中東の構図がこの1年で大きく変わった。その中心にいるのがイスラエルである。同国は1948年の建国以来、アラブ・イスラム諸国と敵対してきたが、2020年秋にはアラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、スーダン、モロッコのアラブ4か国と立て続けに国交を樹立している。

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 特に目を引くのは、イスラエルとモロッコの共同宣言が、自らが正当な所有者と長年主張している独立派武装組織ポリサリオ戦線を無視する形で、西サハラ地域に対するモロッコの主権を一方的に承認したことである。そうしたイスラエルとアラブ諸国の接近の背景にあるのが、ここ数年での、アラブ諸国にとっての脅威国のイスラエルからイランへの急激な変化である。

 この動きを決定づけたのが、2019年9月14日に発生したサウジアラムコの2か所の施設へのドローンと巡航ミサイルによる攻撃であった。この攻撃によりサウジの石油生産量は一時的に半減し世界全体の供給量の5%が失われ、油価は急騰することとなった。

 世界が驚愕した事件から2か月後、ロイター通信は独自の取材を基にイラン犯行説を打ち出した。ただし、中東・石油関係者の多くは、それ以前の時点でイランの犯行と見ていた。

 このように現在の中東では、多くの諸国がイスラエルに代わってイランを地域最大の脅威国と見なしている。そこで俄然注目されるのが、バイデン米大統領の今後の動きである。なぜならば、同大統領は、イラン核合意への復帰の可能性をほのめかすなど同国との関係の改善に意欲を示す一方で、イスラエルによるパレスチナ地域での入植活動や、サウジにおける人権侵害を問題視しているからである。

 言うまでもなくトランプ政権の目指す中東政策は、一部のアラブ諸国とイスラエルとの関係を正常化させつつ、イランを中東の最大の脅威と見なして対決姿勢を強めて譲歩を迫るというものであった。

 折しも、イランは国際原子力機関(IAEA)に送付した1月1日付の書簡で、中部フォルドゥの地下施設におけるウラン濃縮活動に関して、昨年12月に議会で可決した法案に即して濃縮度を20%に引き上げる予定であることを明らかにした。

 また、サウジの裁判所は、昨年12月28日、著名な人権活動家ロウジャン・ハズルール女史(31歳)にスパイ活動の容疑で禁錮5年8ヵ月の実刑判決を言い渡している。

 こうした新たな事態に直面したバイデン米大統領が、これまでのように、相対的にイランに優しくサウジに厳しい姿勢で対応し続けて行くことになるのか否か。自身が副大統領の時代とは様変わりした中東の構図の中で、バイデン米大統領がどのような中東政策を打ち出すのか注目される。

  
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