亥年の今年は選挙続きです。4年ごとの統一地方選と3年ごとの参院選が、最小公倍数の12年ごとに亥年で重なるからです。特に自民党にとって亥年の参院選は因縁があり、ある理由から票が伸びないと言われたり、前回は安倍内閣が大敗していたり。さて今回は?(朝日新聞政治部専門記者・藤田直央)

「亥年現象」って?

 選挙の世界で「亥年現象」と言われだしたのは1980年代半ばです。朝日新聞編集委員の石川真澄さんが唱えたのがきっかけでした。

 戦後にできた参院での選挙の投票率を見ると、最初の47年から亥年が来るたびに落ち込んでいます。石川さんは亥年ごとに自民党の得票率も下がっているとして、「亥年現象と名づけたほうがいいかもしれない」と著書で述べました。

「亥年現象」の理由を、石川さんはこう考えました。

 亥年にはまず春に統一地方選があり、多くの地方議員が自分の選挙を済ませてしまう。すぐ後の夏にある参院選では、同じ党の候補者の応援に地方議員の力が入らない。とりわけ自民党は国政選挙での票固めを地方議員に頼りがちなので不利になる……。

 ただ、石川さんはこの理由付けを「想像に頼るほかない」としています。亥年ごとの参院選での自民党得票率の落ち込みはそれほどはっきりしていないことなどもあり、「亥年現象」は言い過ぎだという反論も出ました。

続く自民への試練

 では、石川さんの著書が出てから最初の亥年となった95年はどうだったのでしょう。

 参院選では何と投票率44.5%、自民党得票率25.4%といずれも過去最低になりました。自民党の得票率は、非自民勢力が結集してできた新進党を下回りました。

 ただ、当時は93年の自民党分裂と下野に始まる政界再編が続いており、新進党の中心には自民党離党組がいました。かなりの混乱期なので「亥年現象」が実証されたとは言えませんが、いずれにせよ亥年は自民党にとって縁起が悪いというイメージは強まりました。

 そのだめ押しとなったのが次の亥年、2007年の参院選でした。前の年に発足した第1次安倍内閣が大敗して退陣。かたや民主党が統一地方選に続く勝利で勢いづき、09年の衆院選で政権交代を果たしました。政治記者の私はそのころ安倍官邸から民主党へと担当が変わりましたが、票固めの対象になりにくい無党派層が民主党へ雪崩を打つように感じたものです。

 07年の参院選でも自民党得票率は落ち込んだのですが、投票率は前回より少し上がっています。中央大教授の三船毅さんは当時、「亥年現象は(直前の統一地方選での)地方議員の選挙疲れではなく、有権者の選挙疲れの側面が強い」としつつ、それでも「自民党批判が選挙(への)関心を高め」て投票率が上がったと指摘しました。

 亥年の07年に春の統一地方選による「選挙疲れ」はあった。それで夏の参院選では自民党を支える人は投票に気乗りしなかったが、自民党を批判する人は疲れを忘れて投票所へ行き、民主党に入れた人が多かった。そんなことが言えるのかもしれません。

今年はどうなる

 こうしたことをふまえると、今年の亥年はどうなるでしょうか。

 春の統一地方選に向け、我が家の最寄り駅の前には昨年秋ごろから、市会議員たちがほぼ毎朝入れ替わり立ち替わり立つようになっています。地方議員にせよ有権者にせよ、統一地方選の後に「選挙疲れ」は出ることでしょう。

 では、その後に来る参院選のポイントは何でしょうか。野党にとっては、有権者の関心を高められるかどうかでしょう。07年のように自民党政権を揺るがす戦いになるのではというムードづくりです。亥年なのに投票率が上向きそうなら吉兆かもしれません。そのためには、都道府県単位の選挙区ごとに野党間で票が割れないようにする候補者調整も大事です。

 自民党にとっては、縁起の悪い亥年の参院選をどう乗り切るかですが、プラス要素は公明党と連立政権を組んでいることです。98年の自公連立政権発足後、最初の亥年となった07年には民主党旋風が吹きましたが、その後民主党は分裂し、今年はそこまで荒れ模様にならずに参院選を迎えそうな気配です。地方議員が組織を支えている公明党とうまく連携できれば、統一地方選後の「選挙疲れ」によるダメージを減らせるでしょう。

 衆院解散で参院と同日でのダブル選という「ちゃぶ台返し」もありかも、なんて永田町でささやかれる中で、くしくも12年前と同じ安倍内閣で迎えた亥年にどんなドラマが起きるのか。政界から目が離せません。