モスル奪還に関連し、7月11日付の英フィナンシャル・タイムズ紙は、「イスラム国(IS)の脅威はジハーディストがイラクでの陣地を失うとともに移動する。モスル陥落はイラクとその支持連合に新しい危険をもたらす」との社説を掲載しています。社説の論旨は、次の通りです。

 モスル攻撃が始まって9か月、7月9日までに米国が支援する兵力がISの抵抗打破に成功し、イラク首相アバディがモスルを訪問し、勝利宣言をするに至った。ISはラッカでも包囲され、敗北は時間の問題である。

 物理的カリフ国は崩壊しているが、ISの危険を過小評価すべきではない。

 モスルは2014年、数百のIS兵士が数千のイラク軍を敗走させた後、ISの占領下にあり、ここのアル・ヌリ・モスクでバクダディがカリフ国を宣言した。

 イラクの諸派閥と外国支持者(クルド、トルコ支持のスンニ派、イラン支持のシーア派民兵、イラク政府軍)が失地回復のために団結し、数千の犠牲者を出しながら、厳しい戦いをした。共通の軍事目標を追求した。

 不幸にも、これらの勢力を結び付け、ばらばらになり戦うのを防ぐ共通の政治目標がない。モスルの統治と治安維持の計画もないように見える。イラクの他の地域でも地方権力や自治警察力はなく、宗派抗争が起きている。このような状況があると、イラクでの長期的な平和を作る希望はない。

 ISは2003年の米国のイラク進攻後の民族・宗派混乱から生まれた。シーア派至上主義のバクダッドへの少数派スンニ派の抵抗で維持されてきた。条件が同じであれば、同じように毒性の強いジハード過激主義が再登場するだろう。

 アバディは前任者よりコンセンサス重視であるが、彼は既得権に弱い。IS後の真空にイラク政府、イラン、トルコ、クルドが入り込もうとしている。

 イラクの諸派閥は分裂しており、中央で権力分有の政府がすぐできる見込みはない。しかし自衛しうる自治地区を作り、地方レベルで信頼醸成措置をとることはできる。もしイラク第2のスンニ派都市モスルが灰の中から立ち上がるのなら、地方のスンニ派指導者が復興のプロセスをリードするように権力を与えられなければならない。

 ISはまだいくつかの町とサイバー空間を支配している。多くの戦闘員は逃げ、民衆に溶け込んだ。テロを行うだろう。モスルの陥落はISの野心への打撃である。しかし彼らと戦った連合軍にとり、勝利は未だ敗北のように危険なものになりうる。

出典:Financial Times ‘The threat of Isis shifts as jihadis lose turf in Iraq’ (July 11, 2017)
https://www.ft.com/content/07889732-6567-11e7-9a66-93fb352ba1fe?mhq5j=e2