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 現在、米議会の上下両院に「台湾パートナーシップ法」と呼ばれる新たな台湾支援法案が、民主・共和両党の超党派議員により提出されている。この法案は、米国の州兵と台湾軍との協力拡大を研究するようペンタゴンに求めている。具体的には、米州兵が台湾の予備役を訓練することができるようにする、との内容である。

 ウォールストリート・ジャーナル紙は7月22日付の社説‘Strengthening Taiwan’s Resistance’は、米国上下両院における新しい法案制定は、北京に対する台湾の抵抗力を格段に強めるだろう、と述べている。

 台湾の予備役は、台湾の海軍、ミサイル防衛部隊のような前線の正規の部隊ではない。しかし、もし台湾島の人々が戦闘に巻き込まれることがあれば、動員可能な兵力として出動されることとなる。台湾の20万人に近い現役軍隊の規模の10倍に近い規模の予備役が動員可能になれば、全島でいわばゲリラ戦を行うことが出来るような戦闘能力をもつこととなろう。

 上記社説は、「人民解放軍の水陸両用部隊や空挺部隊が台湾に上陸したとしても、組織的で装備の整った予備役部隊があれば、台湾をコントロールすることはより困難になるだろう。広範囲にわたる抵抗は、小さな国がより大きな敵に対抗する助けになり、米軍などの部隊が到着するまでの時間を稼げる。例えば、リトアニアはロシアの攻撃への備えを予備役の動員に頼っている」と、法案の意義を説明する。

 この「台湾パートナーシップ法」が実際に米国両院において近く可決されるか否かについては、その詳細はまだよく分からないが、社説も指摘するとおり、中国による台湾に対する軍事的侵攻を未然に阻止する最善の方策は、北京が台湾を侵攻する場合に支払うべきコストを引き上げることである。

 中国の台湾への軍事的侵攻については、米国軍指導部内においても見解が分かれている。6年以内にも侵攻がありうるとの見方、人々が想像するより侵攻の時期は差し迫っているとの見方、さらには、まだ台湾を侵攻できるだけの能力を中国は有していない、との見方などである。

 習近平指導部は台湾問題が中国にとっての「核心的利益」であるとの考え方を変えておらず、先般の共産党創立100周年の際にも「台湾独立を徹底的に粉砕する」ことが歴史的任務である、と述べた。そして、人民解放軍に対し、「戦闘準備を怠るな」との指示を数多く出している。中国の台湾に対する威嚇・脅迫の度は最近ますます強まっているように見える。

 台湾における世論調査を見れば、仮に中国が台湾侵攻のための軍事行動を起こすと仮定した場合、台湾の多くの人々は「台湾関係法」という国内法をもち、台湾の防衛にコミットしている米国が、台湾防衛のために駆けつけてくるまでの時間稼ぎのためにも、台湾としての独自の防衛をしなければならない、との考え方を持っていることがわかる。「台湾パートナーシップ法」が勧奨する予備役を訓練することで動員可能にし、有事の際の動員力を現役のみの場合の10倍の規模に拡大するというやり方は、こうした考えにも合致する。

 台湾の人々は、特に最近の香港の事情をつぶさに観察している。国家安全法という法律を持ち、警察国家として人権を蹂躙する香港での動きは台湾の人々にとって中国に対する警戒心を強めこそすれ、弱めることはあり得ない。米国の「台湾パートナーシップ法」が米議会を通過し、米国軍と台湾の予備役の関係が一層緊密になれば、台湾と中国の距離はさらに遠ざかることとなろう。