9月19日付の台湾の英字紙Taiwan Newsは、中国が世界中、とりわけ最近は欧州で厳しい目を向けられている状況は、台湾と西側民主主義諸国との関係を強化する千載一遇の好機である、とするDavid Spencer(在台湾コンサルタント)の論説を掲載している。

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 たしかに、最近のEU諸国と中国との関係の悪化とは裏腹に、EU諸国と台湾との関係はより良好かつ緊密になりつつある。ただし、このような EU諸国と台湾との関係改善の傾向がさらに強化されるかどうかについては、今後、関係各国が台湾との具体的関係をどのように展開させるかにもかかっているので、過度の楽観は禁物であるといえよう。

 9月14日付の仏ル・モンド紙に寄稿した9人の専門家(学者、元政治家を含む)たちが、最近、ますます攻撃的になり、かつ独裁色を強める中国に直面して、欧州は台湾の民主主義を擁護するため行動をとるようにと呼び掛けた。この寄稿文は、これまで欧州は台湾についての中国の主張を追認してきたが、最近、とくに香港をめぐり、国際ルールを平然と無視する中国の動きを見て衝撃を受け、EU諸国にとって対中国、対台湾政策を再考すべき時期に来た、と述べている。

 それだけ香港への「国家安全法」の適用は、香港に2047年まで保証されるはずだった「一国二制度」を抹殺するものとして、大きな影響を欧州諸国に及ぼしていることを意味する。

 さらに、チェコ上院議長一行の台湾訪問団について、中国の王毅外相がチェコは「重い代価」を払うことになる、と恫喝したことは、EUの人々にその傲慢さを強く印象付けたことになる。その他、新型コロナウイルスへの中国の対応やWHOの対応の過ち、ウイグル、チベット等における人権無視、東シナ海・南シナ海を含む周辺海域における独善的拡張主義などはEU諸国に対し、台湾との関係見直しの材料になってきた。

 欧州諸国と中国の関係を見るとき、欧州から見て、中国は経済面で重要性をもっていたが、外交、安全保障面での関係は二の次と見られることが多かった。2008年のリーマンショク等の金融危機直後の欧州は中国からの投資を必要とした時期があった。しかし、その後の過去10年の間にEU諸国と中国の経済関係には大きな変化があったといえる。

 なお、欧州諸国の中では、中国との緊密な経済関係から、ドイツの対中態度は他のEU諸国とは温度差があるのではないかと見られていたこともあり、今後の独中関係には特別の注視を必要としよう。

 今後の欧州諸国と台湾との関係は、日本にとっても他人事ではない。とりわけ、今後の課題としては(1)自由、民主の価値観を共有する台湾との間で、人的交流を拡大し、接触のレベルを上げること(これは、最近米上下両院が可決した「台湾旅行法」の趣旨に合致する)、(2)対話・交流の内容を経済活動だけではなく、安全保障面にまで拡大すること、(3)WHO への台湾の加入促進だけではなく、TPP(環太平洋連携協定)への台湾の加盟を促進することなどは、日本が欧州、米国とともに、あるいはこれら諸国に先駆け率先して、行うべき課題であろう。

 今日、台湾が有する経済・技術のレベル、民主化のレベルはすでに「自由で開かれた」インド・太平洋地域における大きな資産となっているといっても言い過ぎではないと思われる。

  
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