ネットを活用して政府の業務を効率化しろというのは何年もいわれているわけですが、最近は、ビッグデータを政府統計に活用するべきだという声も高まっています。コスト削減も重要ですが、その理由の一つは、ネット社会になり政府統計が必ずしも実体経済をうまくとらえていないという意見です。
イギリス中央銀行の金融政策の前副総裁のCharlie Bean卿は、政府統計局の収集するデータと統計解析の質の最も批判的な人の一人で、2005年には政府の要請で調査を行い、報告書(https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/481452/Bean_review__Interim_Report_web.pdf)を発表(https://www.theguardian.com/uk-news/2016/jan/08/andrew-tyrie-blasts-out-of-touch-office-for-national-statistics)しています。イギリス中央銀行の総裁Mark Carney氏(カナダ出身)も「イギリス政府統計は信用出来ないものがある」と答えています。

ネット時代に政府統計の正確性に問題があると考えられるのはイギリスだけの話ではありません。

例えば実質GDPを計測する場合、計測時期にその国の経済で増えた「付加価値」をまとめるわけですが、「付加価値」を計算するには、うみ出されたものすべてや、物の値段を調べる必要があります。

しかしネット時代の今では、現状を反映したデータを集めるのはかなり難しくなっています。

例えば旅行を考えてみましょう。

スマホの普及で多くの人が航空券や宿をスマホのアプリから購入しますし、ホテルの代わりに Airbnb激安航空会社のチケットの様に、需要と供給により値段を変えるダイナミック・プライシングが頻繁に実施されることもあります。政府統計で収集されるデータは、ある日の値段にすぎないので、その前後の値段の変化はとられきれないわけですね。

イギリスの政府統計局(The Office for National Statistics :ONS)は、「イギリス政府はビッグデータのハブとなるオフィスに投資すべきだ」との指摘を受けて、ウェールズのニューポートに新しいデータサイエンス本部を設立し、ビッグデータを政府統計に生かすプロジェクトを実施しています。

プロジェクトのポイントは、

・完全にビッグデータを政府統計に置き換えるわけでははい
・全く新しい形のアウトプットを産み出す
・従来の政府統計のデータセット以外のデータを以下の目的に使用する

ギャップを埋める
統計モデルの補助変数(Auxiliary variables)
品質保障
政府統計のプロセスの向上

ビッグデータがどの様に集計されるか、またその少なからずが民間企業により収集されるのでデータ入手には費用がかかること、様々なデータが偏在していることなどを考えると、政府統計を保管する形でビッグデータを取り入れていくONSの手法は現実的ですね。

プロジェクトの経過は随時発表されていますが、Twitter使用して学生の移動パターンを推測する、ネットショッピングの結果を物価統計に活用するなど、ローコストかつ現実味のある取り組みが紹介されています。

ビッグデータを政府統計に置き換えてしまえばいいという極論を唱える人もいるわけですが、政府には統計の専門家がいますし(民間に逃亡する人もいますが)長年定点観測してきたデータの蓄積もあるので、ビッグデータで収集が効率化したり、追加データを収集し、統計結果をより正確にする方が現実的ですが、これは民間企業にとっても示唆がありますね。

ビッグデータというといきなりツールやプラットフォームを入れるという話になってしまうこともありますが、まずは、一体何を明らかにしたいのか、そして、既存のデータがあるなら、それを生かすにはどうやってビッグデータを取り入れるかという、技術面ではなく、ビジネスサイドの話が重要です。