英フィナンシャル・タイムズ紙の欧州経済担当コメンテーターであるマーティン・サンブーが、6月20日付の同紙で、6月15日のEUと米国の首脳会談で双方が共有する価値と利益に導かれる貿易政策の立案に合意したことを評価する論説を書いている。

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 サンブーの論説が指摘するように、6月15日のEUと米国の首脳会談はあまり注目されなかった。しかし、2014年以来初めての米EU首脳会談であり、米国大統領のEU訪問は2017年以来のことであった。トランプのEU敵視のために関係がささくれ立った後であるので、双方とも関係再構築の出発点とすることに腐心したに違いない。それには成功したのではないかと思われる。

 EUは今回の首脳会談の主要な具体的成果として、(イ)民間航空機に関する協力の枠組みに合意したこと(この枠組みで問題の解決を試みる間、5年間相互にエアバスとボーイングに対する報復関税を停止する)、(ロ)トランプ政権が発動した鉄鋼とアルミニウムに対する関税の問題を年末までに解決することで合意したこと、および(ハ)米国・EU貿易・技術評議会(US-EU Trade and Technology Council)の設立に合意したことの3つを挙げている。

 サンブーは、米国・EU貿易・技術評議会の設立を高く評価している。米EU共同声明(‛Towards a renewed Transatlantic partnership‘)によれば、この評議会が扱う問題は貿易と技術である。気候変動対策、環境保護、労働者の権利促進、強靭なサプライチェーンの構築などのために貿易を使うとされているから、例えば、EUはEUが気候変動対策の目的で検討している国境炭素調整措置をこの枠組みで米国と協議する積りであろう。サンブーが、EUと米国は共に貿易を地政学上の問題に対処する道具として使っているが、それが相互に調整されたものとなると観察しているのは、些か共同声明の深読みのし過ぎのようにも思えるが、双方が共同して「非市場経済」(中国への言及はないが、これが中国を指していることは明らかである)の不正な貿易慣行に対処するとの文言があるのを見ると、そういうこともあり得るのかも知れない。

 この枠組みが扱うこととなる技術の問題、即ち、テック企業の規制とデジタル経済のルール設定の問題についても背景に中国があることは明らかである。共同声明は民主的価値に基づく新たな技術開発での協力、デジタルのガバナンスの民主的モデルの促進を謳っている。これら技術に関連する分野はEUと米国の置かれた立場と考え方が異なり対立が顕在化し易い状況にあるが、新たな枠組みで調整が進めば双方にとって利益に違いない。

 最近になって、法人税のあり方と巨大テック企業に対する課税のあり方について国際的な議論が進んでいるが、これが具体的合意に結実すれば、今回の首脳会談の合意と相俟って米欧間の大きな棘を除去することになり、関係の円滑化に大きく貢献するであろう。総じて、西側は、経済の分野でも、バイデン政権のイニシアティブもあって、民主主義国は結束して行動し専制主義国に対抗せねばならないというバイデンの理念に沿って動き始めているようである。日本が参加したG7でも同様であった。

  
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