超高級住宅地として有名なベルエア地区にある。ここからスペースXに向かうには「世界最大の駐車場」とまで揶揄されるフリーウェイ405を通る必要がある。途中にロサンゼルス空港があるため、常に混雑しているフリーウェイだ。

 マスク氏は「渋滞により奪われる時間でどれだけのことが出来るか。この問題は早急に解決する必要がある」と常々語っていた。ボーリングCOではまず最初のトンネルを空港からウエスト・ロサンゼルス、そしてUCLAのあるウエストウッドまで開設させたい、という。ウエストウッドからベルエアまでは目と鼻の先だ。通常のドライブでは45分近くかかるが、トンネルを使えば5分、というのがマスク氏の主張。

 問題はこのトンネル内の走行方法だ。当初マスク氏はトンネル内に電気スレッドを設置し、車がこれに沿って自動的に動くというリニアモーター的な半自動運転を想定していた。ところがここに来て「ハイパーループの運用もあり」と意見を変えて来ている。

 元々マスク氏が発想したハイパーループは現在ハイパーループ・ワンとハイパーループ・テクノロジーの2社がしのぎを削るが、マスク氏がスペースX内にテストトンネルを提供するなどしているのはテクノロジー社の方。同社にはスペースX社員もオープンソースの形で多数参加している。このテクノロジー社による小型ハイパーループカプセルをトンネル内に配置することで、「コンテナとして車ごと乗り込める」と同時に物流、車のない人々の公共交通機関としても運用する、という考え方だ。

 以前から「自動運転の乗合バスのようなもの」が未来の交通機関として必要、と主張していたマスク氏だが、トンネルと合わせて超高速の新しい地下鉄網、というところまで発想が飛躍しているようだ。

 このトンネル構想についてはロサンゼルス市議会からも賛同の声を得ている他、今年6月にはシカゴのラーム・エマニュエル市長とも会見し、世界最大級のハブ空港であるシカゴのオヘア空港と市内を結ぶトンネルの実現に向けた取り組みを行う、と報道された。シカゴ側は今後従来の鉄道の整備かトンネルか、という選択を前提に市として協議するという。