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 6月22日付の英フィナンシャル・タイムズ紙で、同紙経済担当チーフコメンテーターのマーティン・ウルフが、民主主義国の立て直しは国内から始めなければならない、西側の価値に対する主たる脅威は中国にあるのではなく、我々の社会の中にあると述べている。

 ウルフの主張の要点をまとめれば、①バイデン米大統領のG7サミットへの出席等を通じ、中国対抗のための民主主義国の同盟が構築され、西側の協力が復活していることは良いことだ、②しかし、それには新たなリスクもある、③世界をリードしようと思えば、今回G7が見せたよりももっと整合性の取れた政策が必要だ(G7のワクチン支援誓約は余りに少なすぎる)、④更に中国との破滅的対立は避けるべきだ、好むと好まざるに拘わらず中国との協力は人類全体にとり不可欠だ、⑤民主主義国にとり最大の脅威は中国よりも我々の国内にある、となる。

 G7サミット以後、欧米のメディアで米国の民主主義等国内政策の重要性を強調する論評が目に付く。この記事もそのひとつである。米国が、G7や欧州との会合、米ロ首脳会談を通じて中国やロシアに対する民主主義国の外交の再構築に成功したと見られているが、それだけでは過去数年世界で噴出した問題が解決される訳ではないと言いたいのであろう。根本的問題は夫々の国、特に米国内の政治経済、とりわけ米国の民主主義の立て直しが必要であると主張し、未だ米国の民主主義は信用できないと思っているのであろう。それは良く分かる。G7等の成功を評価し、中国対抗の必要性を評価するとしても、米国等の民主主義、経済等国内の立て直し、その結果として国力が再強化されることが根本的に必要だとの思想は、その通りだ。米国の共和党は未だトランプの影響を払拭しきれないでいるし、反対に選挙参加の規制を強化しようとしている。国内の経済政策も共和党の反対により難航している。欧州では英国の他フランスやドイツ等でも、政治は未だ不安定、不透明であり、対中姿勢についても変わったとはいえ、温度差があるようだ。日本についても、最近のパンデミックや東京五輪に関する国内議論を見ると、民主主義の問題と全く無縁とも言い切れない。

 米コロンビア大学のジェフリー・サックス教授は、「G7は必要ない」との刺激的な記事を書いている(Project Syndicate)。ウルフが「同意できない」と一蹴するのは適切だ。論理も粗雑で、極端と言わざるを得ず、環境や開発支援ばかりが強調されている。

 ウルフのG7観は前向きで、強固だ。しかし米国の民主主義を強く心配している。他方、中国については、更に微妙なことを言う。「民主主義国からの敵意は、中国国民を共産主義体制に追いやることになりかねない」、「制裁で中国は変らない」、「中国との破滅的対立は避けるようにすべきだ」、「中国は我々の利益と価値にとり最大の脅威ではない。それは我々の中にある」という。しかし今や中国には明確に何が問題なのかにつき民主主義国が一体となって指摘していくことが重要である。2015年9月、米国を公式訪問した際、習近平は、南シナ海は軍事拠点化しない旨、また米中両国はツキディデスの罠には陥らない旨宣言したにも拘わらず、その後の行動は全く違っている。言行が一致しない。香港問題に関しても、50年間の「一国二制度」に合意した国際法を破る形で事態が進んでいる。尖閣諸島、台湾問題にしても、大国中国に対しては、バイデン政権がリーダーシップをとったように、やはり「民主主義諸国の結束」が重要なのだろう。

  
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