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 キューバ共産党大会初日の4月16日に、ラウル・カストロが党第一書記辞任を表明し、党大会最終日にディアスカネル大統領が、後任に就任した。カストロと同年代の革命世代の有力指導者も政治局員から引退した。カストロ兄弟による共産党を通じたキューバ支配が終わったことは間違いない。しかし、ディアスカネル第一書記兼大統領(2018年に見せかけの政権交代の一環としてカストロによって登用された経緯がある)を通じて、或いは、カストロの元義理の息子で孫の父親でもあるロペス・カジェハス将軍等を通じてラウルの影響力は残り、カストロ一族の支配は続くと見られる。

 他方、ラウル・カストロは、兄の後を継いで以来、公務員の任期制度やキューバ人の渡航制限の緩和、通貨制度の改革などの制度の自由化に取り組み、オバマ米大統領(当時)の下で雪解け関係も進んだわけで、「社会主義か死か」と叫び続けたフィデル・カストロや革命世代のイデオロギーとは一線を画す漸進的かつ部分的開放路線を進めてきた。そのラウルが後継者として育成し、将来を託したのがディアスカネルであるので、これによりキューバ共産党の革命世代から革命後の新世代への権力の移行が完成したとも云えるであろう。

 ディアスカネル政権においては、国民の生活上の不満等に対処する上でも、これまでのような経済面での市場化を段階的に進めるであろうが、政権の安定性に影響を及ぼすような民主化措置は期待し難い。軍内に多少の確執はあるようであるが、党大会でカジェハスが政治局員に登用されるなどカストロ一族側の新世代も支配力を強化しており、軍内の対立、民衆の蜂起、体制内改革といったことは、何れも現実性に乏しいように見える。

 ディアスカネル自身は技術者で、共産党のヒエラルキーを上る過程でラウル・カストロに認められたプラグマッティックな人物であるとの評もあり、彼に期待する向きもある。しかし、国民的なカリスマ性があるわけではなく、軍部や情報部門をどこまで掌握しているのか、どこまで本人自身の政策的自由度があるのかは未知数である。当面、他の国と同様コロナ対策やパンデミックによる経済困難にいかに対処するかが大きな課題であり、これに成果を上げることが国民の支持や政権の安定度の鍵となろう。

 バイデン政権は、ラウル・カストロやその子供、更にカジェハスに対するものを含むトランプ政権による追加的なキューバ制裁措置を解除しておらず、同政権にとってキューバ問題の優先順位は高くないとされており、当面は、米国から何らかのイニシアティブが取られる可能性は低いだろう。

  
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