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 6月11-13日に英国のコーンウォールで行われたG7サミットの最も基本的なメッセージは「西側は帰ってきた」ということであろう。バイデンが宣言する通り、米国も帰ってきた。首脳達の顔を見ても、安堵感が窺われる。更に、G7の成果とリーダーシップをその他の世界にリーチアウトするとの姿勢を明確にしている。今後、国連、G20首脳会議(イタリア、10月30〜31日)、COP26(英、11月1〜12日)等が重要となる。中国の一帯一路に対抗するインフラ構想(Build Back Better for the World :B3W)の具体的実現も重要な課題である。

 今回のサミットの首脳声明で、中国について強いメッセージを出したことは良かった。気候変動等の協力を謳う一方、新疆等人権の尊重を求めた。また、首脳声明は、法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋の維持の重要性、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調、両岸問題の平和的解決を促すと述べ、東シナ海及び南シナ海での現状変更等の一方的な試みにも強く反対する、と述べている。

 フィナンシャル・タイムズ国際問題担当コメンテーターのギデオン・ラックマンは、6月14日付けの同紙論説‘The G7 was stronger on values than hard cash’で、西側の結束については深い疑問があると述べ、「フランスのマクロンは、会議前に、対中戦略に当たっては欧州が独立性を維持することの必要性を強調した。これについてはドイツのメルケルも同様であろうし、ある程度は英国のジョンソンもそうだろう」と指摘する。しかし、これら諸国の行動を注視する必要はあるものの、ラックマンのような見方は、やや読み過ぎのように思われる。NATO、米EU首脳会議でも中国については強いトーンが出ている。NATO声明は、「中国の野心的、自己主張の強い振る舞いはシステミックな挑戦である」と述べる。米EU共同声明もG7のラインで台湾海峡等に言及している。欧州の中国観は大きく変わったと見てよいだろう。今後とも欧州とのアジア対話や協力を強化していく必要がある。

 ワクチンについては、G7は途上国に向こう1年の間に10億分を提供することを約束した。メディアは総じて「余りに少なく、余りに遅い」と批判的である。それは少し酷な批判ではないかと思われるが、先進国が出来る限りの支援をしていくべきことは間違いない。ワクチンは中ロとの競争でもある。日本も素早く台湾に、その後、ベトナムなどにワクチン支援を広げていることは良いことである。

 G7と招待国が作成した発表文書の一つに「開かれた社会声明」というのがある。「全ての人々及び地球の責任ある管理のための尊厳、機会及び繁栄の基礎として、開かれた社会、民主的な価値及び多国間主義に対する共通の信念を再確認する。民主主義のもとで暮らす世界の過半の人々のリーダーとして、我々は、以下に関連する国際規則及び規範の尊重を含め、我々を結びつける価値を擁護することを再確認し、他国に対して奨励することが喫緊であると確信する」との書き出しで始まる同文書は、二頁の短い文書だが、重要なものである。実質的に民主主義国の宣言と言ってよい。議長国の英国は、当初は豪印韓を含めD10という構想を抱いていた。しかし、結果的にはG7と招待国は明確に区別され、更に今回はG7が明確な存在理由を見つけた。他方で、この文書は、11カ国(G7と豪印韓南ア)とEUの名で出された独立した文書になっている。民主主義国連合の拡大開放装置のようにも取れる。実際、文書には今後これらのコミットメントをG20、国連、米の民主主義サミット等多国間フォーラムに広げていきたいと述べている。こうしたツー・トラックのアプローチは賢明だと思われる。

 バイデンは、G7、NATO、EUの会議、6月16日のプーチンとの首脳会談という一連の重要外交を成功裏に乗り切った。中国等につき、先ず日米でトーンを決め、それを基に米韓をやり、G7へ行ったことは周到な戦略だった。また「グローバル・ブリテン」を標榜する議長のジョンソンも取敢えず旨くハンドルできたように見える。

 中国はG7への反応として、6月12日の在英大使館コメントで「一部の小さなグループが世界の運命を決める日はとっくに過ぎている」との批判や「内政干渉だ」との批判は出しているが、他に主要なコメントは見当たらない。中国はG7、NATO、米EU声明の強さに驚き、今後の国内日程も睨み対応に迷っているのかもしれない。しかし、6月15日には中国軍28機が台湾の防空識別圏にまた侵入するという対応をした。

  
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