前回の記事では、保守党の勝利がテクノロジー業界に及ぼす影響として、企業に関する税制が大変有利な方向に進む可能性が高いとご説明しました。

その他に注目すべき施策としては、保守党がギグエコノミーワーカーに配慮した税制を計画していることです。

その一つが、U.K. off-payroll rulesIR35と呼ばれます)の改定です。 

イギリスではフリーランサーや非正規労働の人が、個人事業主として、もしくは自分で設立した有限企業を通して企業と契約して働き、税制上有利な条件で収入を得るという仕組みがはやっていましたが、税金の取りはぐれがあまりにも多いため改定されました。

公的機関の場合、フリーランサーの労働実態が正社員と同等であるかチェックする義務が生じ、同じ場合は、正社員と同じ所得税や社会保障を徴収するべきというルールが決まりました。

これはなぜかというと、国立病院や官庁などで医療関係者や IT技術者を雇って、正社員とほぼ同じ労働条件なのにも関わらず、個人事業主や有限企業の経営者として契約してしまうので、正社員よりも安い税や社会保障で済ませていた、という実態があったからです。

驚くべきことにBBC職員や官僚の中にも、こういった形態で働いていた人がいたということです。実態は正職員と変わらないのに書類上は個人事業主なのです。一部には巨額の報酬が支払われていた上に、税の抜け穴状態になっていたので大変な批判を浴びました。

日本の場合は、こういった働き方の人々は正社員よりも不利な条件を押し付けられることが多いわけですが、イギリスの場合、フリーランサーは報酬が大変高いためにこういった形態にしておいた方が税務上有利になった人が多かったのです。

例えば IT技術者の場合は、ロンドンの金融街だと日給が8万円とか20万円といった人が珍しくないので個人事業主や一人親方の会社形態にしてしまった方が有利です。

ところが、クライアント側の管理職やプロジェクトマネージャーなどから業務を指示され、正社員と同じような指揮形態や時間帯で仕事をしており、実質従業員のような状況の人が少なくありません。

202046日からこれが更に改定され、民間企業にも拡大されます。

個人事業主や有限会社の経営者として利益を得てきた人の場合は、この改訂は不利になる可能性がありますが、その一方で、実際は正社員と変わらないのにフリーランサーとして搾取されてきた人にとってはこれは良い改定といえるでしょう。

これは日本に置き換えてみると、偽装請負状態になっている人達を、きちんと正社員として取り扱う仕組みができるということです。

Uberの様なギグエコノミーサービスで、実は従業員と同じような働き方をしているのにも関わらず個人事業主として扱われ、不当に低い報酬や酷い労働条件を付けられている人達を救済する形となるわけです。 

保守党は、ギグエコノミーワーカーに対してはさらに異なったアプローチを取っていく可能性がありますが、ギグエコノミー的な働き方をする人がかなり増えているイギリスでは、この様な方向性は歓迎されています。今までの税制は、実態に追いついていなかったからです。日本でも大いに参考にすべきでしょう。