バイデン大統領は、就任後初の正式記者会見を、3月25日にホワイトハウスで行った。それを踏まえ、ワシントン・ポスト紙コラムニストのデイヴィッド・イグネイシャスは、3月26日の同紙に、バイデンの直面する二つの最も危険な世界問題は北朝鮮と台湾であると述べた。おそらく、その通りであろう。

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 まず、最近、短距離ミサイルを発射した北朝鮮の先行きは不透明である。もう少し状況を見る必要があるだろう。外交の機会を探りつつも、制裁と強固な抑止力は維持していく必要がある。「エスカレートするなら相応の対応を取る」、「3月25日のミサイル発射は国連決議違反だ」との3月25日のバイデン大統領の発言は北朝鮮に一定のシグナルを送った。それは「クレディブル(信頼性のあるもの)」にして置かなければならない。また、非核化が最終目標であることを条件に外交もするとの発言は、適切だった。

 バイデン政権の対北朝鮮政策のレビューが待たれるが、これを前に4月2日、アナポリスにある海軍士官学校で、日米韓3か国の安全保障担当の高官協議が開催され、北朝鮮問題が討議された。その後、ホワイトハウスが共同声明を発出した。それによると、日米韓3か国の高官は、「北朝鮮の核・弾道ミサイル計画に関する懸念を共有し、非核化に向けた日米韓の緊密な協力を通してこれらの課題に対処し、解決するというコミットメントを改めて確認した」とするとともに「朝鮮半島の平和と安定の維持のための協力が必要不可欠であることで一致した」とある。北朝鮮の非核化に向けて、3か国が連携して行くことが合意された。

 台湾については、台湾を巡るレトリックのレベルが上がっている印象を受ける。米中双方で微妙な関心が高まっていることは要注意である。米国でも中国による台湾への具体的シナリオ等に関する議論が出ている。例えば、プラタス島等台湾の周辺地域への侵略、台湾「クオランティン」(隔離。海空の主権を奪還し、米国による武器供与等の阻止のために台湾沖合で台湾に向かう海運、航空の選別を事実上中国が掌握すること)や 上陸または航空機攻撃による本島侵略等である。過剰なレトリックが独り歩きするような状況は避けるべきであろう。米中両国はSNSの影響を強く受けるところでもある。冷静に状況を分析し、静かに対処計画を作成し、準備していくべきだろう。米国が日本など同盟国と緊密に協議する姿勢を示していることは評価される。日本の役割が試される。台湾有事は抑止することが最優先になる。そのためには、米中の間等で軍事外交対話を緊密にしておく必要がある。双方の戦略をお互いが正確に理解しておくことが抑止の前提になる。これは、冷戦時代の米ソ関 係を考えれば分かる。何時の間にか習近平が香港のシステムを根本的に変えてしまった二の舞は避けるべきだ。最近中国が、重要決定を外から影響力が行使し難い軍部や全人代(全国人民代表者会議)に仕上げさせるようになっていることが気になる。

 米中の外交トップによるアンカレッジ会談の公開冒頭発言は、極めて興味深かった。特に楊潔篪の発言は、時代遅れで、共産党のイデオロギー的色彩の強い世界観だった。国連重視は兎も角、中国が言う国際法の重視や自己認識などは一方的、独善的だった。本当に米国の衰退と中国の政治体制の優越性を信じているのかもしれないが、危険な兆候である。政治は体制如何に拘らず最終的な判断は国民がする。アンカレッジでの中国側の攻撃的な発言は、米国等による民主主義・人権や同盟強化の動きに直面する中国の焦燥感の表れの面があるのかもしれない。イグネイシャスも指摘するように、中国は対話の継続を望んでいるようだ。米中戦略対話と勝手に呼んでいるようだが、中国が対話を求めること自体は悪いことではないが、要注意である。

  
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