9月16日、中国は環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)加盟申請を寄託国のニュージーランドに提出した。経緯の詳細は分からないが、唐突な申請だったとの印象を持つ。対中貿易依存の高い最近のニュージーランドは、中国に近いだけに気になる。

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 Diplomat誌のシャノン・ティエッツィ編集長は、9月17日付けの論説‘Will China Actually Join the CPTPP?’において、主として中国が高い水準のTPPの規定を受諾できるか、との観点から議論し、中国のTPP加盟は長い間あるいは永遠に棚上げになるかもしれない、と分析している。

 例えば、米国・メキシコ・カナダのUSMCA協定では参加国のいずれかが「非市場経済」国との貿易交渉に入る際には他の締約国に通報する義務を課す「ポイズン・ピル規定」が入っている。この規定は、カナダやメキシコによる対中自由貿易協定(FTA)締結を阻止するため、つまり裏口から中国産品が米に入ってくることを阻止するために仕組まれた。

 このためカナダ、メキシコは中国のTPP加盟に躊躇するかもしれない。また、TPP加盟国で地域的な包括的経済連携(RCEP)にも加盟している国々には、中国を無理にTPPに入れるインセンティヴはない。

 ティエッツィが指摘するような可能性はあり得ると思われる。中国の世界貿易機関(WTO)加盟には15年かかった。長い間、交渉は開始されなかった。加盟交渉では市場アクセスなどにつき各二国間でも厳しい交渉が行われる。全ての二国間交渉が妥結しないと加盟は認められない。

 中国の狙いは、高度に戦略的で巧妙だ。仮に米国がTPPに復帰したり台湾がTPPに加盟する前に中国がTPPに加盟できれば、TPPを換骨奪胎できるし、米国や台湾の復帰や加盟を阻止できる。現加盟国は実質的に拒否権を持っている。更に一旦加盟すれば、高い対中貿易依存を盾に加盟国を切り崩すことも可能だろう。仮に加盟が進まなくても、中国が失うものはない。環球時報は「(申請は)米を益々孤立させた」と述べているが、これは率直な見方だろう。

 TPP加盟国は、危機感を持つべきだ。日本などは加盟国間の議論を主導していく必要がある。今、大戦略として最も大事なことは、米国と台湾の加盟につき道筋をつけることである。米国と台湾よりも先に中国を加盟させることは考えられない。