ロシアのプーチン大統領のイラン訪問は両国が反米同盟の強化を誇示する形で終わった。米欧から厳しい制裁を受ける国同士の〝引かれ者の小唄〟と揶揄する声がある一方、大統領がイラン最高指導者ハメネイ師からウクライナ侵攻に対する「お墨付き」を得たのが最大の成果だろう。イランは新たに結成された「中東防空同盟」に脅威を感じており、中東情勢は波乱含みの展開が続く。

イランの最高指導者ハメネイ師(中央)とライシ大統領(右)と会談し、ウクライナ侵攻の「お墨付き」をもらったプーチン大統領(Office of the Iranian Supreme Leader/AP/アフロ)

ハメネイ師「NATOは危険な同盟」

 プーチン大統領の訪問はウクライナ侵攻後、初めて旧ソ連邦以外の外国を訪れるものだ。本来はシリア情勢の正常化に関する協議が目的で、トルコのエルドアン大統領が同じ時期にテヘラン訪問したのはそのためだ。だが、バイデン米大統領の中東歴訪から1週間後のプーチン氏のイラン訪問は米国の動きを十分に意識したものであったのは確実だ。

 ロシアとイランの2国間関係はかつてロシアがイランの一部を占領した歴史的な経緯もあり、戦後もさほど緊密ではなかった。近年では、プーチン政権がイスラエルやアラブ諸国との関係を優先し、イランとの関係は大きく進展してこなかった。

 だが、ウクライナ戦争が状況を一変させた。欧米から厳しい制裁を受けて政治、経済の両面で国際的孤立を深め、同様に制裁にさらされるイランに接近せざるを得なくなった。

 イランのライシ大統領が、ウクライナ侵攻が取り沙汰されていたことし1月、モスクワを訪問してプーチン氏と会談、6月にもトルクメニスタンでの国際会議の際に会い、訪問への地ならしが行われた。プーチン氏の最大の狙いはウクライナ侵攻に対してイランから支持を取り付け、欧米の制裁に屈していない姿を内外に誇示することであった。

 その狙いは予想以上にうまくいった。ハメネイ師がロシアのウクライナ侵攻を明確に支持したからだ。イラン側の発表によると、同師は北大西洋条約機構(NATO)を〝危険な同盟〟と呼び、ロシアがウクライナで支配権を握らなければ、NATOがクリミア奪回を口実に同じ戦争を開始していただろう、とプーチン氏を全面的に支持した。これほど強力な支持は旧ソ連邦の〝衛星国〟以外になく、同氏にとっては望外の援護射撃になった。