マドリードにおける北大西洋条約機構(NATO)首脳会議を眼前にした6月28日、トルコとスウェーデンおよびフィンランドは首脳会談で合意に達し、スウェーデンとフィンランドのNATO加盟を認める「三カ国メモランダム」に署名した。両国のNATO加盟にトルコが反対を取り下げ、これで一件落着かと思いきや、エルドアンは6月30日の記者会見で両国が合意に従いテロリストを送還しなければトルコ議会は両国の加盟合意を承認しないだろうと示唆した。

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 三カ国メモランダムは10項目から成る合意であるが、「(両国は)YPG/PYDに支持を提供しない」、また、両国はPKK(クルド労働者党)その他すべてのテロ組織、これに繋がる組織や個人の活動を阻止することにコミットする、と書かれている。YPGはシリアのクルド民兵組織、PYDはその政治部門であるが、トルコは、彼らはPKK(クルド労働者党)と一体だと主張している。

 最も際どいのは、「(両国は)懸案のトルコによるテロ容疑者の国外追放あるいは本国送還の要請に迅速かつ完全に対応する」と書かれていることである。全体としてこの合意は両国が全面的にトルコの要求を呑んだもののように思われる――トルコは「欲したものを得た」と述べている。救いはテロ容疑者の名前や数が書かれていないことであろう。

 今後、テロ容疑者の送還要請をどうするのかの対応を迫られるだろうが、スウェーデンでは内政の重荷になるように思われる――フィンランドと違い、議会にNATO加盟支持のコンセンサスがなく与党陣営の一翼を担う緑の党や左翼党がトルコに譲り過ぎだと反撥していることも要因である。クルド系の無所属議員アミネ・カカバーベ(イラン系クルド人でクルド人治安部隊ペシュメルガの戦闘員だった経歴を有する)も批判している。

 昨年11月、スウェーデン首相のマグダレナ・アンデション(社会民主党)は議会で1票差の多数をもって承認されて首相に就任したが、その1票はアミネ・カカバーベの票であった。その際の社会民主党とカカバーベの取引きはクルドに対する支持とエルドアン批判を内容とするものだった由である。