元スウェーデンの首相のカール・ビルトが、2月2日付けの米ワシントン・ポストに寄稿し、デジタル技術分野で、欧州と米国とが協力しないと、中国に負けてしまうと論じている。

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 中国がデジタル分野で世界の覇者になるのを防ぐため、欧米が協力を進めるべきであるとのカール・ビルト元スウェーデン首相の提言は適切である。

 中国は先端デジタル技術を国家戦略として推進しており、それを背景に、例えばQRコード決済(キャッシュレスの決済)や自動運転で世界をリードしている。ただ、中国の先端デジタル技術推進の大きな目的の一つは、国民の監視である。デジタル人民元の普及ですら、米ドルにリンクした人民元をドルから切り離すためという金融政策上の理由の他に、人と金の動きをすべて把握し、国民をコントロールすることが大きな目的と見られている。

 米国はデジタル化で世界をリードしている。デジタル技術を活用してサービスや事業の変革を目指す「デジタル・トランスフォーメーション、DX」は世界最大で、米国企業はいち早くDXを推進し、2020年には世界全体のDX支出の3分の1を占めた。米国のいわゆるGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)は、デジタル部門の世界を代表する企業であるが、米国司法省や連邦取引委員会が、欧州委員会と共に独占禁止法の調査をしており、GAFAと米国の国益は必ずしも同一ではない。

 欧州は、デジタル分野では後れを取っており、これを背景に欧州委員会は2020年2月、AIなどのデジタル分野の戦略を公表した。米IT大手や中国企業が個人のデータを抑えつつあることを踏まえ、EU企業のデータを活用し、欧州のテック企業の成長を後押ししようとするものである。

 中国に対抗するため欧米の協力が望まれるというのはその通りであるが、欧州は米国と協力するためにも自身のデータ市場を整備し、自身のテック企業の成長を後押しする必要がある。これは協力のための自身の強化であり、いわゆる「デジタル主権」とは異なる。

 翻って日本は、QRコードにせよ、DXにせよ、中国や欧米に遅れている。日本こそキャッチアップが必要である。日本では、本年9月にデジタル庁が設置される予定である。が、情報セキュリティも甘く、政府、国会、司法のデジタル化が、各国と比べても遅れている現状で、どれほど国を上げてデジタル技術の推進が進むだろうか。政府主導で行う以上に、民間や世界の動きは早く進むだろう。

 日本が真にデジタル化を進めたいのなら、もはや、一国で後れを取り戻すことは難しいだろう。欧州を見習い、米国等と組んで、共に進んで行かなければ、隣国の中国に呑み込まれてしまう怖れさえある。

  
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