8月9日の中韓外相会談は、厳しい内容だったようだ。中国は、特に「チップ4」(米国が主導する米日韓台による半導体供給網の枠組み)への韓国の参加と米国による地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)韓国配備につき、執拗に韓国側を圧迫したようだ。

 特にTHAADについては、従来の「三不」(追加配備をしない、米のミサイル防衛に参加しない、日米韓同盟に参加しない)を拡大、「三不一限」(配備済みシステムについての運用制限を追加)を主張してきたという。なお尹錫悦新政権は、正式配備を先送りしてきた文在寅前政権の政策を転換、環境評価を進め、THAADの「本格」展開・運用をするとの政策を表明している(全体で六基、既に二基を慶尚北道星州の基地に搬入)。

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 8月11日付け朝鮮日報の社説は、朴振・王毅外相会談につき、
①中国の主張は韓国の経済・安全保障上の自主権に対するあからさまな侮辱だ。
②これらの要求は中国とは無関係の事柄であり韓国が守るべき約束ではない、それは単に文在寅前政権が表明した立場に過ぎず、拘束力はない。
③追加のTHAAD韓国配備を防ぐ最善の方法は、中国が北朝鮮に核兵器やミサイルを廃棄するよう説得することだ。
④弱みをみせれば中国は一層ゴリ押ししてくるだけだ。
と反発する。また、8月11日付けの中央日報社説は「厳しい対応が最善の薬、中国のナンセンスな議論は介入主義と韓国主権の侵害」と反発する。他方、朝鮮日報は8月12日付けで「文在寅政権は中国の「THAAD運用制限」要求を受け入れて国民に嘘をついたのか」と題する社説を掲載した。

 これらの社説のような感情過多の反発は、韓国の読者に韓国特有のすっきり感を与えるかもしれないが、些か違和感がある。「三不」合意は、2017月10月31日韓国が中国と交渉の結果、当時文在寅政権の康京和(外相)が共同文書を発表したものだ。

 発表文の末段には、中国を狙ったものではないとの韓国側の説明に基づき、「韓国側は(中略)韓国に配備されたTHAAD体系はその本来の配備目的により第三国を狙わないこととし、中国の戦略的安保利益を害しないという点を明確にした」、「両側は両国軍事当局間チャネルを通じて中国側が懸念するTHAAD関連問題に対して疎通していくことで合意した」と述べている。

 中国はこれに基づき合意には「一限」(運用の制限)が含まれていると主張しているのであろう。いずれにせよ、かかる重要事項につき、両国が協議し一定の合意に至った以上、韓国が拘束力はないとか、約束ではなく守らなくても良い、前政権のやったことだというのは無謀ではないか。