最近のラテンアメリカでは、長期的には経済構造に起因し短期的にはパンデミックに原因する経済停滞や格差、治安悪化や汚職に対する国民の不満を背景に、既成政治家に対する反発、左右両極端のポピュリズムによる分断といった現象が見られている。その結果、選挙では政権党が敗れ、左派又はポピュリスト政権が成立し、改善しない状況の中で政権の強権化が支持されるといった悪循環も見られている。このような状況が続けば、ラテンアメリカにおける独裁政権の増加、欧米からの離反、中国の更なる影響力の拡大が懸念される。

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 6月上旬にロサンゼルスで行われた米州サミットでは、主催国米国は、ベネズエラ、ニカラグア及びキューバは、民主主義や人権に問題があるとして招待せず、これに抗議して、メキシコ、ボリビア、エルサルバドル、ホンジュラス、グアテマラの大統領がサミットを欠席した。これらの国も外相等を代理で出席させたこと、アルゼンチン、チリ、ペルー等の左派系大統領や当初欠席が懸念されたカリブ海諸国首脳が出席したことで、一応格好をつけたが、直前までこれらの出席問題でもめたことや移民問題について地域の一体的取り組みがサミットの重要課題であっただけに、移民問題に関係深いメキシコ等の首脳の欠席はバイデンの顔を潰すものとなった。

 バイデンとしては、ウクライナ危機の下で民主主義を守るとの外交方針の筋を通した点は評価できるが、バイデン政権発足当時より新たなラテンアメリカ政策を打ち出す舞台となることが期待されていた米州サミットが、結果的には、米国の影響力の低下を印象付けるものとなった。また、このサミットで、当初出席が危ぶまれていたボルソナーロとバイデンの初めての会談が実現したが、どうせ会うのであれば、バイデンはもっと早く会うべきであったであろう。

 ラテンアメリカ域内の多くの国に政権の強権化の動きや政治的混乱の傾向が見られる。メキシコ大統領は、最近選挙管理委員会に対するいわれのない非難を強めており、グアテマラやエルサルバドルの大統領も強権化の傾向を強めている。そして10月のブラジルのボルソナーロとルーラの対決は、イレギュラーな動きの可能性も含めて予断を許さない。

 加えて、6月19日に行われたコロンビアの大統領選挙決選投票は、左右のポピュリストの間の不毛の選択となったが、極左候補のペトロが勝利し、米国は南米におけるもっとも信頼できる盟友を失い、今後、二国間関係の悪化やベネズエラを巡る情勢への影響等も懸念される。米国は、この地域への政策を改めて見直す必要があろう。